最終話 感謝とおはよう
神の起こす奇跡がどのように再現されるかなどその仕組みを解明できる罰当たりはそうそういないだろう。そんな猶予も与えはしない。
一箇所に集められた秘宝はお互いの存在を認識した時点で反応を示した。全てが合わさり一つのものに圧縮される。その点こそが「エリクサー」と呼ばれるらしい。カエデはそれに指先を触れる。途端に現象が発動した。
この図書館を始まりに波動が世界を揺らし停まっていた時間が刺激される。石化の雨は吹き飛ばされ空間に生きる事を許可した。世界は再び日常を取り戻す。誰も知り得ない生命活動の停止は無事に解除され試練は全て攻略された。
しかし最後の大仕事が残される。少年は図書館の新たな支配者に自分の役割を告げる。
「カエデさん。僕の出番です」
カエデの感覚は図書館と融合し全てが見えた。この装置の本来の姿もハッキリと認識できる。仲間と共に向かうべき場所へ少年を案内した。
地下水路に向かい。異界の門が出現したその中心に到着した。全ての力は一度この場所に集まる。何故ならここが心臓部だからだ。流れる水は血液の役割をし館内に活力を循環させている。つまり光の魔法使いゲレルが造ったこの装置の制御はこの下だ。少年は彼に体をしばらく譲る。
再び目覚めたゲレルは全てを悟り微笑んだ。目の前のカエデに労いの言葉をかけた。
「良く頑張ったね。ありがとう。後は僕に任せておくれ」
少年の体が光り始めた。床から基盤が浮かび上がる。ゲレルはそれに触れた。意識が図書館の中枢に溶ける。装置の封印システムを構築する仮想空間に二人は旅立っていった。
そこは全てが混ざり合ったような世界。異界の特徴が全て再現されている。けれど殺伐としていた。過去の試練で死んでいった凡ゆる生き物が破壊を繰り返している。けれど瞬時に自動修復をして元に戻った。しかしどこか劣化した姿になっている。それが繰り返され少しずつシステムは修復が困難になっていく。ゲレルはその様子を見て話した。
「彼らは怒っているんだ。僕がここに閉じ込めたからね」
少年はそれを黙って聞く。ゲレルは返事を待たずして最も激しく怒る蔓の怪物に近づいた。それを見た彼女は動きを止めて彼を凝視して言った。
「あら、ゲレルではありませんか?のこのこと戻ってきて…。どうなるかわかってるんでしょうね!」
ゲレルは長いことこの世界で過ごしてきた。怪物を含めて8つの代表を仮想空間に閉じ込めて試練を運営するための歯車に使ってきた。そこに少しばかりの絆が生まれていた。自分はそれを裏切った。少年の中に帰ることで。
ゲレルは怒る彼女に向かって一言「ごめんね」そう言うと頭を撫でた。怪物は無言でそれを受け入れる。その姿は光り始め小さくなっていく。そしてクルミのような種に戻った。それを少年に渡す。
残りの代表も一つずつ元の姿に戻した。残るはドラゴンだけだ。立ち込める霧の中で一体だけ身体を丸めて眠る。近づくゲレル達の存在に気が付いて顔を上げた。その表情から感情を読み解くのは難しい。けれど怒ってはいなさそうだ。ゲレルは挨拶をした。
「やぁ。今はアテルイと言うんだね。今回も苦労をかけた。ごめんね」
ドラゴンは昔話を思い出す。もう随分昔のことだ。けれど昨日のように思える。故郷で竜王をやっていた頃、ゲレルとタカシャマルに殺されこの場所で目を覚ました。当初は怒り狂って暴れたがもうどうでも良くなった。ここは静かでしがらみもなく意外と心地の良い場所に思えてきたのだ。
そしてゲレルがこの世界からいなくなり己は悟った。もうすぐ振り出しに戻ると。話す言葉はもうない。だから黙って頭を差し出した。ゲレルがその上に手を置くと巨大なドラゴンは一枚の鱗に戻った。
ここからは最後の仕上げである。ゲレルが少年に頭を差し出して言う。
「さぁ。今度は君がやる番だよ。大丈夫。もう全て知っているはずさ。落ち着いてやれば出来るよ」
少年は唾を飲み込み深呼吸した。そしてゲレルの頭の上に手を置いて言う。
「お疲れ様です。今までありがとう御座いました」
ゲレルは光に包まれて圧縮されていく。段々と点に集まりそしてポツンと消滅した。後に形のあるものは何も残らなかった。媒介となっていた彼の亡骸は擦り減りとうの昔に崩壊していたのだ。ただ彼の知識と叡智は少年の中に残された。
少年の目は七色に光る。先祖代々引き継がれてきた魔道の知識と叡智が全てを教える。もう彼に敵う者はいない。けれど彼よりも命を大切に思っている者もそういないだろう。世界は一度無に帰り真っ暗な空間になる。全てが一から組み上がっていく。新しく生まれる仮想空間と試練は少年の優しさも含んだものになるだろう。それは産まれてきたこの世界への感謝に溢れていた。
後日、いつもの日常に戻った少年は自室のベットから起き上がった。顔を洗い制服に着替えて一階のキッチンに向かう。
そこにはいつもとは違う日常待っていた。ダイニングテーブルに椅子が四つあり寝ぼけ眼のガイアがホットミルクを飲んでいる。そしてその向かえに座るのは久々に見た父でコーヒーを飲みながら新聞を読む。一ミリも自分を見ることなく「リクト。おはよう」と言った。それに返事をする。
二つの椅子は空だ。自分は弟の隣の席に着く。そして直ぐに自分の分のホットミルクが前に置かれた。向かえに座った母は照れくさそうに僕を見て「おはよう。リクト」とそう言ったのだ。
終わり
いやぁ。すみません。達成感に浸ってしまいますね。
何を書こうかとても悩みますが、とにかく感謝です。ここまで読んでいただいた貴方の元へ行って「ありがとうございます!!」と直接言いたい気持ちです。
こんな所からですが言わせて下さい。
『誠にありがとうございます!!』
今後の話ですがこの「少年とJKと不思議な図書館」を賞に応募しようと考えています。欲深い私ですが本気で夢を追いかけています。応援していただける方は是非とも評価、ブックマーク、いいねをよろしくお願いします。
そしてイチオシレビューも大歓迎です。是非ともこの感動を熱いうちに文字に書き起こして下さい。
貴方の夢も叶いますように。
喜郎サ




