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藤吉郎になりて候う 〜異説太閤紀~  作者: 巻神様の下僕
第三章 蝮と海道一の弓取り

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第五十五話 今川の襲来にて候う

怒涛の三章スタートです!

 今川が動いた!


 予想よりも三ヶ月も早い!

 何故、今なのか?


 いや、考えるだけ無駄だ。

 今考えるのは向かってくる今川軍三万をどう迎え撃つかという事だ。


「勝三郎。この事を知っているのは?」


「今ここに居る三人だけだ」


「直ぐに信光様と平手様に知らせよう。他にはまだ知らせるとまずい。騒ぎになって収拾するのに時間をかけてしまう」


「そうだな。いつもの部屋を用意する。用意出来しだい呼びに来る」


「分かった。小六は兵を纏めてくれ。騒ぎはおこすなよ!」


「分かったよ。任せておくれ」


「頼む」


 二人は直ぐに部屋を出て行った。

 俺は直ぐに出せる糧食や武具の数の把握に務める。

 まずは自陣の兵力を知らないといけない。


 話はそれからだ!


 まずは美濃斎藤家に当てた戦力を調べる。

 林佐渡を大将にした軍勢、その数五千。

 清洲の兵を中心に名古屋城の兵力を根こそぎ集めた戦力だ。

 内約は、清洲三千、名古屋二千だ。

 これのおかげで清洲と名古屋は手薄だったのだ。

 そして、その軍勢に佐久間を中心にした戦力三千が合流している。

 林と柴田を殺害して兵を吸収して合計八千。

 そして昨日、市姫様と信広様の千がこれに合流しようとしている。


 合計九千。


 その他の兵力を集めると万は越える。

 これなら斎藤家も進攻を躊躇するはずだ。

 斎藤家は問題ない。


 問題は今川だ。


 最前線の鳴海城は二千の兵力で守っている。

 兵糧と武具はたんまりある。

 一、二年は余裕で籠城できる。


 しかし、三万を相手にしてはどうだろうか?


 現実的に考えると三万の兵力に囲まれるプレッシャーに城の兵達は耐えられるだろうか?

 おそらく無理だろう。

 一人に対して十人以上で囲まれるのだ。

 その圧力に耐えられる訳がない。


 増援を送らないといけない!


 今清洲には解雇された馬廻りの兵千五百がいる。

 この兵力は津島から来ている。

 解雇された馬廻りを津島で雇い直したのだ。

 貴重な実戦経験者を雇わない手はない。

 それなりに銭が掛かったが必要経費と割り切った。


 それが役立った!


 この兵力を向かわせて途中で増援を加えれば二千にはなるだろう。

 鳴海とあわせて四千か。

 何とかなるだろうか?

 なるべく時間を稼いで斎藤家を追い払った味方と合流出来れば。


 ……無理だな。


 そもそも数が違う!

 となるとやはり『桶狭間の戦い』を再現するしかないか?

 しかし、今川方は兵を分散するだろうか。

 それが問題だ。


 三万の兵力を分散させて敵の本陣を叩く!


 言うは易しだな。


 はぁ、どうするか?


 時間はない。


 そうだ山口教継だ!


 彼がいた。

 彼から今川方の情報を得よう。

 よし、とにかく今川方の情報を得ることが大事だ。


 俺が考えを纏めた時、勝三郎が呼びに来た。


 さぁ、軍議だ!



「今川が動いたと?」


「左様です。信光様」


「兵はどのくらいじゃ?」


「道空殿の文には三万との事」


「「三万!」」


 いつもの部屋に四人の男が集まっていた。


 清洲城代としての信光様。

 それを補佐する平手のじい様。

 そしてそれを補佐する俺とこれから兵を率いる勝三郎。


「急ぎ市に報せるとしよう」


「報せるのは構いませんが、市姫様には眼前の斎藤との戦に集中してもらうべきです」


「私も藤吉と同じ意見です」


「バカ者! 三万と一万じゃぞ。どちらを優先するかは一目瞭然であろうが!」


「政秀、落ち着け。そんな事はこの二人も分かっている」


「分かっているのなら何故今川ではなく、斎藤を優先するのじゃ?」


 俺と勝三郎は顔を見合せ、打ち合わせ通りに話を進める。

 実はこの部屋に来る前に勝三郎とは打ち合わせ済みだ。


「平手様。まずは目前の脅威を払うべきです!」


「う、うむ。目前とな?」


「勝三郎の言う通りです。実際に尾張領内の近くまで来ている斎藤を優先すべきです」


「しかし、今川はどうする?」


「信光様。道空殿の報せではまだ今川方は駿河を出たばかりにて、多少の時間が有ります」


「時間か?」


 信光様と平手のじい様は考え込む。

 そこで俺は話を進める。


「まずは全力をもって斎藤方を追い払い、返す刀を持って今川方を追い払うのです!」


「しかし、斎藤方を追い払うのに時間がかかれば今川がやって来るではないか?」


「そこで鳴海の教継殿を使うのです!」


 勝三郎がどや顔を決める。

 いいぞ勝三郎!

 もっと攻めろ!


「鳴海の? 山口教継か!」


「そうです信光様。今こそ教継殿の力を使う時です!」


 うん、勝三郎の方が俺が言うより説得力があるな!


 話は夕刻まで掛かったが何とか二人の了承を得ることが出来た。


 だが、問題は市姫様なんだよな?


 素直に言うことを聞いてくれるだろうか。


 そして俺と勝三郎はそれぞれ兵を率いて動く。

 勝三郎はかつての馬廻り千五百を、俺は小六含めた蜂須賀党三百。


 俺は市姫様の所に、勝三郎はとある場所に。


「勝三郎気を付けろよ?」


「そっちもな。藤吉」


「俺は市姫様に会ったら直ぐにそっちに向かう。準備をよろしく」


「分かった。こっちは任せろ。では!」


「おう。向こうで!」


 俺は勝三郎率いる軍勢を見送った。

 そして俺も出発する。

 向かうは市姫様の元。


「よし、行くぞ!」


「はい! あなた」


「その『あなた』呼びは止めないか小六?」


「もういい加減なれたでしょうに。それにこの戦いが終わったら晴れて夫婦」


「何で? 市姫様の許可は貰ってないだろう?」


「だってぇ。この戦いの一番手柄はあなたですもの。そのあなたが頼めば許可は」


「いや小六。それは死亡フラグだ。俺はまだ死にたくない」


「死亡フラグ? なんなのそれは?」


「いや、忘れろ! 行くぞ。はいよー」


「あ、待ってー あなたー」



 俺の前途は ………多難だ。


お読み頂きありがとうございます。


誤字、脱字、感想等有りましたらよろしくお願いいたします。


応援よろしくお願いします。

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