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君の記  作者: 秋原 悠
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第一話:前途多難な日々

白い天井とコンクリートの壁。

パイプ型のベッド、右腕はギブスで固められていて自由に動かない。

ここの病院の生活も彼此五日目に突入だ。

何故入院しているかというと遡ることおよそ五日前、人に言えないくらい間抜けな事に車に曳かれて右腕を骨折、左足は脚の大半が変色したほどのすごい打撲だそうだ。

まだそれならばいい。

恥ずかしいのは曳かれた原因である。

車道の半ばで曳かれそうな猫を助けようとして出しゃばった結果がこの有様である。

しかも猫は事故の音に驚いて僕のことは気にせずに走り去っていったし。

僕としては恥ずかしい事この上ない。

この前だって見舞いにきた友人にも思う存分からかわれた。

今思い出すだけでも溜息が出てしまいそうだ。

「はぁ〜」

というか出た。

こうして部屋で惚けていても仕方がない、外の空気でも吸いにいこう。

幸い脚は短距離なら歩ける程度には回復している。



とりあえず庭に出ることにした。

庭はそれほど広いというわけではないが花壇があり、ベンチもいくつか設置されている。

とりわけ特別なものがあるわけでもない普通の庭。

とりあえずはベンチに座ろう。

病室がある三階からエレベーターを使って外に出るのも今の僕には左足が原因でかなりの肉体労働になっているため些か疲れた。

まぁ、これが現役高校生でありながら病院生活をしている理由である。

松葉杖をつきながらベンチに向かう。

ベンチに座ると体の疲労感から解放された。

五日間入院していてもまだ肉体のダメージはそれほど回復していないらしい。

筋肉痛に似た痛みを堪えながら体を動かしてみる。

「…っ」

痛い。腰を軽く捻っただけで横腹を鈍器で殴られたような痛みが走った。この調子だと退院はもう少し先になりそうだ。まあ、学校を休めるのは嬉しいけど…。呆然と庭を見渡す。花壇に目がいった。花壇には紅と白のコスモスが丁寧に植えられている。その片隅で一人、少女がしゃがむようにしてコスモスの花を見つめている。


その光景に一瞬、目を奪われた。


離れた距離からでも分かる整った艶やかな長髪と顔立ち。肌は日の光を浴びて一層と白さを増しているようだ。容姿からして僕と同い年くらいだろうか。部類で分けるのなら確実に美人に入るだろう。だが僕が目を奪われたのは美人だとかそういう類からのものではない。ただ幻想的だったから。その少女は僕の目にはとても儚く映って、消え入りそうだった。ここの患者かな、と思った。まあこの庭は入院患者専用なのだからそうなのだろうけど。いつまでも見ているのはおかしいのでさり気なく辺りを見回す。が、誰も居ない。昼下がりの空気は秋にしては暖かく、太陽の光が気持ちいい。そんな事を考えているとなんだか眠りたくなってきた。ここは外だが夕方にでもなれば看護士の人が起こしてくれるだろう。三角巾が邪魔だが半分眠りについてしまっているために外す気力も残っていない。暖かい陽光に照らされながら僕はそのまま眠りについた。



どれくらい経ったかは分からない。ただ物音に気がついて僕は目蓋を開けた。まだ働かない頭で必死に今の時間を知ろうとする。空を見上げた。まだ太陽は高い。自分が思ったよりは寝ていなかったらしい。

欠伸を一つ。

脳みそに酸素が送られ、頭が半分ほど覚醒する。

辺りを見回す。

風が流れ芝生が靡く。

靡く芝生を頼りに何気なく風を追って視線を移動させると花壇に行き着いた。

紅と白のコスモスが小さく揺れる。しかし、その下では…。

「…え?」

自分の目を疑った。そこには先程僕が見ていた少女が花壇の前で倒れていた。

久しぶりの投稿です。期待して待ってくれていた皆様に感謝です。

それにしても、何だか技量が落ちているような気が…。

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