75話「絶対的な不死身!? 鳳凰の特性……!」
激怒して妖精王となったナッセはドラゴンと大差ない攻撃力で、鳥人間のニメアをボコボコに追い詰めていく。
それに伴い周囲に大気の振動や、地響きが、打撃のたびに響いている。
「攻撃を当てるたびに敵の戦意とか削るんでしたね? これなら……」
コンドリオンは勝ちを確信している。
しかしリョーコは察していた。今は激怒しているのからか敵の戦意を削る効果は発揮されていない。
ただ物理的に痛めつけてるだけだと……。
「おおおおッ!!」
ナッセが強烈な腹パンを叩き込み、ニメアは「ぎはっ」と吐血。
「更にもう一発だっ!!」
「ぎはあっ!」
続けて腹パンをかまし、二メアは再び吐血。
「更にもう一発追加だああっ!!」
「ぎばばばばはあっ!!」
三度目の腹パンが決まり、骨折音とともに二メアは盛大な吐血。
ヨネ王様も「よし! 決まったぞ!」と歓喜する。
「でも……心配だわ」
昨夜、ナッセが発作の激痛で苦悶していたのを思い返し、リョーコは不安が募る。
「おおおおおおおッ!!!」
ナッセは舞っている花吹雪で巨大な魔法陣を三つ上空に生成する。
バチバチッとナッセの怒りを表すかのようなスパークが上空を迸っていく。
「魔導円陣・三魔境扉式! 氷雪猛雹礫!! 烈風爆撃破!! 天空轟雷閃!!」
なんと天災級の猛吹雪、大竜巻、大落雷がニメアへ炸裂した。
ドラゴンに匹敵する妖精王の魔力で放つ最強魔法一つだけでも大国を消し飛ばすほどの威力。
その三連発を受けて、ニメアもたまらず「ぎはああああッ!!」と白目で絶叫。羽毛が四散し、血飛沫が舞う。
「二メア──ッ!! これで終わりだあああああッ!!」
ズタボロに引き裂かれた二メアへ、全身全霊フォースを纏ったナッセは渾身のフックで強烈に殴る。
二メアは吹っ飛んで次々と壁を突き抜けていって、向こうで噴火のように煙幕が噴き上がる。
「ハアッハアッハアッハアッハアッ……」
ナッセは前屈みで掠れた目で激しく息を切らす。
そんな辛そうな彼にリョーコは不安が強まっていく。恐らく体が鉛のように重くなってるかもしれない。
「あははははははははははははははははははっ!!」
なんと向こうから灼熱が噴き上がって、燃え盛る鳳凰が飛び上がった。
ドラゴンと遜色のない巨躯、完全に巨大なフェニックスだ。
「私は確かに皇帝に処刑されたんだよぉ? でもね、鳳凰は不死身の特性を持ってんのよぉ?」
「ニメアーッ!!」
再びナッセが飛びかかるが、ニメアは万全な状態で素早くかわす。
「だーかーらー、いくらボコボコにされても私は何度でも蘇るから平気ー。つまり絶対的な不死身という事ね……」
「くっ!」
「逆にあなたは虫の息じゃない? 哀れ~」
ニメアは巨大な尾っぽをムチのように振るって、嵐を巻き起こしながらナッセを吹き飛ばす。
その凄まじい衝撃波で周囲の建物が破片を散らして崩れていく。
「うわああああああッ!!」
今度はナッセが吹っ飛んで、次々と壁を突き抜けて無様に地面をバウンドして滑っていく。
地に伏して震えながら立ち上がろうとするナッセ。
それを「あっは! 無様ねぇ! あははははは!!」と嘲るニメア。
あの時の悪夢を連想してコンドリオンは自問自答するように目を瞑る。
「ぬううんっ!! フクダリウスハリケーンッ!!」
五メートルの巨躯に膨らましたフクダリウスが斧を振り回して竜巻の奔流を放つ。
それは被弾し、尋常ならざる衝撃波が吹き荒れたが、鳳凰は平然としていた。
「なん………………だと…………!?」
「妖精王やドラゴンならともかく、下等生物ごときが傷一つ付けられると思って?」
ニメアはほくそ笑んで、両翼を羽ばたかせて烈風を巻き起こす。それは竜巻となってフクダリウスをきりきり舞いに上昇させる。
続けて巨大な尾っぽを振るって竜巻ごと粉砕。
「ぐわあああああああああっ!!」
フクダリウスもナッセ同様に吹き飛ばされて、地面をバウンドして転がっていく。
ニメアは「フッ!」と鼻で笑う。
「ニメアアアーッ!!」
息も絶え絶えに妖精王ナッセはニメアへ向かうが、ズキンと全身を走る激痛で勢いが頓挫する。無理しすぎた反動で体は限界を迎えていた。
力なく落下していくナッセを、ニメアは鳥の足で鷲掴み。
「やっぱ限界ギリギリだと思ったぁ。そうなるように挑発したんだけどね。あははははは!」
ギリギリ締め付けてられ、ナッセは「ぐあああ……」と苦悶する。
しかし、全身の力を振り絞って「光輪爆震天!!」と全身から光の波動を放って、ニメアを爆発に巻き込んだ。
たまらずニメアは「ぎあっ!」と吹き飛ばされる。
ナッセは妖精王から人間へと戻って落下していく。
リョーコは彼を抱きかかえて尻餅をつく。ぐったりするナッセが辛うじて生きてて安堵する。
逆に、再び全快したニメアが舞い戻ってくる。どう倒せばいいんだ……。
「ドラガオンとかいうワケのわからない存在もいなーい! 妖精王ナッセもげんかーい! 最強の闘将フクダリウスもざーこ! もう詰んでるよね!」
完全勝利の愉悦に浸ってか、ニメアは「あはははははは!!」と空に向かって大笑いし続けた。
隠れていたオウガとドラゴリラは震えていた。
あのフクダリウスもナッセもやられて、どないしよ……とビビりまくり。
「もういっか。ドンイ王国みたいにサンライト王国を炎上させようかしら」
女帝になる計画など頭にない。
短絡的で快楽主義。今が楽しければなんだっていい。そんな支離滅裂な言動は、ガンマ皇帝にやられてから悪化しているようだ。
「そうはさせませんよ……!」
そんなニメアへ立ち向かおうとする男がザッと足を踏み鳴らす。
なんと神妙なコンドリオンだった。
「あなただけは僕が倒します! 絶対に……!」
あとがき
ヤマミさえいれば、ナッセとのツープラトン奥義『無限なる回転』で倒せたかもしれないのに~!
あれミキサーのように延々と削り散らすから鳳凰だって倒せる!
あ、こっちの話ねw




