エピローグ
お見合い相手として現れたのは美月さんだった。
どうやら彼女も急に親から引っ張られて見合いの席にやってきたらしく、お互いにびっくりした。
それでまあ、破談にするつもりだったのだけれど相手が美月さんの実家となれば色々と厄介な事態になる。そもそも親戚だし。下手なことをすれば僕は親戚一同から袋叩きだ。
でもよくよく考えれば美月さんが相手なら、まあ少なくとも今の暮らしともそう変わらないだろうしいいのでは?
いや彼女の気持ちを大事にすることが一番なのだけれど、少なくともレズ後輩だって介助のために同居OKだろう。
なので僕らは幸せな結婚をしてハッピーエンド……
と、二人でそんな話になりかけてたら後輩が悲鳴を上げてぶっ倒れた音が聞こえ、床下で死にかけてて病院に運ばれた。
心臓弁膜症で心不全を起こしたらしい。
周りからの進言を。早めの検診を。皆さんも心臓の叫びに気づいてあげてください──日本心臓財団。
いやそんなこと言ってる場合じゃなくて後輩は危うく命の危機だったわけだ。
どうも抱きつき症候群で心臓に負担が掛かることも影響を及ぼしているらしい。このままストレスの多い生活を送っていると非常に危険だとのことだ。
そしてどういうわけか、僕が美月さんと親しくなりすぎるとストレスがマッハになる……という。
人の命が掛かってるのでは仕方がない。
僕らの縁談はお互い同意の上で無かったことになった。だが親戚への説明上、なぜか婚約はしたみたいな状態になっている。
どちらにせよ今は後輩にストレスが掛からないように甘やかして治療を目指すことになった。少なくとも、抱きつき症候群が治るまでは。
そして抱きつき症候群発症から一ヶ月が経過した。
運が良ければそろそろ治ってくるはずだけれど……
「どうだ? 後輩」
「んーあーえー……ま、まだ治ってないですね! いたたたた……」
「気長に治療していこうねぃ」
そんなこんなで僕らの生活は相も変わらず続いている。
僕はソシャゲの追加イベントを組み立てながら、他所から持ち込まれるプログラミングの依頼をこなしている。
後輩は僕の仕事を取ってくるのと、シノビヤでの営業請負を半々でやっていて、向こうでの営業成績もかなり良いと評判のようだ。
美月さんはダンジョンを採掘に出かけてヤバげに貴重な江戸時代の遺産を掘り起こしながらも後輩とついでに僕まで甘やかしてくる。
たった三人のお互いに噛み合わない仕事で続いていく会社は通常営業中だ。
時折、鮫島さんや根津パパさんが遊びに来ては怪しげな助言などで関係を引っ掻き回そうとしたり、またレズ組織の襲撃も何度かあった。
いつもどおりの日常だ。精々変わったことと言えば、
「ごほん。あー……なーとーりー」
「おーし効いてる気がする! 効いてる気がしますよ先輩! 私のことはなにかこう、いい感じの感情を込めて名前で呼ぶように!」
「NTR」
「アルファベットにしない! なんか別の意味に聞こえますから!」
まあ、後輩を名前で呼ぶようになったぐらいか。
一ヶ月前に比べれば僕らは随分と気安くなっていた。
たったそれだけの変化でも、僕らの小さな世界は少しぐらい居心地がよくなっていくはずだ。
第一部完。
作者、年度末の忙しさとチンチンから血が出るマンになって精密検査受けたりで凄いスランプになりまして。
凄いぶん投げ方だけどここで一旦の終わりにします。無理に書いてもいい展開にならないと思うので。申し訳ない! 応援してくれてありがとう!
だけどこの世界観やらキャラクターやらは勿体無いので、同一世界での別の物語とか続きとかに利用したいです。
またいずれ妙な小説で!




