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美咲捕獲大作戦

爽やかな風が美咲を誘って、学校まで守るように送り届ける。

そのあとを黒猫が軽やかについていった。

「にゃあ♪」





(久しぶりに二人の予定が合う日だよね)


(そうだな。今日を逃したら大会前で部活三昧になるから、もうチャンスはない。捕らえるぞ、ほのか!)


(気合の入れかたが蛮族だから。落ち着いて。真里)


(そんな猛禽類みたいな目で言われても説得力ないんだけど)


ほのかと真里が顔を見合わせて頷く。

本人たちが申告しているように闘気を立ちのぼらせているので、クラスの女子たちは遠巻きにしていた。


美咲がトイレから帰ってきて、教室の雰囲気がなんだか変だな? と首をかしげる。

が、真里たちは目で会話していたので教室の誰も事情を知らないのだ。

なんだかそわそわしながら、美咲は席に座った。


「ひゃ!?」


足首を黒い尻尾が撫でたような気がしたのだ。

がばっと押さえたが、なにもない。

キョロキョロしても何者もいないので、美咲はただ恥をかいてしまった。


(注目が痛い……今日も早く【四季堂】に行こうっと)


気分転換に、猫のキーホルダーを触る。

「にゃあぁ」ととろけた声が聞こえた気がしたが、また気のせいだったら困るので頭を振って無視しておいた。

美咲の見事な艶の黒髪が、みんなの視線を奪った。





放課後。

美咲追跡作戦が実行された!


(美咲さんは毎日同じ道を帰っている)


(見失っていたけれど、今度こそは!)


ほのかと真里は賭けに出た。

前に美咲を見失った地点に先回りして、体力を温存した上で、美咲のその後のあしどりをつかもうと考えたのだ。

地元ならではの土地勘で最短ルートを割り出した。


((来た!))


美咲が現れる。

いつもよりゆっくりとした足取りだ。

今日は急に気温が上がって、季節の変化がよく表れていたので、葉や花などを沖常に届けようと、辺りを観察しながら進んでいたのだ。


よく分からないけど大チャンス、とほのかと真里が息を殺す。

抜き足、差し足、しのび足!


「あっ。ちょっと立ち止まっていすぎちゃった……急ごう!」


美咲が走り出した!

真里とほのかも駆け出す!

風を纏った美咲の方が早いが、


「にゃあっ」


「きゃっ」


快調に飛ばしていた美咲の前に黒猫が現れたので、思わず足を止める。

真里たちは引き離されずにすんだ。


「あれっ。艶やかな黒の毛並み……あなた、もしかして彼岸丸さんと一緒にいた黒猫さん?」


「なーぅ」


黒猫が「そうよ」と言ったように、美咲は感じた。


「一緒に行こうか。【四季堂】へ」


黒猫と同じスピードで美咲は小走りに進みだした。

【四季堂】、と聞いて真里たちは頷きあう。前にも美咲が口にしていたキーワードだ。


「今回は逃げられなかったの、嬉しい。前ね、黒猫に横切られてしまったことがあったの。黒猫は幸運の証だから、通り過ぎられると不幸になる、なんて言い伝えがあってね……」


美咲は黒猫にひとりで話しかけ続けている。

(返事が返ってくるはずもないだろうに!)(ファンタジープリンセスか!)と真里とほのかが心の中で叫んだ。


商店街の細道を抜けて、おもむきのある雑貨店へ。

看板には【四季堂】の文字が。

美咲と黒猫は迷いなくそこに向かっていった。


後ろから、そっと忍ばせた二人分の足音がついてきていた。




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