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女子高生の主張

 

 美咲は、真里とほのかに叱られてしまった。


 聞けば、なるほどと思える理由である。むしろ気づかなかった自分は世間知らずだった。


「そ・ん・な・閉鎖的な場所に女子高生を一人きり連れこんで、その理由が、従業員だからっていうものおかしい!」


「恋人とのデートでもないんじゃん?」


 真里とほのかは、デートの経験こそないものの、企業パーティなどの出席経験がある。

 真里は美術業界関係のパーティ。

 ほのかはスポーツ用品企業のパーティ。


 そのようなパーティに呼ばれやすい上流階級の家の子である。


 真里が、ドスンと椅子に座ってからふてくされて愚痴を吐いた。


「だいたいねえお客さんが居るってなによ。お客のために従業員にそこまで接待させるのはマナー違反なのよ!」


「あのね美咲、お互いの立場を知っている人同士が会うときって、たとえプライベートであっても、従業員とお客様ってことを意識させられてしまうもんなの。主催はそのお客さんの方で、美咲との接点はお店なんでしょ? だったらなおさら、お客と店舗従業員って立場にはなっちゃうよ」


「なんでそんなこと強調するのかっていうとね〜、あたしのお母様もパーティにお呼ばれすることがあるし主催することもあるけれど、そこには目的があるからよ。企業パーティなら画材の売買、コミュニティパーティなら絵画の交渉、ホームパーティなら家々の繋がりの強化ってね。美咲がその輪のために利用されるのが気に食わないってわけ!」


「利用って……うーん……それは違うと思うよ……」


「というふうに美咲が思っている状態で行くのが危ないんだな〜。利用される代わりに自分も利用しよう、ってんならいいけど、ただ楽しむつもりでいって思惑の食い物にされてトラウマ拵えるのが一番かわいそうだからさ。もうちょっと警戒しな?」


「警戒心は……不足してるかも」


「「だよね〜」」


(事情としては神様の謝罪と舞台の観戦なんだけど、それは言えないし〜。信じたい、だと逆に危なっかしさが増しちゃうし。二人に納得してもらうにはどう説明したらいいの……!? 行くには協力してもらわきゃいけないわけだし、うーーん……)


 すっかりしょぼくれてしまった美咲のつむじを、二人がぐりぐりと押していじる。


 責めて満足なんて趣味は持ち合わせていない。

 こういう時、頼ってくれたらいいのに。

 美咲は肝心なところで押しが弱い。


「……言いすぎたわ。謝らないけどね。落ち込むくらい行きたいんでしょ?」

「だったら誠意見せてもらおうじゃないの」


 なにやら雲行きが怪しくなってきた。


(勉強ノート以上に私があげられそうなものはなにもないよぉ〜!)


 それ以上、を美咲は必死に考える。

 だって真里たちは返事を待っていて、黙っているのだ。これは美咲が正解をできるかの「問い」であった。


「……私にできる誠意っていったら、勉強教えるくらい……もっと強化合宿する?」


「ちっがーーーーう! 強化合宿って微妙に脅すんじゃないわよ。じゃなくて、【四季堂】の店主に誠意みせてほしいってこと」


「おきつねさん?」


「ちゃんと主催者と話できてるの? てか対等じゃ生ぬるいから、こっちがマウント取れるくらいの立場じゃないとパーティの席では負けますがその点いかが? 美咲のこと守ってくれるんでしょうね? ってとこかな」


(おきつねさんはかなり立場が上だからオールオッケーだと思うんだけど、”何の”立場が上か言えない……。うう、必要とはいえ嘘を重ねるのって大変なんだな……教訓にしよう……)


「「案内して」」

「【四季堂】に?」

「「そう」」


 これはテコでも譲らなさそうだ。


 真里とほのかはそれぞれ反発しながらバランスをとる友人関係なので、普段なら第三者の意見も入りやすいのだが、タッグを組まれるとおそろしくガンコ。


 美咲が折れた。


「わかった……。じゃあ尋ねにきて。明日の予定はどうかな?」


「私は陸上部があるから明後日なら」


「んん、明日明後日は、著名な先生がやってきて自宅レッスンなのよね……その先なら時間を作るわ」


 ほのかは陸上選手として、真里は期待される芸術家として、ともに忙しい身である。

 それなのに美咲のことを案じて時間を“つくって”くれる。


 ジーーンと美咲はかみしめた。


「二人は本当にいい友達だね……」

「おわっ!? なぁに美咲甘えてんの?」

「なななな絆されないからねっ」


 二人に腕を回して、美咲はキュッと抱きしめた。


 腕の中で笑ったり赤面して怒ったりしている友人たちが、好きだと思う。

 母を追うようにたまたま入学したこの高校で、まさか人生でもっとも親しい友人たちができるとは思いもしなかった。すてきな良縁だ。



 ──窓の外は薄暗くなり、美咲の背中には影が落ちていた。わずかに揺らぐ。影が楽しげに手を振っているように。


 影は、不器用な少女たちをちょっとだけ素直な行動に導いてくれたのかもしれない。


 そして図書室には「怪奇!影が動く図書室」という怪談が生まれた。








読んで下さってありがとうございました!


平日になったら感想返信させて下さい(>人<;)


感想お聞かせくださって、ありがとうございます!♡


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 今回も楽しく読ませて頂きました。 ……何か昔のバラエティー番組のワンコーナーみたいなタイトル? ……屋上で叫ぶ?
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