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90話「開放してくれた前皇帝を開放」

挿絵(By みてみん)


 ジメジメしてて薄暗い牢屋。ほとんど人もいないのだが、ただ一人だけ檻に閉じ込められていた。

 かつてシュパンシア帝国に君臨していた前皇帝であった。

 贅沢三昧して民に重税を課して私腹を肥やしてデブっていたが、今やゲッソリ痩せ細り顔は青い。


「……良いダイエットになっただろ? ククク……」


 皮肉るアクラスはいやらしい笑みを見せる。側に巨大な黒頭蓋骨。


「てめぇ!! ここから出せや!! 余をなんと心得る!? 余こそ世界を統べるシュパンシア皇帝陛下だ────!!」


 両手で鉄格子を握りぎゃあぎゃあ騒ぐ。が、虚しいだけだったぞ。


「ククク……! 巨大な力を欲して、我の封印を解いたのは誰だったかな?」

「うっ……ううっ!」


 恐怖に震え、跪く。


「我は晴れ晴れしているぞ……。長き封印から解き放たれてな! ハハハハハ…………!!!」

「……おのれ……この余を謀りおって…………! この化け物が! 余の帝国をどうした!!? 答えろ!」

「残念だったな……! 今やこの国は我の物! 終焉のガンマ皇帝として君臨し、人々に終わりの絶望を与え続けているのだ……」


 実は独裁で落差が激しい帝国だったんで、皇帝直々奮起して革命起こしてやって私腹肥やしてた権力者を全員投獄して、国づくりの勉強しつつ頑張ってインフラ設備してたぞ!

 それは大変だったがシムシティやってるようで楽しいぞ。もっと良い国にしよう。


「望みとあらば世界全てを終焉の闇で覆ってやってもいいぞ? フフフ……!」

「親父、厨二病はその辺にしろよ! お前のを聞いてるとこっちが恥ずかしくなってくるぞ!」

「父親をお前呼ばわりとか……我は悲しいぞ」シクシク


 生まれたばかりのお前はまだ可愛かったぞ。

 妻と一緒に育児は大変だったが多くのものを学べた……。なのに一九になると生意気になるものだな。

 ナッセも元気でやっているのだろうか?

 ちゃんと周りの人と打ち解けているのであろうか?

 結婚式に呼んでくれるかな? 孫できるかな? 早く会いたいな。


 密かにワクワクする皇帝。



「息子よ! 母が遠くで仕事しているからって、遊ぶのもほとほどにな。あ、ソシャゲの課金は一ヶ月三〇〇〇までだぞ?」

「うぜぇ……!」


 五万課金してる癖に父親ぶるなよな……!!


「ともかく、思った以上に帝国が悲惨だったのでな、それのインフラ設備、それに長らく封印されてた為にタイムスリップした感じだから、感覚を現代に馴染もうと父は苦労しておるのだぞ?」

「その割に、色んな女性ヤッて多くの子供こさえたくせに! この野郎! 羨ましいんだよォ!! どうやって引っ掛ける事ができたのか教えて貰いたいぞォォォォ!」


 慟哭するアクラス。


「……女たらしみたいに言うのは止めろ! ドラゴン族は凄くモテるんだぞ。なんか伝説の〜って言えば寄ってくるぞ。って、いやいや、我が終の遺伝子を世界各地に拡散して徐々に終焉へと導く壮大な計画あってこその事……。世界はおろか宇宙さえも終焉に沈める……それが我の最終目的……。何故なら我は終焉を呼び込むカラミティ・ガンマー・エンペラーエンドドラゴンだぞ」


 威厳溢れる皇帝は重々しく述べた。


「おい! 親父間違えてるぞ! カラミティ・エンド・ガンマ・エンペラードラゴンだろ?」

「あ、そうだったぞ……」


 皇帝は思わずテヘペロした。


「ってか親父。オレもドラゴン族だろ?」

「あ、うん。お前も弟も、我が子なら必然的にみんな持つぞ……。最強のドラゴンフォースもな」

「オレだって……! オレだってドラゴン族でドラゴンフォース持ってるんだ!! ……だからモテないワケは無いんだぞ……!」

「次男ことナッセは何故か妖精王に覚醒したが、お前は覚醒していないので、まだ普通のヒトだぞ」

「いつ覚醒するんだよ!」


 アクラスは悔しそうに唸っていく。


「こ、こんな奴らに…………余がッ…………」


 王は泣き崩れた。嗚咽(おえつ)して床に涙を落とす。


「おい! 親父コイツどうする? もう何もないただの貧相な男だしぞ? なんだか可哀想になってきたぞ。もう五〇過ぎて人生折り返しきてるんだしよ」

「……前皇帝よ。出たいと申したな? よかろう。その望み叶えてやろう……」


 檻が開けられるも放心する王。


「お前の腹心や権力者はもう職について、苦心しながらもパーティー組んで魔物討伐頑張ってるんだぞ? あの偉そうな軍事幹部だって、最初は年長にシゴかれて今や初心アーチャーとして頑張ってるぞ。更にワガママな王妃だって、今や謙虚な僧侶となって法王の修行に耐え忍んでいるぞ? あ、書記の方は好きな人庇って死んでしまったんだっけな」


 アクラスの言葉で、王の脳裏に親しかった側近の方々が浮かんだ。

 死んだ人もいて、どことなくショックを受けていた。


「あの人が……」


 ゆっくりと立ち上がり、よろめきながらも歩き去っていく。


「おい! 夜道には気をつけるんだぞ?」

「ククク……、北を真っ直ぐ進むとショップやホテルが近いから、そこで飲食を済ませて休息を取れ……。

 その三丁目交差点の右へ曲がると行き止まりに初心者向けのギルドがあり、そこで職を見つけるがよいぞ! もう五〇過ぎてはいるが、まだ遅くはない。なにしろ人生はまだまだ長い……。当面の生活費として三〇万円ポケットに忍ばせておいたぞ。ククク……!」


 そんな王だった人に、黒頭蓋骨の皇帝はにっこり微笑む。


「では汝の将来に祝福を……。グッドラック」

あとがき


アクラス「黒騎士? カブトやヨロイ重いし、下地の皮が臭ってたから二度と着ねぇ!」

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