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63話「恐るべき妖精王の力!」

挿絵(By みてみん)


 龍人は妖精王化したナッセを見てフム、と頷く。


「そういえば魔女クッキー様が「男の妖精王過疎(かそ)ってるから、天界で応募してたんだけど全然来ないから、下界でドサクサに紛れて妖精の種(フェアリー・シード)植えて強引に誕生させよう」とかテヘペロで言ってたが、やはりか……」

「クッキー! アンタのせいかァァァァァァ!!!」


 真相を知ったナッセは涙目で叫んだ。



 ズズズズズズズ……!

 軋むような音で竜さんこと巨竜へ見やると、口へ莫大な光の束が放射状で吸い込まれていく。

 それにリョーコは怯え始める。


「ひっ! また来るわよっ!?」

「手加減などしない! 消えろ! 役満(やくまん)龍参牌(りゅうさんぱい)!!!!」


 莫大なエネルギーが圧縮された巨大な光の牌が撃ち出された。

 地面を穿ちながらすっ飛ぶ。飛沫が軌道上に噴き上げられる。

 まさにドラゴンの代表的技というべきブレスの極限版で、凝縮された光の牌は甚大な破壊をもたらす。


「うわあああああ!! こ、この辺りが莫大に消し飛びますよ!」


 コンセットは「死んだー!」「南無阿弥陀!!」「嫌いなグリンピース食べてもいいから死にたくなーい」と絶望に慌てていく。


「……クッ、まだまだメガネ開発したかったのデス……」

「コンドリオン王子……コンドリオン王子……」


 だがナッセは冷静に掌をかざす。爆発の瞬間まばゆい閃光が広がる!

 容赦なく、大地を深々と穿つ灼熱の爆発球が膨らんでいって破壊を撒き散らす。


「…………目覚めたばかりで悪いが即退場ってトコだ!」


 クックックと竜さんは含み笑いする。


 気づけば花弁がたくさん舞っていた。莫大な花吹雪が広々と渦を巻くように舞う。

 なんと爆発が花弁となって分解されているのではないか!

 徐々に破壊は再生へ、花吹雪と共に破壊跡は花畑満ちる楽園と化した。


「デコレーション・フィールド! 無効化!!」


 威風堂々とナッセは掌をかざしたまま仁王立ち。

 リョーコ、モリッカ、ノーヴェンは呆気に取られる。無傷だ。

 竜さんは震えはじめた。


「ま、まさに……妖精王!! この龍参牌(りゅうさんぱい)ですら浄化しきるとは…………」

「す……すごい!」


 モリッカは感激してうとれていく。

 花畑が咲き乱れナッセの立つ雄々しい姿を目に焼き付けている。


「まるで少年版の魔法少女です。決めポーズとセリフがあれば完璧ですね。よし、後で考えてあげましょう!」

「ナッセは絶対嫌がりますネ……」


 ボソッとノーヴェンは突っ込む。


「ちょっと! なんで今まで変身しなかったのよ!?」

「かなり負担がかかって、辛いからな」


 リョーコの抗議にナッセは渋る。


「でも凄いですよ!! できれば僕も魔法少女みたいになりたいなぁ!」

「魔法少女じゃねぇって…………」


 むしろモリッカの方がこの能力に合ってるんじゃないかと思っていた。

 確かにこんなのは魔法少女みたいで恥ずかしい。ものっそい恥ずかしい。

 負担が大きい以外に変身したくない最大の理由がこれだ。


 でも! これでないとサンライト王国はおろか未来を救えない!


「今はいいんだよ! オレはそれでいい!!」

「ナッセさん!」


 ヤケになっているナッセだが、モリッカは明るい笑顔を見せていた。


「だがオレは男だ! 男だぁぁぁ!!」


 リョーコとノーヴェンはその一言が絶叫に近いように聞こえた。


「見た目、中性的であたしでさえ嫉妬するほど綺麗だもんねー……」

「まぁ見た目も設定も完璧に魔法少女のキャラっぽいですシネ……。言い換えると魔法少年ってとこデスカ……? 少女向け作品に、男なのに中性的な顔で髪がロングヘアーになってるキャラも割と多いデス。むしろモリッカが自身に望んでそうな設定ですネ」

「そうなんですよねー」


 なんかモリッカが同意してるけど、ナッセとしてはダルい気分だ。

 リョーコは「がんばって」と一声。



 ドラガオンは腕を組んで、しばらく観戦していた。


「ナッセがあれほどの力を持ってるんやですな。ほな見せてもろうてですぜ」


 ナッセは上空へ掌をかざす。それに花吹雪が収束されて、白き巨大な火炎球が膨らんでくる。


「行くぞ! 灼熱烈火球(ブレズ・ファーア)!!」


 腕を振り下ろすと、火炎球が急降下して竜さんへ直撃。花吹雪を散らす火柱が燃え盛った。

 不思議な現象で誰もが目を見張る。

 そして白き火炎が収まっていって、竜さんは無傷で現れた。


「な、なんだ!? 熱くも痒くもない!? フッ、脅かしおって! ドラガオンよりずっと弱いじゃないか!」

「更にもう一発! 灼熱烈火球(ブレズ・ファーア)!!!」

「ムダな事を……!」


 竜さんは甘んじて火炎球を浴びて火柱に包まれた。獰猛に燃え盛る白き炎はダメージすら受けない弱いものと思っていた。


「……なんだか反撃するのも面倒だな。萎えち……」ハッ!!


 反射的に気付いた。

 弱いのではない。攻撃力が“無い”んだ!

 そして代わりに己の戦意が削られていたんだ!!


 さっきの攻撃力が精神攻撃……、いや浄化に変換されているんだ。

 つまり攻撃を受ければ受けるほど戦意殺意などの邪念が削られていく。

 このままだと無気力になってしまう!


「なんて事だ……。ここまでとは聞いていないぞ!!」


 高位の聖職者でさえ、ここまでの浄化力はない!

 攻撃そのものが浄化だとかふざけるな!!

 アンデット、悪魔、そして攻撃性の高い魔獣にとっても天敵だッ!!!


「ナッセェェェェェ!!! 貴様ァァァァァッ!!!!」


 竜さんは咆吼した。

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