59話「三騎衆撃破! そして最後の戦い!」
なんとモリッカが驚くべき時空間魔法で分身のコンセットを自分に統合して、超絶パワーアップしてしまった。
終始、三騎衆最強の槍さんを完封してカウンターで沈めてしまう。
しかしモリッカは辛そうな顔を浮かべる。
「う……ぐっ!」
モリッカの体から四体のコンセットがポーンと飛び出してしまう。
ノーヴェンは慌てて、ゆっくり倒れていくモリッカを受け止めた。フクダリウスも安堵する。
「やはり負担がかかったようだな……」
「ええ。使い始めたばかりですからね。当分は動けません」
「ナッセみたいな真似するな。心がもたんわい」
フクダリウスは笑んでモリッカの頭をグシャグシャ撫でる。
四体のコンセットも「はぁはぁ……」とへたばっていて、次々と煙にかき消えていく。
「さて、これで三騎衆は全員倒しましター」
息絶えているカバちゃん、槍さんが白目で横たわっている。
すると蛇くんが目を覚ましていたか、震えながら立ち上がろうとしていた。
「む……? でもそのダメージでは戦えまセーン」
「だが、後始末はやらせてもらうねぇ……」
蛇くんはニヤリと笑む。口から蛇を一匹出すと、自ら首を噛ませた。
見開いて「うぐっ!」と呻き、最後に笑みながら沈んでいく。
「な……、なぜ……? 自死を??」
「クへへ……捕虜となって尋問されたくないからねぇ……」
「いや、特に何もしないぞ」
「必要ありまセーン」
フクダリウスとノーヴェンは首を振る。蛇くんは予想しなかった反応に、素っ頓狂な顔を見せた。
「えっ!? ちょっ……待って待って!? ウソ!? ハッタリでしょ……??」
「竜さんの博打仲間なんだろう? 帝国軍というわけでもなかろう。何を吐かせればいいのだ?」
「あ、思ってみれば……! し、しまった! 早まった…………!! ぐふっ」
蛇くん、早まった真似して逝ってしまった。
ノーヴェンは「安らかに成仏してくだサーイ」と冥福を祈った。
「そういえば槍さんは、辛うじて生きているが……」
「彼女は手当しておきまショウ」
近くの温泉街へモリッカと槍さんを運んでいって、治療してもらう事になった。
エルフたちは助けられた事に感謝して、全面的に協力してくれるそうでありがたい。
すると龍人がフッと現れてきた。
「まさか、あの三騎衆を倒すとはな……。やはり龍脈へ連れて行った甲斐があったか」
「うむ。ありがたい」
「イエス」
フクダリウスとノーヴェンに快い笑みを向けた後、ベッドで寝かされている槍さんを見やる。
「全く、ランサーンも困ったものよな」
「知り合いだったのか……?」
「何を隠そう、我の娘だ」
しばしの沈黙。
「「なにいいいっ!!?」」
驚くフクダリウスとノーヴェン。
すると槍さんが「う……」と目を覚ます。龍人が見下ろしている事に気づいて「あ……パパ!?」と青ざめる。
「修行が嫌になって家出したが、外の世界はどうだったか?」
「う……散々でした…………」
「ほらみろ」
槍さんは涙を流す。
見た目ゆえに、色んな国の人間から異質を見る目を浴び、強さを振るえば恐れおののかれる。
それに竜さん含めて欲にまみれた人間だらけで、思っていた想像より地獄だった事を思い知らされていた。
「分かった。真面目に修行する事にする……。外の世界は懲り懲りだ……」
「いや……、ランサーンすまぬな。厳しい態度ばかりして、だが今後改めるつもりだ」
「パパぁ……」
謝ってくる龍人に、ランサーンは涙ぐんで抱きついた。
もうこの件は丸く収まったな、とフクダリウスとノーヴェンは安堵の笑みをもたらす。
モリッカも密かに目を覚ましていたが、空気を読んで黙っていた。
「後はコンドリオンとバカどもか……」
「心配いらん、ナッセが向かっていった。見に行くか?」
龍人の言葉に一同は安心した。
龍脈の森より離れた荒野一帯で、竜さんに対峙する龍乃車椅子に乗ったドラゴリラを押しているオウガと、コンドリオンの三人。
間を風が吹き抜ける。
勝手な振る舞いに呆れていたが、竜さんは気を取り直してニヤリと笑む。
「わざわざザコ二人が、この俺に挑むとはな……」
竜さんはメキメキと巨大な竜に変形して、威圧が膨らんでいく。
しかしオウガとドラゴリラは不敵に笑んだままだ。
「あの、オウガさん、ドラゴリラさん……。なんで僕も一緒なんですか?」
「俺様たち二人でも十分かもしれんが、念の為な……」
「頼りにしてるんや」
「ええ……無茶な…………」
仕方ないと思い、コンドリオンは巨象へと大きくなっていく。
オウガはドラゴリラが座っている龍乃車椅子の手押しハンドルにあるスイッチを押し、徐々に地鳴りを大きくしていく。
瞬時に大地を爆発させて、超加速スタートダッシュ。
「くらえーっ!! 龍乃車椅子で介護ひき逃げアターック!!」
火の玉となった龍乃車椅子で、竜さんへ体当りして大爆発を巻き起こした。
ものすごい衝撃で大地が震え、爆煙が広がっていく。
しかし巨竜こと竜さんは平然と見下ろし、ニヤリと笑んでいく。
「あれ? ……うそん?」
オウガとドラゴリラはアホ面で鼻水垂らして青ざめながら震えていく。
「さて、コロコロす?」




