43話「炸裂させろ! ナッセの大爆裂魔法!!」
ナッセは杖に全魔法力を集中していて、周囲が小刻みに揺れ続けている。
これまでの疲労の蓄積で、溜めがかなり遅くなっているのがネックだ。
「基本的に各魔法に応じて放出量は決まっている。そういう仕組みに従って、オレもモリッカも大差がない。むろんレベルが上がればMPも増えるし、威力も強くなっていくが、放出量だけは変わらない……」
「そ、そうか!!」
考えてみればそうだ。
ナッセのMPは信じられないくらい圧倒的に大きい。
だけど放っていた魔法の威力は、こちらとほとんど差がない。
もしMPに比例して放出量が変わるのなら、ナッセは化け物のような威力の魔法攻撃を繰り出していたはずだ。火の魔法なら噴火、風の魔法なら台風、水の魔法なら大洪水、天災レベルの威力になってしまう。
「そやな……。言われて見ればそうやな」
「そ、そうなのか?」
「と言うことはナッセ君はMPが多いだけで、我々と変わりがないのデスネ」
「ああ」
集中に神経を注ぎながらもナッセは頷く。
膨大な魔法力を集約させ、一点に凝縮させている。それだけで周囲は震え上がっている。
まだまだだ、とナッセは歯軋りする。完全に倒し切るには足りない。
「ぐああっ」「ぐっ!」
錫杖と剣でフクダリウスを弾き飛ばし、コンドリオンを蹴り飛ばす。女神像は怒りの形相でナッセへと振り向く。
「させない!! 四連奏・煉獄昇焔壁!!」「いっけぇ──!!」「やったれ────!」
モリッカは三体のコンセットと共に放った巨大な灼熱の火炎壁で囲んで、女神像を包む。轟音を立てて灼熱の火柱が立ち上る。
それでも女神像は「ウオオオオ」と強引に火炎地獄から抜け出す。
「そうはさせんっ!」「させませんよ!!」
再びフクダリウスとコンドリオンが阻む。
二人とも満身創痍、額から血を流しているのにも関わらず、決死の想いで女神像と格闘を繰り返す。怒り狂う女神像の猛攻も激しさを増すがフクダリウス達も負けじと競り合った。
「ミーも力の限りを尽くしマース!!」
ノーヴェンも疲労困憊ながらも、無数のメガネを自由自在に飛び回らせてメガネビームを次々放射していく。
女神像ことイワシローにとって「ウザったい!」と苦い顔するしかない。
満タンまでに充填しつつある莫大な量のエネルギーがナッセの杖で滞っている。その影響で地響き、唸り、空震、周囲は荒ぶっていた。
「大爆裂魔法の極意とは、使うスキルの基本放出量を無理矢理広げて威力を爆発的に高める事だ。意図的に火事場の馬鹿力を出すようなもので、自滅の恐れもあるリスキーなスキルだ」
切羽詰まったモリッカは息を飲み込んだ。ナッセならではのスキルなのだと察した。
そして女神像を倒すにはこれしかないとも────……。
「ぐわああああっ」
吹っ飛ばされたコンドリオンは剣を取り落とし数度床をバウンドし、横たわる。
「おのれぇぇぇぇ────ッ!!!」
激昂したフクダリウスは斧と共に急降下して女神像の巨大な腕ごと翼を豪快に切断、地面にまで亀裂を入れた。
更にモリッカとノーヴェンの魔法が一斉に放たれ、爆炎が連鎖。女神像はよろめいて体勢を崩す。
「くっ! いい加減に──……」
「よし! もういいぞ! 引いてくれ────ッッ!!」
「なっ……!!? しまっ……!!!」
その声にフクダリウスとコンドリオンは大きく飛び退いた。
ナッセは見開き、思い切って杖を突き出した。
「斬り裂かれろッ!! 無双天嵐大烈斬ッッ!!!!」
破裂するような爆音を響かせながら、暴風の奔流が扇状へ解き放たれた。風の刃が幾重と吹き荒れて女神像はおろか周囲を巻き込んで破壊を撒き散らす。
大きな轟音と地鳴りと共に辺りは真っ白に吹き飛んだ。
「あああああああああああああ……ッッ!!!」
イワシロー大絶叫。さしもの巨大な女神像すら塵芥と消し飛ばされていく。
唖然とするフクダリウスたち。目に焼き付いた驚天動地とも言える大暴風、それはまさに天災と錯覚しうるものだった。
「ひ、火の魔法じゃなくて……風の魔法で……これ…………? す……すごいや…………」
腰を抜かしたモリッカ。
ナッセの前にはもはや跡形もない。ただただ暴風の余韻が流れていくだけだ。そしてバーは一気にプツンと消え去った。女神像は蘇る暇もなく風に還っていったのだ。
こてん、丸裸にされたイワシローが転げ落ちた。
「あ、あわわ……! う、嘘だろ〜〜〜〜!?」
「ワイの奥義喰らえや~!! 剛力揉み!!!」
「ギャース!!!」
ゴリラ化しての尋常じゃない握力による揉みで、ぐしゃぐしゃとイワシローの股間を揉みほぐして絶叫させた!!
「あ、あははは!! や、やった────ッッ!!!」
モリッカは拳を突き上げて飛び上がった。ノーヴェンは感嘆に震え上がって「オー、エクセレントデス……」と呟いた。
コンドリオンも傷だらけの上半身を起こし、安堵の笑みを見せた。
「いやはや容赦ない破壊力だわい」
フクダリウスすら目を伏せて首を振る。
そんな彼らを感傷的に眺めるオウガ。フルフル震えながら後悔の涙を流していく。
「早まった……、まだ死にたくないよぉ……」
ふがふが一三〇代の口を開閉する。
「ぐっ!」
ナッセは脱力して膝が落ちる。
慌ててリョーコが胸で受け止めた。ぽよん。
息切れするナッセ。無理もない。魔法の連発に加え大爆裂を放ったために負担も疲労も大きいのだろう。
「お疲れ。ナッセ」
「あ……ああ。もう終わったよ……」
微笑み合うリョーコとナッセ。
あとがき
大爆裂魔法と聞いて、恐らく大半は『このすば』の爆裂魔法が浮かぶけど、実はずっと前から存在そのものは旧作(未公開)とかに出てましたw
なんか敵の人造人間が風による大烈斬魔法で城塞をまるごと吹き飛ばしたのが初出ですw
魔女クッキー(主人公)がそれをパクって火の魔法で応用して定着した感じw
旧作含め先制で使う事が多かったけど、満身創痍で撃とうとすると今回のように溜めるのに時間がかかって燃費悪いからなんですねw
術理としては『ダイの大○険』に出てくるグラ○ドクルスみたいなもんですw




