46話「龍人の厳かな警告」
森に囲まれた人気のない町。建物は古い感じ。多くないがエルフが暮らしていた。
深き森の中で建っている事から、迷った人や全滅した人用のものだろう。
エルフの巨乳神官がボインボイン胸を揺らしていた。
「無茶しないでください! 迷い森の管轄である龍人様がわざわざ警告してたのに!」
「す、すまない。軽率だった」
オウガは頭を下げる。
「オウガさんが糞蜥蜴って言うのもいけないんですよ……。余りにも失礼です」
「この糞小僧、うるせぇよ! ああ!」
「すまへんな〜。ちっとはイケると思ってたんや! また揉みてぇわ~」
「二人は黙ってろ」
フクダリウスはオウガとドラゴリラをゲンコツした。さすがに静かになってくれた。
ナッセはふうと息をつく。
「龍人はマジで強いから無闇にケンカ売らないでくれ。手加減してくれたようだが……」
「えーマジ卍!! でもあんま聞いてくれなさそうやん?」
「マジ卍……?」
ドラゴリラの単語にモリッカは首を傾げた。
「龍脈には立ち入れませんから、温泉街でゆっくりしてはいかがですか?」
サンライトセブンは見合わせる。
リョーコはナッセへ「いいの?」と振ると「慰安旅行だと思えば」と返される。
オウガとドラゴリラはガーンとショックを受ける。
「ドラゴンの力が欲しいんや~!」
「そうだっ!! 親友の為に真面目にやれー!」
リョーコは「ふーん」とジト目をよこす。
ナッセはもう解消したけど、そっちの独り善がりは変わらなさそうだな、と。
ドラゴン温泉街。あちこち龍の彫刻像が設置されている。
「へぇ、ここのエルフは、ドラゴンを崇めているのかな?」
見渡すコンドリオン。
ナッセは「ここ初めて来たな……」と見渡す。
色んな龍の彫刻像は見応えがある。その中の一つに、チョコで作られたのがあった。
「彫刻像ならぬ、チョコくぞうだ〜〜!!」
「よぉ、久しぶりだな」
なんと一人のキザっぽい青年が現れた。
白い衣服の軽快な装備。腰や背中に剣などの武器を差してはいない。冒険者という感じではない。むしろ町人っぽい。
とはいえ、エルフしかいない町では不自然だ。
「なんかイケメンじゃない!」
リョーコは目を輝かせる。
するとコンドリオンが親しげに握手し、ドラゴリラも寄ってくる。
「久しぶりだね。リュンサン……通称『竜さん』だね」
「おお! 竜さんやん!」
「知ってる人かぞ?」
ナッセは聞く。フクダリウスは気になった。
「ナッセ……前世で会ってるのではないのか?」
「……あったかな? 少なくともオレとは接点なかったよ」
「そうか」
嬉しそうなコンドリオン。
「紹介するよ。彼は竜さん。ダチだよ。そしてデュエルの勝負師でもあるんだ」
「へへ、ワイは負けてばっかりだったな〜。今度は負けないぜ?」
「ははは! また、デュエルで夜更かししたいねぇ」
揃いも揃ってデッキを握って見せつけあっていた。フクダリウスだけは呆れてため息。
すると竜さんは掌を上にして差し出してくる。
「あ、最近負けたんで金貸してくれ。いつか返す」
何もなかったようにサンライトセブンとリョーコは通り過ぎた。
「あそこの温泉入りたいですね」
「オー、いいチョイスですネー」
「さて、そこの旅館で泊まろうか〜!」
「わぁー! 雰囲気が老舗っぽくていいじゃないー!」
「負けすぎて借金が二〇垓一二〇〇京五五六〇兆になってるんだ!! 友達として助けてくれよぉぉぉぉ〜〜!!」
涙目の竜さんが慟哭した。
「いや、それもう返せるレベルじゃねーわ」
その夜。旅館にて……。
サンライトセブンは慰安旅行のように楽しんでいた。
「いい湯ですね」
「ああ。気持ちいいなぞ」
ナッセとモリッカは天然温泉でゆったり浸っていた。
夜になっているが冷たい風に温かいお湯、そして天の川が斜めに横切っている夜空が見渡せる風景が素晴らしい。
コンドリオンとフクダリウスはサウナで蒸し暑い心地よさを味わっていた。
リョーコは一人、女湯につかってて巨乳がぷかぷか。あーいい湯ー。
「うおおおおおお〜!!!」
「ウッホウッホホホ!!!」
カタタタ!! オウガとドラゴリラの熱い温泉卓球でラリーの音が響いた。
ノーヴェンはスマホ弄っていた。フェイゴーやっている。
「時代錯誤してるやないか〜〜!!? でも星五鯖欲しいんや〜〜〜〜!!」
「フッ、知的に課金三四〇万して、たくさんの星五の鯖が集まってきましタ」
「それ知的とは関係ないんじゃ……」
温泉からあがったナッセ、リョーコ、モリッカ、コンドリオン、フクダリウスは廊下から温泉卓球広場へついた。
周りにゲームもあったり、飲み物のケースがあったり、温泉ならではの設備だ。
「警告はしておいたはずだぞ」
一同は固まる。なんといつの間にか龍人がソファーでくつろいでいた。卓球の玉が見逃されて床へ転がる。
緊張が走る。
「ええっ!? この人が話に聞いた龍人さん!?」
リョーコが驚き、ナッセは「ああ」と頷く。
するとドラゴリラが前に出て懇願しようと頭を下げてくる。
「やっぱ諦めきれへん! ワイはドラゴンになりたいんや! せやから……!」
「安易にドラゴンの力を求めるな。またろくな目に遭わんぞ……」
ドラゴリラは脱力して膝から崩れ落ちる。ナッセは「だろうな……」と細目でため息。




