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第百二十話 ちょっと直してみた

 休憩も終えてマトトセさんを先頭に遺跡を目指す。もちろん道などないので木の根を乗り越えたりしながらだ。


「このあたりには、あまり来ないからアタシもよく知らないねぇ」


 オババさんが木の陰から顔を覗かせた鶏冠が燃え盛ってる鶏みたいな魔獣をワンパンしながらそんなことを言う。リーリさんとかトルエら魔法使いの遠距離攻撃可能チームが同じように木陰から姿を見せた魔獣を片っ端から射殺していく。


「むー、暇だよー」


 ベッキーさんがブーブー文句を言うけど俺的には安全なのでこのまま参りたいところ。安全第一よ。


「そろそろなんだけどねぇっと、見えたね」


 マトトセさんが前方を指さす。木に紛れて見えにくいけど、金属でできたナニカがちらりと見えた。全容が判明しないと何の遺跡なんだか不明だ。


「お客さんも来たようだねぇ」

「わ、でっかい熊さんだ!」

「腕が6本あるじゃん!」


 俺たちが向かう方向から、のそりと姿を現したのは、腕が6本ある赤銅色のでっかい熊だ。戸建てで例えると3階窓あたりに顔がある。腕は肩、脇、横っ腹からそれぞれ左右に生えてて、ちょっと虫っぽくてキモイ。


「レッドデモンベア、でしょうか?」

「狩ったことがあるから間違いないね」


 マッキンドール氏がすっと前に出た。お任せしようかなーって思ってたら「いっくぞー!」ってベッキーさんが飛び出していった。

 獲物を取られててうっぷんがたまっていたのかもしれないけど連携とか考えて欲しいな、なんて。

 トテテテって感じで走っていくベッキーさんは両手で持った巨大なハンマーを横に構え、フルスイングし始めた。


「ええええぇーい!」


 気の抜けた叫びでグルングルン横回転しながらレッドデモンベアに近づいていく。ジャイアントスイング独楽みたいだけど、あれにあたりたくはない。


「グ、グルァ? グルァ!!」


 熊氏がちょっとうろたえてるけど、それでも雄たけびを上げながらベッキーさんに突撃していく。

 レッドデモンベアは3本の右腕とベッキーさんのフルスイング巨大ハンマーが激突した。


「ばっきぃぃぃん!!」


 ベッキーさんのハンマーがレッドデモンベアの3本の腕をへし折った挙句そのままボディをフルスイングした。


「グルァァァァァァァ!」


 レッドデモンベアは断末魔と一緒にぶん殴られてどこかに飛んでいった。空たかーく舞い上がっていった。


「熊さんは星になったんだ」


 遠くの空で何かが光かったもん。でも爆散したとかは考えたくない。


「よ、よゆう~~~~」


 目が回ってフラフラのベッキーさんがその場でコテンと倒れた。


「まったくベッキーは」


 と言いつつもリーリさんが駆けよってポーションをドバっとかけてた。あれで治るんだからすごいよね。


「あれまぁ、あれを一発でのししちゃうとは、いまの若い子はすごいねぇ」

「アタシも楽ができそうだよ、ガハハ!」


 お婆ちゃんズには受けがいいようだ。まぁ楽になるならねぇ。

 なんてことがあったけど気を取り直して遺跡に向かう。歩くこと10分くらいで遺跡が見えるあたりに来れた。木に侵食されていてボロボロで何とか形がわかる程度だけど、これって化学プラントとタンクなんじゃないかなって。

 平べったい円柱状のタンクっぽいのがあって、その横には細長いタンクっぽいのとそれとつながてったと思われるパイプ類が転がってる。あと建物らしき残骸もあって、事務棟とかそんなんじゃないかなって。

 

「これって化学工場なんじゃないかなー」


 思わず口から転げ落ちた。


「カガウコウジョウ?」

「それなんじゃん」

「聞いたことないねぇ」

「あんたはこれがなんだかわかるのかい?」


 ポロッと零したら色々突っ込まれた。なんとなくなんだけどね。


「見たことがあるような感じだったのでー。でもそれであってた場合、欲しい魔道具がある可能性が高いです。というか、絶対にあります」


 化学プラントだったらポンプの10台や20台はあるもの。選り取り見取りだぜ。しかも修繕スキルで直せるから、ちょっと希望が見えてきた。


「あの音が鳴る魔道具は、あそこで見つけたのさ」


 マトトセさんが指し示したのは、工場らしき方ではない、その付随の事務棟らしき遺跡だ。工場にオルゴールは必需ではないし、個人の持ち物か娯楽施設でもあったのかな。


「ふむ、そうしたら、我々はこちらを探そう。大人数で探すよりも手を分けたほうが早く見つかるかもしれない」

「遺跡の中だと大きな魔獣は出ないから、それもいかもしれないねぇ」


 マッキンドール氏が事務棟を指さすとオババさんが同調する。確かにあの中にさっきのデカい熊は入れないし。それに俺が行きたいのは工場の方だしね。


「そうすると、人数の関係であたしはこのおにいさんと一緒に行くかねぇ」

「うむ、そうしてもらえると助かる」

「じゃ魔獣が出たらよろしく」

「任されよう」


 マトトセさんとマッキンドール氏の間で交渉成立の様子。ということは、こっちは俺含め6人と1匹だ。


「じゃあ二手に分かれてさ――」


 突然、事務棟の方でドドドと何かが崩れる音がして、もうもうとした砂煙が漂ってきた。廃墟になってるから突然崩れるのか。

 皆も声は出さなかったけど、魔獣とエンカウントするときよりもびっくりしてる。


「いつ崩れるかわからない遺跡は危険だ」


 マッキンドール氏が真剣な顔になる。仲間の命を預かるんだからそう判断するのは普通だ。

 廃墟になってるから崩れるんであって、じゃあ建物が廃墟ではなかったらどうなんだろう。


「あのー、ちょっと建物を直してもいいですかね?」


 軽く手を挙げてそんなことを聞いてみた。皆の視線が刺さる。


「なに突拍子もないことを言ってんだい!」

「ダイゴさんなら、可能そうですわ。コルキュルの教会を元通りにしてしまいましたし」

「アジレラの教会も、綺麗になったよ!」


 マトトセさんはエラい剣幕だったけど、リーリさんとベッキーさんは知ってるからか擁護してくれた。ありがたい。


「できるかどうかは別として、試すのはいいんじゃないかい?」

「デア、あんたはかるーく言うねぇ」

「試すだけなら損はないじゃないか」

「まぁ、損はないけどさぁ」


 オババさんはやってみろというがマトトセさんはいまいち信用しきれない様子。

 待ってても結論は出そうもないし。やってしまおう。


「じゃあやってみますねー」


 遺跡に向かってちょっと歩くと、ぶちことベッキーさんとリーリさんが付いてきた。護衛ってことだろうか。

 遺跡の破片に手と触れて修繕と念じれば、遺跡全体が淡く光りだす。

 穴だらけで崩壊しつつある外観はメキメキ音を立てて修復されていく。建物に入り込んでいた枝なんかはばっさり切断されてしまった。建物内からは「ぐぎゃー」なんて悲鳴も聞こえてくる。中にいた魔獣なんかが修復途中に触れてしまったりとかしたんだろうか。南無南無。


「なななんだいこれ!?」

「いや、すごいものだね」


 マトトセさんもマッキンドールさんも唖然と眺めてる。皆もポカーンと口をあけっぱなしだ。


「おーおー、すごい勢いで直っていくじゃないか。これなら崩れることはなさそうだ」


 オババさんは楽し気に笑った。なリーリさんも笑ってる。。なんだろう、エルフって冷静とは無縁ぽい印象よね。


「あっちは直さないのか? 探しているうちに壊れても困るぞ」

「そうじゃん。なんで直さないじゃん?」


 サンライハゥンさんとトルエから詰問されてしまったけど、一応理由はあるんだ。


「俺が探してるのは流体を押し出す魔道具で、直して動かれちゃうと取り外しが難しくなりそうでねー」


 稼働しちゃって止め方がわからないポンプとか取り外しできないでしょ。なら壊れた状態で確保した方が確実だよねってこと。


「ということで、探しに行くよー!」


 レッツゴーゴー!

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