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第百十六話 光の使徒

 どちらかの拠点内だと狭いだろうということで、表で夕食を食べることに決定した。1級ハンターがふたり、それもオババさんがいるということと俺が戸締りをすれば神様クラス以外は跳ねのけるというお墨付きがあってのことだけど。

 ちなみに腕白一番は1級ハンターのマキンドール氏と2級ハンターのヤンキー、コサック、エスキモー、ズールーで構成されてる。ヒャッハーだけど魔法使いもいるようだ。

 大森林に入る手前とはいえ、外でのんびり食事など常識外だとサンライハゥンさんにはジト目で見られた。


「椅子におとなしく座るのもアレだし、テーブルに料理を載せるから好きにとって食べる立食式にしようかと」

「ふむ、それは助かる。僕らはおとなしく座って食べるほどお行儀が良くなくってね」


 苦笑いのマッキンドール氏。ヒャッハーさんたちだからってわけではなく、ハンターの気質がそうなんだって。確かに、おしとやかを装うリーリさんも酒が入ると本性が出るもんね。

 おっと、背中に怖い視線を感じたのでここまでにしておこう。


「こちらも出すけど、テーブルとか借りてもいいですか?」

「お安い御用さ。さぁ皆、食事の準備だ!」


 マッキンドール氏が手を叩いてヒャッハーさんたちに促すと、彼らは「うっす」と返事をしキビキビ動く。やっぱり体育会系だ。周囲に沢山の燃える石を置いて明かりにしてる。


「こっちもテーブルを出してね。ほしい人は椅子もね」

「わかりましたわ」

「あたしは、立ったままで食べるよ!」

「あたしらは落ち着いて食べたいじゃん」

「あたしは、適当に食べるさ」


 ふーむ、おとなしいロッカポポロさんもいるし、こっちはテーブルで食べたい人が多そうだ。俺は、作りながら食べるかな。大食漢が多そうだし、のんびり食べてる暇はなさそうだ。


「もちろん、酒はあるんだろうねぇ」

「当然ですわ!」

「前祝には酒が必要さね!」


 前祝いとはなんぞ。武闘派エルフたちがなにやら盛り上がってる。狐娘ふたりも準備そっちのけで酒盛りを始めた。ヒャッハーよりもひどいじゃないさ、うちの女の子は。

 まじめに働いてるのはロッカポポロさんと意外にというと失礼だけどサンライハゥンさんが黙々と動いてる。スラムでのリーダーだったからかな。あ、ベッキーさん、つまみ食いはダメ!

 鶏肉とくれば唐揚げがマストだしでかい手羽先もある。俺がひたすら揚げてる横にマッキンドール氏が来た。物珍しそうに目をキラキラさせてる。この人は目も光るのか。


「とてもいい匂いと刺激的な音で僕らのおなかが悲鳴を上げてるよ」


 マッキンドール氏が笑みを浮かべて歯を光らせたけど、ついでによだれも光ってる。ほかの人も酒を飲んでたりするけどチラチラこっちを見てるんだよね。

 唐揚げはにんにく醤油のシンプルな味付けで王道だからこそ匂いだけでよだれがあふれるのさ。

 とりあえず5キロの肉を揚げたら食べることにした。この人数で5キロなんてあっという間だけどレイクバードの肉を全部揚げてたら暴動が起きそうなんだよ。それに、揚げたてを食べたいしね。

 主食はパンで、俺は米にした。お好きなほうを選んでって感じで。スープは無しにした。だって酒盛りしちゃってるから飲まないでしょ。あ、ロッカポポロさんは飲まないかもだから簡単なコンソメスープでも作っておこう。余れば保管しとけばいいさ。


「はい、できた分から食べましょう!」


 テーブルには唐揚げが山になってる大皿が鎮座して、その隣には同じくらいの皿に乗ったサラダがある。パンの山は4つ作った。米はお櫃にあるけど、これは俺しか食べないかも。スープの鍋は俺調理スペースのそばだ。取り皿は各自すでに手に持っててスタンバイおっけーだ。

 なんだけど、皆こっちを見たまま動かない。うーむ。


「足りないのはわかってるから、まだ作るよ?」

「……そうじゃないさ。お前さんの挨拶を待ってるのさ」

「挨拶?」

「そりゃそうだろう。お前さんがここにいる者たちのリーダーじゃないか」


 オババさんに窘められてはっとした。要は飲み会の乾杯の音頭か。皆の視線が「早くしろ早く食わせろ暴れるぞ」と脅してくる。急がないと暴動が起きる。


「えっと、俺のわがままにお付き合いいただきましてありがとうございます。明日から大森林での探索になるので今日はおいしいものをたくさん食べてください!」

「「「「うぉぉぉぉぉ!」」」」

「がんばるよ!」

「やりますわ!」

「死なない程度に頑張るじゃん」


 それぞれが意気込みを言いつつお皿に群がった。さて俺は作りますかね。

「うめぇ!」「絶品だ!」「ほっぺが落ちそう!」「うまうまじゃん!」なんて感嘆の声を聞きながらひたすら唐揚げの山を作っていく。もちろん、つまみ食いをしながらだ。


「ベッキー、ブランデーを入れすぎですわ!」

「リーリだって、注ぎすぎ!」

「なんだこの酒、めちゃくちゃうめえぞ!」

「こっちのほうがもっとうめぇぜ!」

「フハハハ! うちの姪っ子が作った酒なんだ、うまいに決まってるじゃないか!」

「婆さんマジかよ!」

「姉さんその肉あたしんじゃん!」

「早、勝」

「もーずるいじゃん!」

「おう嬢ちゃんら、新しく来たからこっちを食いな」

「追加支給が来たじゃん! ありがとじゃん」

「ほら、あんたもしっかり食べな」

「お肉もサラダもおいしいです!」


 うちの子たちとヒャッハーさんたちは別々になるかなって思ったけどオババさんが酒を持って突撃したらあっさり打ち解けた様子。愚痴の言い合いでしかなかったブラック設計や時代に比べちゃうと、雲泥の差だ。俺自身、見てるだけでも楽しいし。


「調理ばかりで、食べているかい?」


 酒が入ったコップ片手にマッキンドール氏が近づいてきた。


「作りながらつまんでますよ」


 もぐもぐしながら答えた。噛むと肉汁があふれ出てくるダレイクバードの肉、おいしい。


「そういえば、俺を水の使徒って言ってたけど、俺言ってましたっけ?」


 言った記憶はない。もしかしたら忘れてるかもだけど。

 彼は「あー、それは」と言って笑った。そしてキラリと歯が光る。


「さらっと言ってしまうと、僕は光の神様の使いでね。わが主から水神の使徒のところに行くようにも言われててね」

「光の神!? だからことあるごとに歯が光るの?」

「光の神様の使徒だからね!」


 ふぁさっと前髪を書き上げるマッキンドール氏は歯はおろか前髪さえも光らせた。決して、髪が薄いわけではない。光り方も嫌みがなく綺麗なので文句も言えない。ぐぬぬ。


「もちろん、エーテルデ川の件はあってのことさ。失礼なことをしてしまったからね。それに、うちの2級ハンターも鍛えたいって思惑もあるけど」

「……なるほど、よからぬ企みじゃないのがわかれば、俺も安心です」

「はは、光の神様に誓ってそれはないよ」


 彼はニッコリ笑顔で歯を光らせる。ぐぬぬ、芸能人みたいで、なんか負けた気がする。

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