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89話「帝国に君臨する皇帝と王子」

挿絵(By みてみん)


 三回連続で起きた防衛戦が終わってから二週間が経った────……。


 サンライト城で、ナッセはフクダリウス、ノーヴェン、モリッカ、コンドリオンとテーブルで囲んで話をしていた。

 オウガとドラゴリラは力を失って戦力外になった上に、多忙の管理職なので呼ばれていなかった。


「あれからシュパンシア帝国は不気味に静かだ。なぜか王様に謝罪文が届いていたが、たぶん表面上のもので、未だ侵略しない保証はない」


 フクダリウスたちは静かに聴いている。


「元凶のガンマ皇帝……。竜さんやニメア令嬢なんかよりずっと強い。今回は四天王がバラバラに攻めてきたおかげで何とかなったが、皇帝にとっては問題もないだろう。封じられるまで、数千年も世界を恐れさせてきた最強のドラゴンだ」

「それにしても、今世ではさしたる悪事も働いていないんですよね。むしろ四天王を抑えてたみたいですし」

「そこが解せない」


 コンドリオンの言う通り、不可解な皇帝の行動。


「まるで平和主義者みたいですよねー」


 モリッカは気楽に笑う。キャラ変わってるなぁ。

 一見すれば、確かにそのように見えなくもない。これまでの皇帝の言動からすれば信じられない話だ。

 本来は高圧的で独善的で恐怖統制で世界を支配しようとする野心家。


「……ニメア令嬢もナッセ同様に前世の記憶を持っている。という事はガンマ皇帝も同じく、警戒している可能性もあるな」

「その可能性もありますネ。ここぞという所でジェノサイドするかもしれまセーン」

「うむ」


 フクダリウスとノーヴェンの言う通り、ガンマ皇帝は野心家ゆえに失敗した前世を省みて慎重になっているのかもしれない。

 なにしろ、これまでの前世でガンマ皇帝はことごとく敗北してきた。

 ナッセ的に失うものが多すぎて、ループしてるだけで……。


「必ず宣戦布告の為に、こちらに外交してくるはずだ。前世の通りなら……」


 息を呑む一同。





 サンライト王国より遥か遠くの、暗雲渦巻く空の下で仰々しい魔城と、その周囲の城下町。

 世界最大の帝国とも言われ、高経済力を誇り、巨大な軍事力を有する。

 そこで暮らす人々は貧富の落差があまりなく、裕福に暮らせている。


 それこそが巨悪の魔王帝国。それこそがシュパンシア帝国である!


 魔城は常に渦巻く暗雲の下で佇み、不気味な静寂を保っている。

 まるで魔物や霊が潜んでるかのような雰囲気さえ醸し出されているぞ。


 薄暗い謁見の間。両脇に灯りを添える王の座する高台が権威を誇示してるかのようだった。

 高台には一人の黒騎士と、邪悪な炎を纏った巨大な頭蓋骨がいた。

 黒騎士は落ち着きないせいか、カブトやヨロイをバアンッと破裂させて(演出)素顔をさらしたぞ。


「ククク……息子アクラス王子よ。落ち着かないようだな?」

挿絵(By みてみん)

 ガンマ皇帝こと漆黒の頭蓋骨はせせら笑う。

 黒騎士だった青年は「チッ!」と、粉々になったカブトやヨロイの破片をもえないゴミとして処分した。(律儀)


「クッ! これが落ち着かずに入れられるか! 愚弟の癖にいい仲間と一緒に……どんどん強くなって……、ふざけてるぞ! もう四天王も、魔鱗族(マリンぞく)も撃退しやがったぞ!」

挿絵(By みてみん)

 アクラスと呼ばれた青年は、特徴的な逆立った一対のクセ毛と漆黒の長髪、ツリ目に邪を含んでいた。


「良いではないか……。どんどん成長していけば、いずれは王の風格を得るであろうぞ…………」

「あいつは王位継承権を捨てたんだぞ! それでも期待してるのかぞ!?」

「……この“カラミティ・エンド・ガンマ・エンペラードラゴン”の血が流れる由緒正しい息子であり、我が帝国の第二王子ぞ……!」


 ゴゴゴゴ…………!!


 なんと、黒頭蓋骨が徐々に変形して漆黒の巨大なドラゴンが顕現。両目に赤い光がカッと灯る。

挿絵(By みてみん)

 そして邪悪なるドラゴンフォースが膨れ上がり、周囲は重々しい圧迫感で包まれた。

 その膨大なフォースは帝国を中心に数百キロもの広範囲を覆い尽くほどだ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!


「やつは決して本名を名乗らぬが、れきっとしたカラミティ・エンド・ナッセ・エンペラードラゴン……ぞ! 我が深淵たる闇の血と力を受け継ぐ我が息子よ……」カッ!

「そんな厨二病くせぇ能書きはいい! 第一、愚弟は王位なんかに興味ないんだぞ!!」

「フフフ……、王位継承戦の運命からは逃れられぬぞ。太古の昔より生まれし我のエンド遺伝子は、お前にもナッセにも……、そして種族を問わず遺伝子は適合し覚醒の時を待つ。この試練を乗り越えたものこそ、世界を掌握せし“皇帝”となるのだからな!」

「チッ! 第一あいつは妖精王だろが!」

「ククク……」


 この厨二病クソ親父、全然話聞いてねぇよ!

 いつもの事だが自分の話に酔ってるんじゃないぞ!

 確かに、とんでもなく強いらしいがな!


 問題は長男であるこのオレだぞ!


 黒騎士と名乗って、親父の護衛で立ってるだけだし!


 愚弟には彼女いるし、ちゃんと仕事してるし!!


 とっくに初体験済んでるんだろうなぁ……!


 いいなぁ……!


 あの生意気な女戦士でも金髪巨乳美人だし、同棲しててあんなことやこんなこと……!


「うおおおおおおおお!!! オレも脱童貞したいぞォォォォォォォォ!!!!!」

「…………アクラス?」

「あ、いや! き、聞かなかった事にしろい!」

「……童貞。まだ童貞か…………。そうかまだ童貞か………………」

「復唱止めろォ!!!」


 アクラスは恥ずかしくてたまらず叫んだ。

あとがき


 我はこれまで敗北してきたが、実際は先手打って勝った場合もあるんだよなー。


 最初の前世で負けた事を懸念して、ナッセが生まれないようにしたり、赤子の内に殺したりもした。

 だが、結局ナッセが一足先に来世へ飛んでしまう。

 そしてこっちはどれだけ思い通りに世界をモノにしても、我が死んだ先にそいつのいる来世へ飛んでしまう。

 そう、ナッセを殺した分だけ、こっちも人生何度もやり直すハメになる。

 長寿命の分だけクッソ面倒だ。


 つまりナッセを殺す以外になんとかしないと勝ちはない。

 封印も考えたが、それは問題を先送りにするだけで根本的な解決にならない。

 何千年も何万年も封印しても、開封されてそいつ死んだら一気にリセットされるぞ。例え宇宙の終焉まで逝っても、全てやり直しだからな。

 だから先手すら取れないってわけ。


 ん……、あれ? 我、詰んでね??


 byガンマ皇帝(カラミティ・エンド・ガンマ・エンペラードラゴン)

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