第86話『VSフィーネ』
「しまった――!」
先ほどまで追いかけていた少年の顔を思い浮かべて、桜香は苦い表情を浮かべる。
健輔という存在を上手く使われた。
この一言に尽きるだろう。
自らの生存を捨てることでの、勝利への貢献。
本当の師弟関係なのではないかと思えるだけの行動だった。
チームの頭脳は参謀陣なのだ。
前衛が壊滅しても彼女たちが残っている以上は、クォークオブフェイトはまだ戦略的な動きが取れる。
「そして、これがその答え――!」
この状況を逆転させる最後の手段。
戦力が足りないのならば新しく投入すればいい。
大規模戦におけるコーチ再臨の条件は、獲得ポイントを消費すること。
つまりは敵チームの撃破が必要であり、1度召喚すれば倍のポイントが失われる。
フィーネの再召喚でアマテラスを撃退した分はほぼ失っているが、変わりに桜香と戦える手段が手に入るのならば安いトレードだろう。
復活した女神を前にしては流石の桜香も背は向けられない。
「ここで出てきますか! フィーネ・アルムスターっ!」
桜香でも全霊を出さなければ打ち倒せないクラスの魔導師。
アルメダのように桜香に対する認識も甘くない。
間違いなく同格の存在であった。
油断なく、接近してから渾身の斬撃を放つ。
「ふふ、運が悪いと思っていましたが、私の運も捨てたものではないですね。神様とは、本当に粋な事をしてくれます」
戦意を漲らせて、フィーネは桜香の斬撃に応じる。
剣が駆け、槍が迎え撃つ。
煌びやかな舞。
美しさと力強さ、そして怖さが合わさった不思議な空間。
両者は魔力を散らせ合う。
「随分と気合を入れて出てきましたが、1対1で私に勝てるつもりですか!」
「愚問」
1対1ならば負けないという桜香にフィーネも強く言葉を返す。
桜香が発する意思に負けない強さ、女神は自分の強さを信じていた。
彼女のとて欧州最強を冠した者。
何よりも、嘉人が己を捨てて呼びだした者が雑魚では彼の献身に報いることが出来ない。
「私は、フィーネ・アルムスター。この名に夢を抱いた者たちを裏切らない義務がある」
皇帝が呼吸をするように王者である者ならば、フィーネは己が王者であると正しく認識する者である。
桜香のように余裕がない者とは違うのだ。
浮かぶ微笑みが消えることはない。
彼女を信じる者たちに応えることが出来るように、かつても今も在り方は変わっていなかった。
もし、変わったものがあるとすれば、1人で全てを背負った『女神』ではなく、1人の人間として『フィーネ』として此処にいると思っているだろう。
紡いだ絆は形を変えて、彼女に確かな力を与えている。
「何より私が無策であなたの前にいる。そんな夢物語を描かれるのは癪ですね!」
「策の1つ、2つ程度で――!」
統一系の漲る魔力が桜香に圧倒的な力を与える。
全力を更に突き抜けた先、フィーネすらも圧倒するパワープレイは誰も寄せ付けない。
叩き付けられる斬撃はもはや斬る、というよりも圧するという領域になっている。
ランカークラスの技巧派でも中途半端な技では相手にならない。
しかし、銀の女神は崩れなかった。
涼しい顔で桜香の攻撃を全て完璧に防ぎ切る。
「ちィ! 相変わらず、守りだけは上手い!」
「守りだけ、とは心外ですね!」
舌打ちをして距離を取っていた桜香にフィーネが意識の間隙を突く形で肉薄する。
絶妙な間合いへの侵入に桜香は一瞬、言葉を失った。
「その技っ!」
「ふふ、見覚えがありますか?」
「――本当に、苛立たせてくれますね!!」
鮮やかな微笑みは挑発の意が籠められている。
異様にタイミングを計るのが上手い魔導師などそれほど多くはない。
相手の呼吸を読む技、伝授されてはいないのだろうが、盗むのは容易であっただろう。
コーチでありながら、しっかりと自己強化は怠っていないということの表れであった。
「小器用、ですからね」
「当て擦りを!」
桜香の激情に呼応して、力が大幅に上昇していく。
天井知らずの圧倒的な力は最強に相応しい。
「これは、どうして……!?」
「ふふ、さて、どうしてでしょうか? 不思議ですね」
桜香の力は物凄い勢いで上昇している。
つまりは何れはフィーネの技巧でも対処できなくなるのは明白なのだ。
理屈として間違ってはいない。
つまり、桜香の認識と何らかの差異がこの場にはある。
桜香の危惧が現実のものとなったのは、短い交戦時間の中でも幾度目かわからない激突のタイミングであった。
「えっ……」
甲高い音を響かせて、桜香の身体が後退する。
事象として珍しくもなんともないこと、つまりは桜香が力比べで負けただけの話ではあった。
そう、桜香が力で押し負ける。
彼女が不滅の太陽でなく、九条桜香でなければ何も問題ことがこのタイミング、この場では大きな問題となってしまう。
「ば、バカな!」
「ええ、幾度でもどうぞ」
フィーネは余裕の笑みで漆黒の暴威を静かに、そして確実に防いでいる。
急激な膂力の上昇を疑い、それではないことに気付く。
膂力が上がっているのならば魔導機の操作感覚なども相応に変化するだろう。
それが見受けられない。
「まさか……この距離で、私が気付かないレベルの制御!」
1番単純な答えではないのならば、次の解答が必然として正答となる。
フィーネの能力は自然という環境を操作する力。
精緻な制御が可能ならば、それは物理法則を支配するに等しい。
統一系を纏う桜香への直接干渉は基本的に意味をなさないが周囲への干渉は別である。
「あの、決戦術式は多人数用のもの!?」
「流石ですね。正解ですよ。あのレベルの異界を形成する力を、場を整えるの使えば――こういう事も出来ます」
己の固有能力への理解と納得。
決戦術式は健輔をモデルとしたものだけではなく、フィーネの成長を表している。
再び繰り返される煌びやかな舞。
今度は明確な差異が浮き彫りとなっていた。
桜香の圧倒的な斬撃が目には見えない何かで防がれる。
フィーネを象徴する自然の力。
おそらく彼女以外の変換系では現在扱うことも困難な事象はこの不可思議な現象の答えを持っていた。
「試合での重力操作の解禁、まさかこのレベルまで完全に御しているのですか」
額に汗が浮かぶ。
総じて変換系は防ぎにくい能力だが、魔力体であれば桜香は無敵である。
しかし、フィーネのように完全に周囲へ干渉することに特化されると話は別であった。
ごく普通に生きている人間の1人である以上、桜香にも超えられない領域がある。
「あなたの統一系、何も対策をしてないと思うのならば心外ですね。私は皇帝ではない。ましてや、あなたでもない。しかし――」
桜香を膂力で無理矢理に後方へと突き飛ばす。
統一系の出力上昇に追随する力強さがハッキリと示されて桜香の表情が歪んだ。
先ほどの4つ巴と違い、今のフィーネは単体方面へと力を絞っている。
決戦術式『ラグナロック』。
序盤のものを『戦術モード』と呼称するならば、こちらは差し詰め『戦闘モード』であろう。
有り余る出力の全てを単体での戦闘に絞っている。
「――私も3強の1人だ! 侮られるつもりはない!」
「がッ、くっ……!」
空を飛ぶ桜香に猛烈が負荷が加えられる。
環境そのものを書き換えるのがフィーネの力だとすれば、統一系で無効化できないのも当然だろう。
あれは既にそこにある現象なのだ。
いくら桜香でも現実にあるものを粉砕するのには手順が必要となる。
「あれだけの力を内部で循環させているとしたら……!」
複数のランカー、しかも上位ランカーを取り込んで余裕があった。
あれだけの力が単体に向かえばどうなるのか。
答えは現状が示している。
自らが力押しされる、という状況。
これがどれだけ異常なのかは本人が1番よくわかっていた。
「認識を、改めます!」
この女神を昨年度までと同じように考えると足元を掬われる。
桜香の中で思考がハッキリと切り替わった。
油断ならない敵を前にして、安定性を再び放り投げる。
目標に注力して、粉砕する――それが桜香のやり方だった。
1点突破の力はあらゆる流れを断ち切る。
フィーネが自然の化身ならば、彼女は暴虐の化身。
どちらも力を持っているが、より圧倒的に敵を粉砕するのは間違いなく桜香であった。
「術式解除! 全力全開ッ!」
「やはり、そうきますか! こちらも、応じさせていただきますッ!」
魔力をバーストさせた桜香をフィーネが迎え撃つ。
術式による制御。
土壇場で目覚めた精緻な技術だが、急場しのぎの側面もある。
桜香が自分で組み立てないといけない状況では対応力に難があったし、何より出力も限界が設定されてしまう。
無限の出力で術式を使えるのならばともかくとして、枷が付いた状態で小細工を用いて勝てると思うほど桜香はフィーネを舐めていない。
むしろ、誰よりも強く警戒していた。
健輔の影響を如実に受けたであろう同格に近い魔導師。
桜香も広義の意味では健輔の影響を受けているのだ。
侮れるはずがない。
「はあああああああああッ!」
「やはり、このバカ出力は厳しいですか!」
お互いに白兵戦に焦点を絞って、全力でぶつかり合う。
漆黒の魔力が天井知らずに出力を上げて、徐々にフィーネが押され始める。
自然干渉は今も行っているが、全方位に無尽蔵に噴き出す魔力がフィーネの干渉を妨げていた。
力を籠めれば突破は可能だが、手間が増える分パワーの上昇にタイムラグが生まれる。
僅かな間とはいえ、桜香の力を正面から素の力で受け止めるのが厳しいのは言うまでもないだろう。
「はッ!」
「やッ!」
お互いに侮れないパワーがあるゆえに、共に決定的な勝負に踏み切れない。
拮抗する戦い、しかし、このまま続ければ不利なのはフィーネであった。
槍と剣という武器の違いもあるが、お互いのバトルスタイルの違いがここで噴き出し始めている。
フィーネは白兵戦も弱くないが、普段はどちらかと言うと技巧を重視していた。
対する桜香は徹頭徹尾パワースタイルである。
普段から使い慣れていない者と使い慣れている者。
この戦いでは天秤が後者に傾くのも当然だった。
「くっ――!」
「押し通す! どこまでも――ッ!」
フィーネが決定的に押し負ける。
桜香の連続攻撃を槍が捌けなくなっていた。
防戦一方。
女神の技を凌駕する太陽という怪物。
かつての順位のままに両者の優劣は天下に示される。
「ふ、ふふ、ふふふっ」
敗北に傾く天秤。
少しずつ劣勢となる戦況を前にして、フィーネは堪えきれないと言った風に笑いだす。
驚いたのは桜香であろう。
必死に戦う彼女の前であろうことか、劣勢な側が余裕を見せたのだ。
あってはならない事態に彼女も攻撃の勢いが鈍る。
「何が、おかしいのッ!」
しかし、鈍ったのはほんの一瞬だった。
今度は奇妙な態度を怒りに変えて、九条桜香は吠える。
この状況の何処に笑う要素があるのかがわからない。
当然の疑問を前にして、フィーネは嫋やかな笑みを浮かべて一言、
「秘密、です」
と微笑んだ。
「なっ……」
「――あら、いいんですか? がら空きですよ」
生まれた隙に0距離での雷光が叩き込まれる。
自爆に等しい雷撃は両者を巻き込んで、周囲に轟音を響かせた。
統一系すらも貫通してくるノーモーションの攻撃に、桜香もダメージを避けれない。
「私の魔力を、貫通した……!?」
「当然ですよ。貫通できる現象を、用意したのですから」
笑いながら言う言葉は不吉な何かを孕んでいる。
用意した。
貫通できるものを、用意したと確かに言っている。
桜香の中で序盤に見た不思議な光景と力が繋がった。
フィーネ・アルムスターの力の本質とは一体何なのか・
「し、自然現象、あらゆる……!」
「正解ですよ。プレゼントは――こんなので、どうですか?」
フィーネの背後から光の束が羽のように広がる。
桜香の表情が明らかに引き攣った。
統一系を必ず突破するレーザー攻撃。
こんなものを魔力に頼って防ぐのは悪手でしかない。
「あの固有能力を、使いこなしているの!?」
「いいえ。ただ、別の使い方に気付いただけです。そもそも自然を人間が御そうというのが過ちでした。出来るはずがないんですよ」
フィーネの固有能力の問題点は彼女が1番良く知っている。
世界を滅ぼす可能性すらもあると言われた規格外の力。
圧倒的であるために、フィーネの未熟さでは扱いきれない。
これは1つの事実であったが、ある前提が無視されている。
如何に魔導とはいえ出来ないことは当然のように存在していた。
自然現象の完全制御。
どのように覚醒したのかもわからない能力にどうしてそんなことが可能なのだろうか。
健輔と戦い、違う視点の大事さを知った時からフィーネの自己への問いは始まっていた。
「私も、あなたには届かずとも才はあると自負しています。私たちにとって、強くなるとは自分を知ることでしょう?」
「固有能力は、自分を映す鏡……!」
どれほど無秩序で、全く縁がないように見えても固有能力は必ず自己の願望と結びついている。
この原則が絶対だと仮定した上で、フィーネの願望とは何なのか。
気付いてしまえば簡単だろう。
この力に覚醒したのには1年生の時期。
才能と力に溺れて、上を只管に見て我武者羅だった日々だ。
「偉大で、かつ強大なもの。私が漠然としたイメージで目指していたモノ。目的がなくて、よくわからない情動で強くなろうとしていましたからね。昔見た雷などの印象もあってこうなったのでしょう」
子どもの時に嵐の日、理由もなく怖かった。
フィーネの原風景にあった強さの『象徴』が自然だったのだ。
結果として強い飢えに呼応して、規格外の能力が生まれて、当たり前のように全力を制御出来なかった。
根本の部分がある種の畏敬なのだ。
敬っているものを完全に御するなど不可能だろう。
フィーネが常識を弁えて、自然への知識を蓄えるほどに無理だという想いが沸き立ち、結果として能力は更に制御不能になる。
これまでの彼女がそうだった。
「しかし、今は違います。わかるでしょう。どうして、こんなことが出来るのか」
「あなたにとっての、強さの象徴――!」
「ええ、だからこそ本物だと思えば制御が出来ず、逆に作り物だと思えば扱える。まあ、認識を変えるなんて言うのは言うほど簡単ではないですが――」
詐欺のような方法だが、認識の違いで世界の見え方が変わるのよくあることだろう。
フィーネの変化も1つ視点を加えただけである。
彼女の克己が魔導世界と似た原理で、結果だけを導き出した現象をこの世に引き摺り出したのだ。
「――こんな私を最強だと信じてくれた人たちと、強い人だと言ってくれた敵がいる。だったら、応えるのが私の在り方です」
自らだけでは越えられずとも、誰かが背を押してくれれば越えられる。
個の力を高めたように見えても、本質的にはフィーネは自分を再確認しただけだった。
クリストファーのように1人で立ち続けることも、桜香のように才能で立つことも彼女には出来ない。
フィーネ・アルムスターは誰かに認めて貰い、それに応えたいという願望がある。
つまり、女神は――寂しがり屋だったのだ。
「出会いによる変化はあなただけのものではないです。いえ、それは私の強さの証。才能で立つ者に、劣るなどと思っていただきたくないですね!」
「くぅ!」
槍の一振りに光で雷撃、風と火が宿る。
攻撃の全てが派手で規模も大きい。
統一系のパワーに全力を傾けないと危ないが、代わりに失った多様性がフィーネへの攻撃手段を失わせていた。
「こんなところで!」
桜香にとっては統一系を手に入れて以来の苦戦だった。
力押しでなんとか出来たゆえに今まで露呈しなかった取りえる手段の少なさが問題となっている。
術式を使えるようになっているため、いざとなればそちらに切り替えるのも手だが代わりに力を失う。
普通の魔導師ならば当然のように迷ってきた選択肢の問題。
此処に来て、初めて桜香はこの命題に頭を悩ませる。
「このまま、やるしかない!」
迷いはあるが、いつまでも迷っている方が問題である。
距離を取られて遠距離戦に徹される方あ危険だった。
何より後ろに下がるのは桜香の誇りが許さない。
健輔だけでなく、多くの人物の影響を受けた、などと言っている女に負ける訳にはいかないのだ。
「私の強さは、あの日から変わらずにある! ふらふらと、あちこちに寄生しないと生きていけない分際で、舐めるなッ!」
桜香の激情に呼応して、『魔導吸収』の力が上昇する。
この理不尽なまでの才能。
感情を切っ掛けに簡単に跳ね上がるのが、桜香の強さの証であった。
フィーネにとっても、厄介極まりない特性。
相手をするのにこれ以上に面倒な相手もそうはいない。
「まあ、わかり切っていたことですが」
桜香の啖呵に苦笑で返す。
爆発する恋情が彼女の強さであり、同時に弱さであろう。
仮に対象本人であっても負けられないと叫ぶのはある意味で本末転倒としか言いようがない。
しかし、矛盾しているゆえに桜香の中では釣りあいが取れている。
不安定な状態であろうが、才能の怪物には養分にしかならない現実。
彼女の才能ですらも制御できないという脅威を前にしては、フィーネのとっておきも徐々に押されていくしかなかった。
「ぐっ!?」
光が、風が、炎が、そして水が薄められていく。
一息で吸収されないのはフィーネの強さの証だろう。
それでも大きく威力を減じた状態では、桜香の打倒など夢のまた夢である。
白兵戦の領分では劣っている以上、戦闘での勝者が桜香であるのは明白だった。
諦めるつもりなど微塵もないが、この状態から逆転するには時間が必要である。
そして、コーチであるフィーネにはそれがない。
「せめて、一太刀は!」
「ぐっ!?」
己の防御を捨てて、全力で敵の防御を貫く。
捨て身の特攻を桜香も完全に防ぐことは出来ない。
時間はまだあるが、余力がある内に桜香の削る選択をフィーネは選んだ。
葵と健輔が2割、これで更に2割は削れただろう。
「見事……!」
桜香からの返礼がフィーネを貫き、再臨した女神は敗北してしまう。
圧倒的に強い太陽、このまま再びクォークオブフェイト撃滅に動くのは間違いない。
勝者は桜香。
これは揺るぎない事実であったが、この場においてはフィーネもまた勝利者であった。
「まったく、私を前座扱いにするとは……」
強くなっても相手もまた強くなっていた。
誰かに背を押してもらっても1人で戦うのはフィーネの本分ではないのだ。
1人で戦うのは桜香であり、クリストファーの役目。
領分を超えたからこそ、この光景は必然だった。
悔しさ、口惜しさで胸はいっぱいだが、同時にわくわくするような高揚感もある。
彼女がギリギリまで消耗させた最強に対して、彼がどのように戦うのは非常に興味があった。
嘉人の置き土産たる魔力場を目印にここまで直進してきた男に全てを託す。
「すいません、力及ばずここまでとなりますが――後はおまかせします」
「気にしないでいいさ。俺もこれが本番だと思ってるしな」
「……やはり、こうなりますか」
桜香の攻撃がフィーネに吸い込まれる瞬間に声が響く。
虹色とも違う揺らめく色彩。
万華鏡を宿した境界が2度目の決戦に挑む。
最強の太陽を抑え込むクォークオブフェイトの決戦兵器。
4チームが彩る戦い、その中でも最大級の決戦が始まろうとしていた。
明日の更新は私用によりお休みさせていただきます。
詳細は活動報告に記載しますので、そちらをご確認のほどよろしくお願いします。




