第29話 異界のゲート
ヴェローナ王国に伝わる勇者物語、その中に登場する退魔の剣、炎剣ブレイザード。
リュウト、ランコ、ヒビキ、アーサー、ゼラニスはその剣を手に入れるため、ヴェローナ城北の洞窟を訪れようとしていた。
「あーれ? この辺、来たことあるよ? なあ、ランコ」
ヒビキは、歩きながら不思議そうに周りを見回している。
「そうね、見覚えあるわ……。ここ、私たちが最初に来た所ね」
「はぁ? なんでこんなところに?」
「あ、思い出したわ。ゲートだよ、ゲート。泉ヶ岳の俺とリュウトのひみつ基地にさ、この国に繋がるゲートがあって、それくぐったらここに来たんだよね」
「……は?」
立ち止まり、目をぱちくりさせるリュウト。
「俺、それ初めて聞いたんだけど!? そういうの、
早く言ってくんない!? この数日間で言えるタイミング絶対あったよね!? 」
「あー、ごめんごめん」「ごめん……、リュウト」
謝るヒビキとランコ。
「そのゲート、どこにあんだよ!? 近くか? すぐ近くなのか?」
わざとではないにしろ、大事なことを伝えられていなかった事にご乱心なリュウト。
「リュウト、ごめんってば。落ち付け、落ち着いてくれ」
「ちなみにゲートはすぐ近くにあるわよ。 今の時間ならまだあるはず」
「よーしきた!! 行くぞおらァ!!」
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洞窟までの道を外れ、林の中にあるワープゲートまで来たリュウトたち。
「なんと……!」「フム……、これは初めて見たな」
驚くアーサーとゼラニス。
「マジじゃん……。これ通れば帰れんのかよ」
そして、ワープゲートを前に白目をむくリュウト。
「情緒……。リュウト、さっきから変だぞお前……」
「ヒビキ……、この世界に日本がない、帰れないという事実、それ受け入れられなくてもう考えないようにしていた俺の気持ち、分かるか!? 俺はこのワープゲートを見て希望と同時にヒビキとランコへの怒りが込み上げてきたよ」
「リュウト、とりあえず正気にもどって」
「ランコ! 俺はいつでも正気だよ!」
「まあまあ、リュウト殿、その辺に。このワープゲートがヴェローナへ来る手段ということは、リュウト殿は誰に連れ去られ、ゲートを通り、食堂の前に運ばれたのでしょうか?」
「それもあるかもだけど、記憶がないからなんとも……。でも、もしそうだとしたら俺をこっちに連れてきた黒幕がいるな……」
「オイオイ、なんか別事件の疑念が出てきたな。リュウト、お前誰かの恨み買ったか?」
「恨み買ってたら、食堂前まで連れて行かないでしょ。殺したいなら普通は林にそのまま放置よ」
「まあ……。よく分かんないけどルシフルの件意外にも突き止めないと行けない事実はあるみたいだな」
「フム、そうだな……。ところで、ここいらで少し確認したいことがある。リュウト少年、ヒビキ少年、ランコ少女。現在危機に見舞われているこのヴェローナ王国は、君らの故郷でもなんでも無い。それでも命をかけて戦おうとしてくれているのは何故だ?」
リュウトは、ゼラニスさん何言ってるんだ?という不思議な顔で答える。
「何故って……、それは俺が助けて貰ったからですよ。ゼラニスさん達が助けてくれなかったら俺どうなってたかわからないですから。そりゃ戦うのは怖いは怖いですけど、それでも、恩を返さず逃げ帰るのは俺が俺を許せないです」
「まあ、俺はリュウトを見つけて連れ戻しに来たんで、この国救わないと帰れないって言うなら協力するまでですね。あとアーサーの演説にシビレちゃったってのもあるかな」
「私は、ヒビキが思ってることプラス、この二人放っておくと大変なことしでかすのでそれを監視しておかないとっていう気持ちですかね」
ゼラニスは、そんな三人の覚悟の言葉に思わず笑ってしまう。
「ハハハ。まるで誰かを助けることが当たり前のような言葉だな……。こういう人たちを、死なせてはならないな……。わかった。改めて礼を言う。協力してくれてありがとう」
「私からも改めて。ありがとうございます」
深く頭を下げるアーサーとゼラニス。
そんな彼らの言葉、行動にちょっと照れくさそうな三人だった。
「ところで……、君たち。ヴェローナに来ることは向こうの世界の人に伝えているのかね?」
「あ」「あ」 「え?」
まずいことをしてしまった! という顔をするヒビキとランコ。そのリアクションを見て驚くリュウト。
「まさか、ヒビキ、ランコ……。俺は突然いなくなったから伝えられなかったけど、お前らは違うだろ。それなのに言ってないのか?」
「おう……。出かけてくるわ〜。としか」
「私も……。ヒビキに呼ばれたから行ってくる、としか。」
「……。帰ったら、まずはみんなに謝ろうな……」
リュウトな天を仰ぎ見る。帰ったら三人まとめてこっぴどく怒られることを想像し、悟りを開きかけている。
「おう……」「うん……」
ヒビキとランコもリュウトと同じことを考えていた。
セルフで反省している三人を見て、ゼラニスは説教をする気も無くなる。
「そうか……。過ちに気付き反省するのは素晴らしい事だ。しかし親御さんの心配は計り知れんだろうな。尚更無事で帰らないとな!」
「「「はい……」」」
五人は再び、炎剣ブレイザードが眠る洞窟へと向かい始めた。




