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72話「四天王打倒完了! そして表彰式!」

挿絵(By みてみん)


 ついに最後の四天王であるニカ大将軍をも打ち倒せた。


「もう! 妖精王が「おおおッ」とか少年漫画風に言っちゃダメですよ。少女漫画風に「えーいッ」で言わなきゃ!」

「……知らねぇって!」


 ほおを膨らまして抗議するモリッカにナッセはジト目で呆れる。

 コンドリオンを抱きしめているフクダリウスはふと、ナッセに顔を向ける。


「…………そういえばナッセは妖精王になるのは嫌だったんじゃないのか?」


 咄嗟にすんなり妖精王に変身して発動したと言うのも不思議な話だ。あの変身はナッセ自身恥ずかしすぎて躊躇うはずなのだ。

 するとノーヴェンが代わりに解説した。


「ええ。「妖精王になって無効化を!」と言えばナッセは羞恥に邪魔されて発動が遅れてたでショウ。だから優先できるように「死なすな」って入れておきましタ」

「そうか。ナッセにとって我々が殺される運命は絶対避けたいところ。そう言われれば優先順位は変わる。運命を変えれるのなら多少の恥も何でもない、という事か……」

「ええ……」


 流石はサンライトセブン一の頭脳であるノーヴェンの見事な采配。

 ナッセの力もそうだが、ニカ大将軍の戦いにノーヴェンがいたのも大きな勝因とも言えよう。犠牲を出すことなく勝利できたのだから……。




 ニカ大将軍を倒してから三日後、サンライトセブンは謁見の間に集まっていた。

 なんかオウガがニヤニヤしてて気持ち悪い。


「みなのもの、これより表彰式を行う」

「「「「おおおおっ!!!」」」


 ヨネ王の宣言に、周囲の兵士は盛り上がる。


「さて、ニカ大将軍との交戦は凄まじいものと聞いた」


 予めヨネ王は、ニカ大将軍撃破の経緯はオウガより報告は受けていた。


「オウガ殿! 来なさい」

「はい」


 前に来たオウガが跪いて、ヨネ王は満面の笑顔で拍手していた。


「まさか……あのニカ大将軍を、オウガ殿()()で仕留めるとは……!! 誠にあっぱれじゃ!」


 なぜか兵士たちは「えぇ……」と困惑しながらも拍手する。

 やはりオウガなので、都合よく戦果を歪曲しているのは当然だった。相変わらず性根が腐ってる。


「はい。日々鍛錬してきた努力が実を結んだだけです。それに自分一人で戦ったわけではありません! ドラゴリラのおかげでもあります!」

「流石はオウガ殿。相変わらず謙虚で努力家だの。その功績に免じて重鎮隊長から武器庫管理職へ昇格してもらう。更に()()()も与えよう」

「はい! ありがたき幸せです!」


 オウガは嬉しそうに賞状を受け取り、深々と頭を下げた。周囲の幹部や家臣達が拍手する。

 兵士たちはなぜか満面の笑顔でバンザーイしてる。


 ……嫌われてたのかな?


「ドラゴリラ殿」

「へい!」

「君の活躍にはいつも感心させられておる。ニカ大将軍を追い詰めた功績により秉国兵士長から物資管理職へ昇格じゃ」

「あ、ありがてぇんや!」


 感涙するドラゴリラは目をウルウルさせた。


「やったな!」

「おかげで収入は倍アップや~!」


 笑うオウガに背中をポンと叩かれる。二人の清々しい笑顔の見せ合いで贔屓さを語っていた。

 とはいえ、ニカ大将軍との戦いで二人はほぼ役に立たなかったけどな。ドラガオンの活躍でギリ入れていいか分からんけど。

 しかしみんな無事に生きているのは御の字だ。

 一人では越えられなかった。

 この今日が存在しているのも彼らと歩んでこそ生まれたものなのだろうと確信した。


 後は全員で最終決戦を乗り越えてもらわないとな……。


 前世じゃオレだけになってたし…………。


「コンドリオン殿」

「はい!」


 そして、ふとナッセはジト目でそれらを眺めるようになる。


「どうしたんですか?」

「……しかし都合良く元通りになってるのが納得いかない。つーかドラガオンから戻れるなんて聞いてないぞ」

「うん。そうですね。竜さんが言ってくれた融合解除もう要らなくなりましたね……」

「思わせぶりな事言わせておいて、次章でこれだからな」


 ふうとため息をつく。


「フクダリウス殿!」

「はっ!」


 表彰式は続いた。


 後のパーティーにて、並べられたテーブルに豪勢な料理が並ぶ。グラスを重ね合って乾杯して和気藹々する人々。

 騒々しい最中でナッセは静かにオレンジジュースをくいっと口に注ぐ。


「結局ナッセさん以外のサンライトセブンは受賞しましたね。オウガさんとドラゴリラさんは出世しました」

「…………だな」

「気にすることないデス……」


 ノーヴェンがナッセの肩に手を置く。


「いや、元々オウガさんやドラゴリラさんが頑張ってたから必然だ。それにオレは入ったばかりだし全然活躍してないから実績もない。唐突に出世しても、長年勤めてる兵士達がどう思うか」

「いやいや充分活躍してたじゃないですかっ!」


 突っ込むモリッカの両肩に手を置き、ナッセは首を振る。


「鬼門であるニカ大将軍さえ倒せればいいんだ……。命に勝る名誉や金などない」


 ……それに未来がバッドエンドへ向かうなら、出世しても意味ない。

 まぁ出世や名誉には、そもそも興味がない。



 あと、付け加えておくとオウガが手柄を横取りしたおかげで、賠償額を個人で背負ってくれた。

 王国の外側だったんで一般人や冒険者などに死傷者はあまり出なかったが、それでも賠償額は安くない。

 城壁の修復、クレーターを埋める工事、植林、道路などの設備修復、畑などの損害賠償、ナッセたちの治療費などなど……。

 普通なら国の税金とかで賄うのだが、ヨネ王はオウガの浅ましさを見抜いていたので押し付けたのだった。


 この事を本人(オウガ)が知るのは、幾度の防衛戦が終わってから数日後の話であった……。



「……自業自得だろ」

「だねー」


 ただ、報奨金は貰っているので、ナッセとリョーコは焼肉店で贅沢したぜ。

 肉うめぇ。

あとがき


フクダリウス「念のためを言っておくと、ワシらも報告の義務があるからな」

ノーヴェン「イエス!」

コンドリオン「ヨネ王様のお願いで、みんなオウガとドラゴリラには内緒で報告していました」

モリッカ「オウガさんが『報告は俺様に任しておけ』ってたから、胡散臭かったんですね」

ヨネ王「うむ」

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