57話「ノーヴェン 対 蛇くん!!」
フクダリウスとカバちゃんが地を揺るがす激戦をしている最中、ノーヴェンは無数のメガネを自在に操ってビームの弾幕を連射していた。
そしてヘンビックこと蛇くんは滝のように大量の蛇を召喚し続けていた。
それは蛇の大群とメガネビームの弾幕の押し合いの様相を表していた。
「クヘヘヘヘッ!! 器用ですねぇ! しかし、それはこちらも同じ事!」
なんと左右の端っこのせいで撃ち漏らした蛇は通り過ぎて、温泉街へ這い寄っていく。
ノーヴェンは慌てず騒がず「そうきましたカ……」と憮然する。
蛇くんは、生き物である蛇を操作して温泉街を襲って動揺させる狙いだったが、そんな揺さぶりなど通用しないと察した。
「そのまま温泉街が毒蛇で侵されてもいいんですねぇ? 多少の犠牲を払ってでも目的を成す、そういう知的なのが好きだねぇ! クへへへッ!」
「ユーはひとつ勘違いしてマース……」
「へぇ? なにを??」
すると蛇くんは背中に爆撃を受けて見開く。
なんと同様に回り込んでいたメガネが後ろから狙い撃ちしてきたのだ。
「ミーが、そのまま正面から撃ち合いするとユーが思ってた事デース」
そのまま無防備に背中を打たれ続けて苦悶する蛇くんは、温泉街を襲わせようとした蛇を戻して防御に向かせた。
無事、背中にも大量の蛇が阻んでこれ以上のダメージを追わなかった。
ホッとすると同時に怒りがこみ上げる。
「よくもやりやがりましたねぇ……! 全力でてめぇを潰してから、温泉街のエルフどもを緩慢性の毒で苦しませるのを眺めて溜飲を下げましょうかねぇ!」
「フッ!」
「何がおかしいねぇ!? ……ハッ!」
今度は、丸見えの頭上からメガネビームが降り注いでくるのに気づいた。
慌てた蛇くんは大きな蛇を無数吐いて、上空へ伸ばして迎撃。あえなく爆撃は大蛇を散らすだけに留まった。
全方位から弾幕を浴びようが、蛇くんは万全の防御布陣で余裕の笑みを取り戻した。
「元々、変幻自在に蛇を操作して戦うのが基本! 防御に回したら、いかなる攻撃も弾いてしまいますねぇ! これこそ蜷局巻きバリアねぇ!」
「そうですカ……」
「そちらこそ無限に弾幕を撃てるんですかなぇ? こちらは操作しているのでムダな消耗はあんまりないんですよねぇ」
「大丈夫デース。もう必要ありまセンからネ」
「え?」
すると無数のメガネが合体していって、材質が融合していって、一つの巨大な虫眼鏡がノーヴェンの眼前に降り立った。
蛇くんは恐れが募って見開いていく。ズズ……!
最初から最後まで冷静なノーヴェンはクイッとメガネを指で押す。
「ひとつに集まってくれてサンキューデス! ファイナルメガネ・フィナーレ!!」
ノーヴェンが優雅に指さすと、巨大な虫眼鏡から極太ビームが轟音を伴って発砲される。
地面を裂き、眩い軌跡が真っ直ぐ蛇くんを目指す。最初から最後まで看破された蛇くんは恐怖に覆われたまま「ば……ばかな……」と絶句する。
大群の蛇もろとも光線が飲み込み、大爆発が広がっていった。
「ギヘハ……」
白目で仰向けに倒れた蛇くん。
生き残ってた蛇も、残ってたメガネが巡回して殲滅していった。ちなみにというと温泉街でもメガネがひっそり潜ませた盤石の布陣を築いてて、とっくに勝負は決まっていた。
「そっちは終わったか……?」
「イエス……。もうフィナーレデス。ミスターフクダリウス」
フクダリウスも既にカバちゃんを倒してて、こちらへ歩む。
そしてモリッカの戦況を見やる。
「グッ! ……ハァ……ハァッ……!!」
血まみれでよろめくモリッカ。既に二体横たわっているコンセットがボンとかき消えていく。
そして「ゴハッ」と吐血する。
一方で槍さんは無傷で見据えているのみ。
「いかん!」
「ヘルプ出しマース!」
慌てて加勢しようとすると、モリッカが腕を横に伸ばす。
「いえ! 加勢は興味ありません! この男は、僕が絶対に倒しますので!」
息を切らしながらも毅然とモリッカは加勢を許さない。
あくまで一人で槍さんを倒そうというのだ。そんな心情を汲み取ってか、フクダリウスとノーヴェンは足を止めた。
「ボロボロのようだが……」
「オー……」
しかし半顔で振り向いたモリッカは笑い「準備運動してましたから」と余裕ぶった。
それに槍さんはピクッと癇に触った。
「いつでも殺せる。敢えて無駄な悪あがきをさせていたが、そのつもりなら容赦はいらんな?」
「やっと本気出すんですか? 萎えてましたから、期待させてくださいよ」
呆れるモリッカに、槍さんは「強がりをっ!」と俊敏に駆け出した。
目にも留まらない動きで槍を高速で繰り出す。複数の突きが刹那の煌きとしか見せない速度でモリッカを蜂の巣にせんする。
しかしモリッカは器用に身を翻してことごとくかわしていく。
「すみません。それ見切ってますので、もう興味ありません」
「なんだと!?」
「煉獄昇焔壁!!」「煉獄昇焔壁!!」
なんとどこからか潜んでいたコンセットが左右から大きな火炎の壁を放ち、槍さんを押し潰す。
燃え盛る火炎の柱が立ち上り、間一髪で抜け出した槍さんは溶けかけたカブトが脱げた。
続いてモリッカは「氷牙連弾」と氷の矢の嵐を放つ。
「こしゃくな!」
顔があらわになった龍人の女騎士は、素早い動きでことごとく避けた。
が、実は誘い込まれていた。
四体のコンセットで包囲網を敷いていて「最後です!」とモリッカと一緒に魔法を撃つ。
「しまッ……!」
「五連奏・氷雪猛雹礫!!」
囲んで放つ氷雪系最強魔法の吹雪が相手では素早い回避も意味なく、槍さんは「うわあああ!」と呑まれた。
一瞬にして槍さんを氷塊に閉じ込めて沈黙させてしまう。
モリッカは「ふう」と胸を撫で下ろす。
「甘く見ていたのは知ってましたからね……。それに実は槍の攻撃はコンセットのおかげで見極められましたし」
複数のコンセットの分だけ情報を共有できるので、一瞬にして分析してしまったのだ。
あとがき
相手が悪かっただけで、蛇くんは相当な実力者デースw
あとノーヴェンのフィナーレ技は、とあるアニメの技名を意識してマースw
最後に槍さん、この話に含められたまま終わるのカーw(扱いひどw)




