冬の星のメロディ
冬の夜、リリは窓の外を見ていた。
空は深い藍色で、星たちはまるで銀の音符のように瞬いている。
雪は静かに積もり、風もほとんどなく、世界は音を忘れたかのように静寂だった。
「リリ、聞こえる?」
小さな声が耳に届き、リリが振り向くと、雪の妖精のキラがふわふわ舞っていた。
光の羽根が夜の闇に溶け、星の光を反射して小さな音符のようにきらきらと輝いている。
「聞こえる……?」
「うん、何か……風じゃなくて、雪や星が歌ってるみたいに」
リリは耳を澄ませる。
微かに、優しいメロディーが雪の上から流れ、森の木々(きぎ)や氷の結晶に反響している。
「……聞こえた」
「リリ、今日はそのメロディーを辿ってみよう」
「え、メロディーを辿るの?」
「うん、星や雪が教えてくれる秘密を見つけられるかもしれないよ」
リリは胸を高鳴らせ、キラの後を追って雪の森へ出た。
夜の空気は冷たく、頬を刺すようだが、心は期待で温かい。
雪を踏むたびに「ぎゅっ、ぎゅっ」と音が響き、そのたびに小さな光が雪面に反射して踊った。
「キラ、あの光がメロディーを導いてるのかな」
「そうだよ、リリ。星と雪が奏でる冬の音楽だよ」
二人は森の奥へ進む。
雪の枝に積もった氷が微かに揺れ、太陽の光は届かない夜でも、星の光が反射して小さな光の音符を作っているように見えた。
やがて二人は、森の中に開けた雪の広場に辿り着いた。
そこでは雪の結晶や氷のランタンが、まるで舞台のライトのように光を放ち、星のメロディーに合わせて揺れていた。
「すごい……本物のコンサートみたい」
「リリ、ここでは誰も邪魔できない。森の生き物や雪、星たちだけの特別な時間なんだよ」
キラは嬉しそうにくるくる舞い、光を雪面に散らす。
リリも手を広げ、光とメロディーを感じながら踊った。
広場の中心に立つと、雪や氷が共鳴して、澄んだ音色を響かせる。
リリは目を閉じて耳を澄ませ、体中で音楽を感じた。
胸の奥に広がる幸福感は、冷たい冬の夜でも消えない。
「キラ、星と雪って、こんなに綺麗に音を奏でられるんだね」
「うん、リリ。このメロディーは森の中の全ての命と繋がってるんだよ」
リリはゆっくり歩きながら、光と音の舞台を見つめた。
雪の結晶は星の光を受けて揺れ、音に合わせて小さくきらめく。
その輝きは、まるで冬の夜の心を照らす魔法のようだった。
二人は広場の奥にある小川のほとりに腰を下ろした。
小川の水面は氷で覆われているが、雪の振動や風で微かに揺れ、星の光を反射してキラキラと光る。
水面の揺れが、まるで音楽の波となって二人の心に伝わる。
「リリ、星のメロディーを聞きながら、雪の森を歩くと、世界が一つになるみたいだね」
「うん……ほんとうに不思議……」
リリは小川の氷に触れ、光と音の振動を感じた。
冷たい感触なのに、心は温かい。
不思議で、でも心地良い感覚だった。
夜が更けるにつれ、森の星と雪のメロディーは次第に柔らかくなり、二人の周りを優しく包んだ。
リリは小な息を吐き、目を閉じて今日の魔法を胸に刻んだ。
「明日も、星と雪のメロディーを聞きに来ようね」
「うん、もっと素敵な旋律があるよ」
二人は手をつなぎ、雪の森を後にした。
その夜の光と音の魔法は、リリとキラの心に永遠のきらめきと幸福感を残した。




