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82話「モリッカの異常な強さの秘密……?」

挿絵(By みてみん)


 未だナッセは静かに寝ている……。

 いつ起きてくるかな、とリョーコは儚げな顔で眺めていた。


「起きても、きっとムリして戦場へ行きそう……」


 容易に想像できる。

 妖精王なら戦争を終息させる事ができるだろう。だがそれは確実にナッセ自身の命を蝕む。

 ニメア戦で苦しそうな顔をしていたナッセを思い返して、リョーコは胸が締め付けられて、辛そうな顔をする。


「帝国四天王いないんだから、もう終戦したっていいでしょ……」


 このまま防衛戦が終わるまで、ずっと寝ていればいいのにと切に願う。



 フクダリウスとコンドリオンとモリッカは、意外と強すぎる海坊主と白熱した激戦を繰り広げていた。


「危ない! モリッカ!!」


 咄嗟にコンドリオンが叫ぶも、海坊主の振り下ろした巨大な高速拳がモリッカを叩き落とし、地面に埋めクレーターに凹んで周囲に余波が吹き荒れた。

 兵士たちは余波に煽られながら「モリッカァァァァ!?」と叫ぶ。


「ちっとは待ってくださいッ!!!」


 モリッカはすぐさま飛び上がって、そのまま海坊主の顎を痛烈なマッハ頭突き! 爆ぜる大気と共に、一瞬その巨体が浮いた!


「タゴァ……!」


 よろめく海坊主はたたらを踏む。


「ふんぬおおおおおおおおお!!!」


 上空よりフクダリウスが斧を振り下ろして、脳天にズガンッと轟音を鳴らす。


「タゴゴァァ……ッ!」


 片手で頭上を抑え、頭をブンブン振る。


「はあッ!! 獄炎灼熱球ヘルフィア・フレファーア!!!」


 更にモリッカは追い討ちと、掌から超巨大な火炎球を勢いよく撃つ。

 それは海坊主の上半身を呑み込み、灼熱の大爆発が爆ぜた。


「モリッカ、大丈夫か!?」

「フクダリウスさん、大丈夫ですよ! たまたま掠っただけです!」


 血だらだら顔面のモリッカは一息。

 上空で浮いているモリッカを見て、兵士達は唖然とした。


「掠っただけ……?」


 オウガは「いやいや! どう見ても直撃即死級だろっ!?」と顔と手をブンブン振りながら突っ立っていた。


「ま、マトモに戦ってるど! 普通なら海坊主の無双で国滅ぶんだど!」

「エビエビ……!? あれがサンライトセブンえびか!?」


 狼狽えるエビエ将軍とヤドカ将軍。

 オウガは「そうだ! これが我々サンライトセブンだぜっ!」と自慢げに突っ立っていた。えっへん!


 既に日は暮れ、夜真っ只中。

 モリッカが上空から、そして地上からフクダリウスとコンドリオンが海坊主へと飛び掛かるぞ。


「はあああああああッ!!!」

「ぬおおおおおおおッ!!!」

「ぱおおおおおおおッ!!!」


 咆哮とともにコンドリオンの象丸ごと変態した拳が、モリッカの魔法を纏った拳が、フクダリウスの剛力旋風が如しの斧が同時に唸る!!

 三方向から巨大な軌跡が斬り結ぶ!!

 この強烈な一撃でズンッと大気を響かせ、大地を震わせ、余波が広がったぞ!


「タゴアアアアァァァ!!!」


 海坊主の胸元から鮮血が夥しく噴き上げ、後方へ仰け反っていく。


「おおお、効いた!」

「やったぜ!!」

「流石はサンライトセブン!! 流石はトップスリー!!」


 兵士達は歓喜した。


「……ってかトップスリーって?」

「こまけぇこたぁいいんだよ!!」

「えっ!? そうなの??」



 突っ立っているオウガは一息をついた。


「……気に入らんが、糞蛸(クソダコ)はなんとかなりそうだな」


 ドラゴリラはアツアツの弁当塩ラーメンをズズ〜っと啜っていた。

 オウガは突っ立ったまま熱々の極辛カレー弁当で舌をバーニングにしていったぞ。


「デカブツはあの人外レベルの三人が抑えてくれてマスから大丈夫デース。それより……」


 ノーヴェンは食い終えた弁当を下ろす。

 そして三人は見合わせたぞ。


「意外とモリッカ頑丈やね~」

「なんで糞小僧(クソキッド)が人外レベルに強いんだ!? 糞がぁ!」

「序盤は普通の魔法使いみたいなもんでしたネ……。それが今ではフクダリウスと肩を並べるほどデース」

糞眼鏡(クソメガネ)! こんなんありえないだろっ!」

「事実でショウ?」


 しばしの沈黙。


「弱いはずの魔法使いタイプが肉弾戦強いのは異常やん?」


 戸惑うドラゴリラにノーヴェンは頷く。

 生身で海坊主の攻撃を受けて反撃するなんてのは、普通の人間には無理。

 フクダリウスやコンドリオンは人間離れした恵体を持ってるからこそ耐え切れる。

 ナッセは妖精王なので、元から人間じゃないから分かる。しかしモリッカは普通の人間だ。

 だが、実際モリッカは強い!

 コンセットと融合してから、素のステータスがだんだん強くなってる気がした。


「まさか……、強敵と戦うたびに戦闘力が上がっているのか……?」


 オウガは汗を垂らす。

 今のモリッカなら、コンセットと融合すればニカ大将軍にも勝てるかもしれない。

 羨ましくてたまらず、嫉妬で身が震える。


「イエス! オウガさん()()理解したようですネ……」

「うるせぇっ! 糞眼鏡(クソメガネ)! どこぞの戦闘民族じゃあるまいしっ!」

「確かにそうやね……」


 ノーヴェンはメガネを煌めかす。


「それより、海坊主を召喚した敵の将軍を討ち取りマース!」

「よし! 俺様とドラゴリラでやってやるぜっ!」

「せやぁ!」

「ソーリー……。二人では勝てまセーン」


 ノーヴェンに首を振られ、オウガとドラゴリラはガクッとコケる。


「じゃあ誰がやるんだよっ! 糞がっ!」

「とある男をコールしましター」


 ザッと馳せ参じた男に、オウガもドラゴリラも目を丸くしていく。

 生き残ったコンドリオンと同様のドンイ人。そしてナッセとも引き分けた事がある猛者。


「あァ……。ずいぶん待たせたなァ……」


 なんとアクトがニッと自信満々に笑んだ。

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