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藤吉郎になりて候う 〜異説太閤紀~  作者: 巻神様の下僕
第三章 蝮と海道一の弓取り

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第五十八話 それぞれの動き

会話中心です。


タイトルの通りそれぞれの動きを追った話です。

 藤吉が熱田に向かっていた頃、今川勢は尾張、三河の境目、大高城に向かって歩を進めていた。


 その軍勢の威容は圧倒的であった。


 今川三万の兵は何ら乱れる事なく行軍していたが、その今川勢の軍中はおよそ戦に行くような張りつめた空気ではなく、どこか浮わついた空気を纏っていた。

 兵達に乱れなくとも、心は浮かれている。


 そう、まるで戦に勝ったようなそんな空気をだしていた。


 そして、その今川軍勢を率いるのは今川家当主『今川 治部大輔 義元』であった。


「ホホホ、尾張の登り竜は囚われの身とか。わたくしがお救い差し上げてみせますわ! オーホホホ」


「治部様。我らは織田家を滅ぼしに参ったのですぞ」


「あら三浦。わたくしはそんな事聞いてませんよ?」


「治部様。出発前に『寿桂尼』様と『雪斎』様が言われたではありませんか?」


「ええ、尾張を取りなさいと言われましたわね」


「ならば、織田家を滅ぼすは道理。尾張の登り竜たる織田市の事など」


「あら三浦。同じ女大名のよしみですもの会ってお救いして恩を売って置けばよろしいでしょう」


「ですから治部様」


「うるさいわね三浦。朝比奈、あなたはわたくしの言う事分かるでしょう?」


「左様ですな。治部様」(もはや諫言しても聞くまいよ、三浦)


「分かりました。治部様のご存念次第に」(お守りは大変じゃ)


「そうでしょう。そうでしょう。オホホホ、オーホホホ」


 今川勢の通る所、義元の笑い声が響いていた。


 ※※※※※※


 同じ頃、犬山城を囲んでいる斎藤勢は。


「ふむ、信行が手勢にしては。ちと数が多いの?」


「山城守様。いつまでこうしておるのですか?」


「十兵衛。焦らぬ事よ。焦れば足元を掬われる。将は泰然自若であるべし」


「は、申し訳なく」


「お主は聡明叡智なれどまだまだ経験が足りぬ。精進せよ」


「は、ご助言有りがたく」


「さても不思議な事よ。信行は家臣のみならず民も見放したる暗愚。なれど兵の士気は下がらずか。誠に面妖よ」


「確かに。これでは我らの策が?」


「ふむ、まだ機ではないのか。兵には休息を取らせよ」


「は、兵に休息を取らせまする」


「なぜ休息を取らせるか、分かるか十兵衛?」


「織田は打って出てくる事はありますまい。時が経つのを待っておりますれば」


「ならば、我らも待つことじゃ。いずれ機は熟す」


「は、仰せの通りに」


 織田と斎藤はにらみ合いを続けている。



 ※※※※※※※


 藤吉の元を離れた小六は津島に向かっていた。


 そして小一と合流する。


「小六姉さん。兄さんは?」


「熱田だよ。今川を足止めするんだ」


「そんな! 無茶だよ!」


「無茶をやるのが男ってもんだよ」


「はぁ、兄さんは何て?」


「ハハハ、さすが兄弟。分かってるじゃないか! 仕込みを終えて、火を放てってね」


「今川が来てるから時間が無いんだね。分かった!」


「あたしは道空殿に話があるからね。後で会おう」


「分かった。じゃ後で」


「さぁ、あたしもいっちょやるかねぇ!」


 小六は堀田家に向かい、小一はどこかへと駆け出していた。



 ※※※※※※※


 俺は熱田で勝三郎に追い付いていた。


 そこで勝三郎が加藤順盛の説得に失敗したのを知った。


「すまん。藤吉」


「ちゃんと守護不入の件は伝えたのか?」


「もちろんだ! ちゃんと伝えた」


「ならどうして?」


「加藤家は。いや、熱田は『今川に合力する』とはっきり言われたんだ」


「へ、何で?」


「知らん。私も『なぜ今川に合力するのか』聞いてみたが答えてもらえなかった」


「う~ん、今川の進軍を前から知っていたのか?」


「それは? 確かにそう考えれば……」


「分かった。俺が加藤殿に会おう」


「大丈夫なのか。藤吉」


「とにかく熱田に合力してもらえないとどうしようもない。やるしかないんだ!」


「よし、俺も一緒に会おう。もう一度お願いしよう」


「やるぞ、勝三郎!」


「おう、藤吉!」


 俺と勝三郎は加藤順盛を説得に向かった。



 ※※※※※※※


 鳴海城では山口親子が二つの書状に目を通していた。


 一つは織田家。

 織田信光の書状で今川の動きに対しての報告を求めた書状だ。


 そしてもう一つは今川義元本人の書状だ。


 その内容は……


「今度、尾張を取ることになったから、あなた達領内を案内しなさい。ちゃんと言う事聞いたらご褒美一杯あげるわね」(現代語訳)


 その書状を前に山口親子は。


「父上いかがいたしますか?」


「織田家の奉公もこれで終わりかの」


「織田家を裏切るのですか? 我らは織田家に大恩があるのですぞ?」


「だが、今度の今川は本気じゃ。それに斎藤も来ておる。そもそもなぜ今、今川が動いておるのか。我らは知らせを受けておらんのだぞ!」


「もしや今川にバレているのでは?」


「その可能性は有るかもしれん」


「雪斎ですか?」


「わからん。どうすべきか」


 山口親子は迷っていた。


 赤塚の戦い以後、山口親子は許されて旧領はそのままにされていた。

 さらに裏で信光から銭を贈られていた。

 そして、今川に対してのダブルスパイを行っていたのだが。

 今回の今川の動きを山口親子は知らされていなかった。


 その事が山口親子を迷わせていた。


 織田につくか、今川につくか?


 山口親子は決断出来ずにいた。



ちょっと実験的に書いて見ました。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


応援よろしくお願いします。


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