55話「恐るべき三騎衆の実力!」
温泉街を侵攻しようとする竜さんと首領邪羅三騎衆の足を止めて、サンライトセブンが立ちはだかった。
竜さんは背中の翼を引っ込めて着地する。
「今度は博打仲間を引き連れてきたぞ。これで貴様らに万が一の勝ち目はない。ん、銀髪の小僧は逃げたか……?」
「フッ、しょせん糞餓鬼など臆病者。場違いは要ら……痛ぁッ!!」
オウガをゲンコツしたフクダリウスは「今は大事な用だ」と代わりに告げる。
「まぁいい。キサマらは俺が潰そう。三騎衆……先へ行って温泉街を潰してこい」
「「「ははっ!」」」
竜さんの指示通り、サンライトセブンを無視して三騎衆は通り過ぎようとする。
しかしフクダリウスは斧を振るって陸亀を縦に割り、ノーヴェンの胸からのメガネ電撃ビームが鳥恐竜を撃墜し、モリッカも爆発弾で鳥恐竜を爆散させた。
三人は気張って「通させると思うかッ!!」と吠えた。
乗り物を失ったカバちゃん、蛇くん、槍さんは「ムウッ!」と身構える。
竜さんは怪訝に眉をひそめて、以前と違う事を察した。
「ごははははははっ!! 糞蜥蜴よ、真打ち登場! 勝負だっ!」
「今度はこの無敵とも言える“宝具”があるんやから、負けはせへんでー!」
ドラゴリラを乗せた龍乃車椅子を押していたオウガは、カードを取り出す。
なんと、それはノーヴェンが持っていた時空間カードだ。
ドラゴリラは腕を伸ばしてコンドリオンを引き込む。
「今度こそ、俺様達が勝ってやるぜっ!! ごはははっ!!」
「ノー!! ウェイトウェイト!! ミーのカードを勝手に使っちゃダメデース!!」
必死にノーヴェンが呼び止めるも遅く、掲げられたカードは輝き出す。
大きな立方体が竜さん、オウガとドラゴリラとコンドリオンを包んで、どっかへ転送されてしまった。
唖然とするしかない三騎衆と、残ったフクダリウス、モリッカ、ノーヴェン……。
「いつの間にかミーのカードをかっぱらってマース」
「……あのバカどもが」
慌てるノーヴェン。頭が痛そうに額に手を当てて俯くフクダリウス。
ドン引きするモリッカ。
時空間魔法をカード化して誰でも使えるようにしてたのが仇になったみたいだ。今回のように盗まれて悪用される可能性もあるという事だ。
ノーヴェンは「今後の課題にしマス……」と項垂れる。
「今後があるだと?」
「クヘヘヘ……、どうやら生き延びる前提らしいねぇ」
「……フン」
殺気立つカバちゃん、薄ら笑みを浮かべる蛇くん、そして相変わらず不気味に静かな槍さん。
ズンと太い足を踏み鳴らすカバちゃん。
「自己紹介まだだったな……。最初で最期だろうが、殺される前に名前は知っておいた方がよかろう? ワシは竜さんの博打仲間。カンバチで通称はカバちゃんだっ!」
細長い舌を出し入れする長身の男がねめつける視線をよこす。
「ククク。そうだったねぇ……。小生も博打仲間ですねぇ。ヘンビックで通称は蛇くんですねぇ……。以後、よろしくさようならですかねぇ?」
槍を持つ不気味な騎士は会釈する。
「我らが竜さんに仕える『首領邪羅三騎衆』が一人……、ランサーンで通称は槍さんだ。覚えてもらわなくても結構だが……」
「相変わらずつれないな槍さんよ。ちっと敵を気遣ってやれ」
「なにぶん気遣いは苦手だがな……」
「クへへ……、別に小生らは帝国軍でもないんですから、騎士ぶってもしょうがないと思いますがねぇ……」
フクダリウスは「ムウッ……あれで帝国軍ではないのか……?」と汗をかき、ノーヴェンもモリッカも息を呑む。
三対三という状況だが、例え竜さんがいなくともヤバい事には変わらない。
「さて! 蹴散らすといこうかっ!!」
戦意をみなぎらせたカバちゃんが巨躯に見合わないスピードで地を蹴って、重々しいハンマーを振り下ろす。
それを鋭く見据えたフクダリウスは「かあっ!!」と全身の筋肉を膨らます。
ハンマーと斧が激烈に衝突し、足元の地面がめくれ上がって破片が飛び散り、衝撃波の余波が吹き荒れた。
「ほう! この怪力無双と恐れられたカバちゃんの一撃を止めるとはッ!!」
「フン! たかが博打仲間ごときが怪力無双とは……笑わせるっ!」
「言ってくれるな……!」
ギリギリと得物を交差して競り合うカバちゃんとフクダリウス。
「クへへへへ……、こっちも終わらせますかねぇ……」
蛇くんは両手から蛇をにょろーんと伸ばしてくるが、ノーヴェンは顔面のメガネからビームを放って迎撃する。
「これはこれは……面白くなりそうですねぇ……」
「ゲットアウト! ここは立ち退いてもらいマース!」
「なら、この世からゲットアウトしてくださいねぇ。スネークカスケード!」
すると今度はガパッと大きく口を開けて、中から大量の蛇が一斉に吐き出された。
滝のように地を震わせなから押し寄せてくる蛇の大群に、ノーヴェンは無数のメガネを浮かせて、ビームの弾幕を張って爆撃していく。
「あなたの相手は僕がします!」
「……そう」
槍を構えていく槍さんに、モリッカはゾクリと背筋に寒気が走った。
コンセットがボボン、と煙とともに二体召喚される。しかし刹那の煌きが視界に入ると、二体のコンセットが「がっ!」「ぐっ!」と風穴を開けられて横たわり、ボンと消える。
「ぐふっ!」
コンセットがやられて、モリッカは吐血。
どうやって攻撃したのか分からず、震えたまま戦慄する。
「キツネが能力の要だと聞いている。サンライトセブンは有名になりすぎた」
槍さんに能力を見抜かれて、絶句するモリッカ。
間髪入れずに、再び刹那に煌く一閃が顔面に向かって迫る。




