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第百十一話 ドシロ村

「すみませーん、ちょっとお邪魔したいんですが、よろしいですかー」


 俺が声を張り上げると働いてる白熊さんたちが一斉にこちらを向いた。20人くらいだけどガチ白熊だから見られるとコワイ。白熊さんたちがお互いを見合って、その中から眼鏡をかけた白熊が歩いてくる。ちょうど鼻に引っかかるようになった眼鏡だ。


「こんなところに人族が来るなんて、どうしたんだい?」


 眼鏡白熊はもこもこに着ぶくれた俺たちの恰好をじとっと見ながらそう言った。


「水神様の導きで、ここで水の困りごとがあると聞きましてやってきました佐藤大悟です」

「水神……そういえばつい先日、水神の使徒となる3人がやってきたんだけど、あまりの寒さに準備すると言って引き揚げてしまったなぁ」

「それって、教皇様一行かなぁ。熊獣人の女性でした?」

「あぁ、リーダーらしき人物は、女性だったねぇ」


 あぁビンゴだ。これだけ寒けりゃ撤退するよなぁ。俺だって防寒着がなけりゃ来れないもん。

 

「で、その水で困っていることを教えてもらえればなと思っててですね」


 俺がそう言うと眼鏡白熊はぼりぼりと頭をかいた。


「ふーむ、解決してもらえればそれは助かるんだけど」

「お金とかはいらないので。この事態の原因に水神様も絡んでるようでですね。俺たちで解決したいんですよ」

「そうか。だからわざわざここまで来たのかい?」

「えぇそうなんですよ」

「そうなんだね。僕個人では決めかねるので、皆にも聞いてくるよ。あ、僕はザシロ・ヒ・ホワイトベアーという」


 眼鏡白熊ことザシロさんは村の中に戻っていった。後ろ姿は白熊そのものだ。


「小さい村だね!」

「ここだけで水を送り出しているには少ない気もしますが」


 ふたりはそう言うけど、白熊たちが持ち運んでる桶はかなり大きくて、五右衛門風呂くらいはある。あれを軽々と持って運んでるんだから、少人数でもなんとかなってるのかも。

 そんなことを話していたらザシロさんが戻ってきた。


「こちらとしても困ってはいるので、まぁやるだけやってもらおうということになったよ」

「許可、ありがとうございます」

「じゃあ早速だけど案内するよ」


 ザシロさんがついてきてというので、歩いていく。


「ここはドシロ村といって、ホワイトベアーに水を供給するのが目的の村なんだ。数年ごとに住人が入れ替わるんだけど、僕らは運が悪かったみたいでね」


 ドシロ村の中央を走る道を歩いていく。道はこれしかなく、両脇には氷でできた平屋の家が立ち並ぶ。みな四角形の家で、プレハブ工法の家に見えなくもない。入り口から小さな白熊が顔をのぞかせているから手を振ったら引っ込んでしまった。まさに()()()()だ。


「僕らはこの北限から出られないから、子供らは人族を見るのは初めてなんだ。別に他意はないんだ」

「あ、大丈夫ですよ。珍しいものは気になっちゃいますよね」

「そう言ってくれると助かるね」


 ザシロさんはハハハと小さく笑った。

 白熊さんたちは割とのんびりというか穏やかな感じで、俺としても話しやすい。とても助かる。

 村の中心にあの炎の柱があるようで、どんどん近づいてる。


「あれが、炎の神が作った生命の炎というものなんだけど、先日炎が暴走してしまってね」


 ザシロさんが困ったように鼻を掻く。

 炎の柱は、村の中心にある広場にそそり立てって、おおよそ20メートルくらいの高さだ。近づくと暑いので遠巻きに眺めてる。


「もともとは、もっと炎は小さくてね。その周りに土神様が作ってくださった鍋があって、そこに氷を入れることで水を作っていたんだ。氷原の下に地下水路があって、そこを通って水がホワイドベアーまで届くんだけど……」


 ザシロさんはそこで言葉を止めてしまった。炎がでかくなってそれが不可能になってしまったってことだろう。炎の柱の中をよく見れば、確かに鍋らしきものがあって、そこから大きな管がつながって地面というか氷の中に潜ってる。


「かわりに海水を入れてるんですか? 飲んでも大丈夫なんです?」

「確かに、ホワイトベアーに住んでる親族の体調も良くないのは知っている。でも水を恩まないと僕らホワイトベアー族でも死んでしまうからね。この氷は氷の神様の作ったもので、この炎でしか溶かせないんだ」

「すごい氷なんだなこれ」


 驚いた。そりゃ建材にも使うよ。

 ってことは、もしかしてアジレラに持ち帰っても溶けなかったりするのかな。


「あぁ。あちらは日の神の力が強いから氷を持って行っても溶けてしまうよ?」

「やっぱり、うまい話はないんだな」


 そんなことができてれば氷室くらいあるだろうしね。


「ダイゴさん、この炎の中に鱗を入れればもしかしたらうまくいくのでは?」


 リーリさんがそうささやくのでまずは実行。ザシロさんには断ってからだけど。


「投げるならあたしが!」


 ベッキーさんが手に握った鱗を力いっぱい炎の柱にぶん投げた。放物線を描いて落ちていくそれは炎に触れるとボボボと水蒸気を吐き出した。もももと雲のように上るけど途中で雪になって降ってきた。


「わ、キレイ!」

「熱で水が蒸発しちゃうのかー」

「この勝負は火の神の勝ち、ということでしょうか」


 三者三様である。ただ、水神様の鱗じゃ解決できないのは分かった。別な案を考えないとだめだ。


「氷を溶かす方向じゃないとうまくいかなそうだ」


 多分、これは守らないとダメなんだと思う。神様の力が強いこの世界では、人間はその力を覆せないんだ。


「とすると、代わりの何かを用意しなけれなばりませんけど」

「それをどうするかだけど」


 同じように炎の柱で氷を溶かしてそれを流す装置があればいいのかな。ベルトコンベアーで氷を炎の中に運ぶか、それとも今の炎の柱音近くで氷を溶かしてポンプみたいなもので水を地下に送り出すか。

 なんにせよ、回転する魔道具が欲しいな。ハンドミキサーにしたあのコマの魔道具よりも大きい奴が。


「氷を溶かす鍋みたいなのはレパパトトスさんに作ってもらえばいいかなー。そこに接続するポンプは魔道具を見つけないと厳しそう」

「ダイゴさん、魔道具が必要なのですか?」

「あー、あのィヤーナス君にあげたコマの魔道具の大きいのがあればなんとかなりそうなんだけど」

「じゃあ、大森林にいく!? 探しに行く!?」


 ベッキーさんが目を大きく開けて見上げてくる。手をぎゅっと握ってワクワクしてるのが丸わかりだ。


「行くならばオババを誘うのがよいかと。あとは、時間がかかりそうなので拠点を含めてそれなりの人数で探す必要がありそうですわ」

「拠点かー。オババさんもいるとなると、あの部屋じゃ狭いかな」

「大森林はデリーリア南部に広がる広大な森です。少数での探索は時間がかかりすぎますわ。北限の水の問題解決が目的なのですし」


 うーん、どうするか。誰かに協力を求めようにも俺には伝手なんてないしなー。


「大森林自体は2級ハンターなら探索可能ですわ。わたしとベッキーなら問題ないですし、サンライハゥンさんも可能ですわ」

「行くよ!」


 そっか、サンライハゥンさんもいたっけ。でも数が足りないか。俺も行くけど、雑魚過ぎて拠点のお留守番だしな。


「オババと組むなら、マヤとトルエも連れていけますわ!」

「わ、じゃあクランのみんなで行けるね!」

「そういえば、そうですわね!」


 ベッキーさんとリーリさんは手をパチンと合わせて嬉しそうだ。そういやそんなの作ったっけ。責任者たる俺が忘れてたよ。


「じゃあその方向で行くとして、いったんアジレラに戻る感じかな」


 ここにいても解決しないし。この村の人らは炎で氷を解かせば自分たちの飲み水は何とかなるっぽいしね。

 水神様の鱗で時間稼ぎしている間に見つけなくちゃ。

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