54話「首領邪羅衆の恐るべき出陣……!」
竜さんにスマホで呼ばれた三騎衆が魔法陣によって馳せ参じた。
「我が『首領邪羅三騎衆』よく来た」
「「「はっ!」」」
大柄な体躯のカバの獣人はハンマーを肩にかけていて、あからさまな戦士の鎧を着ている男。
細い体躯でクネクネしてて蛇みたいな肌青い長身の男。
そして槍を手にしている妙な仮面で顔を隠している謎の騎士。
「久しぶりだな……、カンバチのカバちゃん。ヘンビックの蛇くん。ランサーンの槍さん」
「我らを呼ぶとは何用かな?」
「クヘヘヘ……面白い事あるんでしょうかねぇ?」
「……いつものメンツでドンジャラかカードゲームという訳じゃないようだな」
「おう。あそこの温泉街を取り壊して帝国の賭博場にする!」
竜さんはニヤリと笑んだ。
彼の背後から、鳥のような恐竜が三羽舞い降りてきた。三騎衆は一斉に飛び上がってそれぞれ鳥恐竜へライドオンした。
カバのやつだけグシャッと地面に押し潰された。
「……少々太ったかな? ガハハ」
カバちゃんは大笑い。乗れている二人と竜さんは真顔で「……」と沈黙する。
竜さんは「よし! 出陣だ!!」と背中からドラゴンの翼を生やして飛び立ち、二人も鳥恐竜で追従。
カバちゃんは時空間スマホを取り出して、ポチッと押す。
すると地鳴りを大きくして巨大な陸亀が走ってきて、カバちゃんは飛んで搭乗。遅れての出陣で追いかけていった。
森の上であっても、龍脈を守るための大規模幻術がかかっている。
しかし竜さんを先頭にして三騎衆が追従しているので、幻術をものともせず突破してしまう。
龍脈にて、オオバ先生が「む、何かしら強い威圧の者が四人が来よる……」と感じ取る。
ナッセは座禅を組んだまま片目を開けた。
「大変だ!! ドラゴン温泉街へリュンサンが不明の三騎衆を率いて侵攻してくるぞ!」
龍人が飛び出して報告。
オオバ先生は「うむ。報告ご苦労。ナッセにはまだ教えるものがあるから、他の者に知らせてあげなさい」と告げ、龍人は「はっ!」と頭を下げて、場を後にする。
ナッセは「オオバ先生?」と振る。
「さて君は『運命の鍵』を持っとるな。だが、今は二度と使ってはならぬぞ」
「あ……ああ……」
誰にも明かさなかった秘密をオオバ先生は知ってて、指摘したのだ。
「例の死に戻りも、もう使えぬと思え。今世で最後だ。心せよ」
ナッセは歯軋りする。
悔しいが、オオバ先生の言う通りだと痛感する。
もし誰かが死んだら、二度と会えない。取り返しのつかない事は、もう死に戻りで取り返せない。
だが、それは普通なのだ。
「もうちっと、サンライトセブンを信頼しなさい」
「え?」
オオバ先生は「そう硬くならなくとも、きっと大丈夫だ」と微笑む。
そんな優しい言葉にナッセは安心していく。
龍人がサンライトセブン及びリョーコに事情を説明していく。
竜さんだけではなく他にも強いパワーを持った三人がいるのだ。このままでは温泉街は潰される。
フクダリウスが立ち上がる。
「リョーコはナッセについてやれ。後はみんなで出陣だ!」
モリッカは緊張しながらも「はい!」と答え、コンドリオンは「ええ」と頷き、ノーヴェンはメガネを煌めかし、オウガとドラゴリラは「やってやるぜ!」と意気込む。
リョーコは「みんな無茶しないでよね」と気遣う。
フクダリウスは「心配するな。誰も死なん……」と自信満々に答える。
「この三週間、みんなかなりレベルアップしましたよ!」
モリッカも自信満々だ。
「イエス。ただ単に本を読んだだけではなく、魔法のトレーニングもしてマース。ナッセも座禅しただけじゃありまセン」
「フクダリウスとリョーコで実戦修行を繰り返して、更に強くなりました」
「以前と違うワシらの力を思い知らせてやろう!」
「「「おおおお!!」」」
そんな意気込むサンライトセブンにリョーコははにかむ。
それから、オウガとドラゴリラは三週間が無駄になっているので密かに意気消沈しているのだが、秘蔵の宝具をもらったので大丈夫。
「時空間ワープ装置を使え!」
龍人に案内されて、魔法陣が輝いている部屋へ着くと、フクダリウス、コンドリオン、モリッカ、ノーヴェン、ドラゴリラ、オウガは頷き合う。
一斉に足を踏み入れて魔法陣の光へ消えていった。
それを見届けた龍人は安心したような笑みをこぼして、踵を返す。
ドラゴン温泉街にいるエルフたちが、大きくなってくる威圧と地鳴りに怯えていく。
巨大な悪意が飲み込まんとするのだ。
幻術であちこちズレる風景をものともせず進軍している竜さんたちは真剣な顔で突き進んでいたが、阻むように現れた人影に足を止めた。
「ここは通させはせんぞ……!」
「竜さん! あなたたちは僕たちが止めます!」
威風堂々とフクダリウス、コンドリオン、モリッカ、ノーヴェン、オウガ、ドラゴリラが並んで立ちはだかる。
それを見た竜さんはニヤリと笑む。
「せっかく命からがら生き延びたのに、のこのこ出てくるとはな……」




