表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/100

85話「真打ち登場! ナッセ復活!」

挿絵(By みてみん)


 ナッセは静かに目を開けた。自宅の天井が視界に入る。

 上半身を起こすと、側でリョーコが上半身を乗せて寝入っていた。


「すまん……、世話焼かせたな」


 リョーコの頭を撫でる。

 すると気づいたのか目を覚ましてきた。


「えっ!? 起きてた!? ナッセ、大丈夫なの!?」

「ゆっくり休めたおかげで、多少はな……」

「まだ寝てなくちゃ!」


 だがナッセは首を振る。


「まだ戦っている音が続いている。四天王がいないってのに、苦戦してるみたいだ」

「聞こえるの?」

「ああ。妖精王は耳がいいからな」


 足を下ろし、いつもの服に着替えていくナッセ。

 首にマフラーを巻き終えると引き締まった顔で「悪い。行く」と歩みだそうとすると、リョーコが背中から抱きついてくる。


「ダメ! これ以上は……」

「妖精王にはならない。ガンマ皇帝との決戦まで温存したいからな」

「そういう問題じゃないっての!」

「なんでだよ……」


 離してくれないリョーコが焦れったく思う。


「あんたねぇ! どうせサンライトセブンたちさえ生き残れれば、自分はどうなってもいいって考えてるでしょ! 自分を軽く考えすぎ!」


 涙ぐむリョーコに見透かされて、ナッセは気まずそうにする。


「あんただってサンライトセブンでしょ!? あんたが死んでもバッドエンドなのよ!」

「うっ……!」


 そういう視点があるとは思わず、ナッセは怯む。


「ねぇ……、帝国と決着つけるんでしょ?」

「ああ。ガンマ皇帝を倒して終わらせねぇと平和はこねぇ……」

「だったら約束してよ…………」


 泣きそうなリョーコ。


「決着つけたら……、一緒に広い世界へ冒険に旅立とうよ……」


 それは、今後もナッセが長く生きる事を前提にしている。

 もう幾ばくもない寿命なのは自分でも分かっていたが、どうしてもこの場で「ああ、分かった。そうしよう」とウソがつけない。

 どうしても苦し紛れでもウソをつきたくない。ナッセは震える。


「そこまで長く生きれるか……分からない……」

「だったら探そうよ。あなたが長く生きれる方法を!」

「オレが……?」


 リョーコは頷く。

 死んで欲しくないって目が訴えている。目は口ほどに物を言うのはこの事か。


「そうだな。二年ぐらいは持つと思うから、その間にな……」

「約束だよ!」

「ああ」


 思わずリョーコを抱きしめた。

 初めて、ナッセはこの後を生きたいと思えた。


 ガンマ皇帝を倒してバッドエンドを回避さえすれば、いつ死んでもいい。後悔はない。そう思っていた。

 だが、それは自分の命を軽く見ているからこそだ。

 ナッセ自身は良くても、リョーコたちからすればバッドエンドだろう。


「それと、はいこれ」


 リョーコが新しい杖と紙切れを渡す。受け取ると紙切れには魔法陣の説明書が記されていた。


「ノーヴェンが杖を復元してくれたよ。しかも開発した魔法陣をダウンロードしてあるから、負担なく大爆裂魔法を撃てるって。ただ妖精王の負担軽減はさすがにムリだったけど……」

「そっか、わかった。ありがたい」

「でも妖精王の時は杖を使わないでね」


 ナッセは笑んで、杖を軽く振る。


「サンキュー!」


 新たな決意を胸に、ナッセとリョーコは自宅を出て、戦場へと一直線に駆け出した。


「行くぞ!!」

「うん!」


 オレが諦めたはずの、新たな未来へ進む為に────……!



 一方で海坊主とモリッカとフクダリウスとコンドリオンが激しい打撃の応酬を繰り返す度に、余波で大気が弾けていく。

 ややモリッカ達が劣勢。ハァ、ハァと息を切らしつつ飛び回るモリッカと駆け回るフクダリウスとコンドリオン。


「タゴオオォォォォォ!!!」


 多少ダメージがあれど元気満々で暴れ回る海坊主。

 太い腕と脚が縦横無尽に振り回され、あちこちに破壊跡を刻んでいく。

 このままでは押し切られるのは明らかだった。


「……くっ! ここは……僕がコンセットと融合を!」ハァ……ハァ……!


 モリッカは血塗れに等しい満身創痍。

 フクダリウスもコンドリオンも同じ状態だが、それでも気力で踏ん張っている。

 すると刹那通り過ぎる閃光が視界に入った。


星幽剣(アスラール・セイバー)!! 流星進撃(メテオラン)!!」


 落雷がごとし、轟音を轟かす一瞬連撃が海坊主の全身を穿った。

 海坊主は「タゴォ!」と吐血して、仰向けに倒れていく。

 フクダリウス、コンドリオン、モリッカは、とある人を見て歓喜に満ちていった。


「ナッセ……!! 復活したのか!?」


 銀髪の少年。長いマフラーを掻き上げ、重力を無視して揺らめかせ、眼光が鋭く見据えてくる。


「……大爆裂魔法で一気に倒す! みんな頼む!」


 杖を握ったまま一歩一歩踏み出すナッセ。


「うん!」

「うむ! 頼んだぞナッセ殿」

「頼みます!」


 応えたモリッカ、フクダリウス、コンドリオンは頷き、決死の気力を漲らせた。

 ナッセは杖をかざすと魔法陣が展開されていく。

 その魔法陣の前で光子が収束され、徐々に周囲で余波が吹き荒れていった。

 そうはさせるか、とばかりに海坊主が起き上がってきた。


「タゴオオオォォォォォォォォ!!!」


 怒りの形相を剥き出しに、海坊主がいきり立って襲い掛かってくる。


「やっぱり脅威だと分かるんですねッ!!」

「モリッカ殿! コンドリオン王子! ワシらで食い止めるぞッ!!」

「分かりましたッ!!」

「はい!」


 モリッカとコンドリオンとフクダリウスは阻むように海坊主へ真正面と向かう。その激しい攻防の応酬が繰り広げられ、大地を数度震わせていく。

 そして一方でナッセは大爆裂魔法を放つべき、溜めている。


「今までと違う! すっげぇ楽だ! 重くのしかかる負担がない! 魔法陣が代わりに砲身になってくれてるからか……!?」


 今までのようなミシミシ身体が軋んでいくような負担が全くない。

 膨大な魔法力を集約させ、一点に凝縮させている。それだけで周囲は旋風で大渦を巻き、激しく大地が震え上がっている。


「あとはオレの魔法力を魔法陣に込めきって、撃つだけ!」


 ノーヴェンが作ってくれた大爆裂魔法専用の魔法陣が砲台になってくれている。

 だからナッセは自らの魔法力を装填するだけで済む。

 そんな様子に、ノーヴェンも快く笑む。


 後ろでリョーコは「がんばって!」と笑んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ