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42話「四天王を倒す方法は……!?」

挿絵(By みてみん)


 なんと最弱だったオウガが凄まじい奥義を放ち、女神像を粉砕したのだった。

 パワーもスピードもサンライトセブンの中では最強クラスだ。


「すごかったね……」とリョーコが唖然とする。


「だが、これで確信した。サンライトセブン最強の漢はオウガだ。完璧すぎる。寿命を投げ打つ致命的な欠点に目を瞑ればよォ~!」

「ホントにね! あとどれくらい生きてられるのかな?」


 ナッセは呆れ、リョーコは苦笑いする。


「いつも思うけど揉み技って下品ですね……。僕は興味ありませんし」

「ドラゴリラさん。肩揉み限定じゃダメなんですか?」

「え〜! 男の股間じゃなきゃ嫌や〜!」


 モリッカとコンドリオンの不評に、ドラゴリラは不満そうだ……。

 するとオウガはゲホーと盛大に血を吐いてぶっ倒れる。

 呆れるナッセ。


「やっぱりか……」

「ああ、もう。考えなしに突っ走って、なにが熱血漢ですかっ!?」


 モリッカにも呆れられ、グロッキーなオウガ。痙攣して意識朦朧だ。


「人生熱血道! 我が道に一片の悔いなし……!」


 言葉通りなら一気に九十九年もの寿命を払ってしまってるんじゃないか?

 体の内部はボロボロ。一〇〇代に匹敵するほどの内臓衰弱。診断すれば入院必至じゃないか?

 こんな四天王の一人に、そこまで命を投げ打つ??


「同じ使うなら、せめてラスボスに撃てばいいんじゃ……?」

「あっ、そうすればよかったか…………! 糞がぁ……! 人生悔いありだぁ……!」ガク!


「オウガ────────ッ!!!!」


 ドラゴリラは彼を抱いて慟哭した。

 オウガの体はいつの間にか一三〇代になっていて、超ヨボヨボじいさんだ。いつ死んでもおかしくない。

 だがナッセは未だ警戒を緩めていなかった。

 フクダリウスは気になって「どうした? まさか……?」と戦々恐々になっていく。


「ああ。まだバーが全然残ってる……」


 彼のつぶやきに、一同は一気に緊迫感に包まれた。

 一三〇代オウガはアホ面で鼻水垂らして「え? ウソん?」と振り向いた。


「肝を冷やしたがね……」


 ズズズズ、と地鳴りとともに元通りになった女神像が聳えていく。

 そしてイワシローはドヤ顔。

 なお、回復魔法でバーは天使の輪っかのように長く戻っていて、これまでが無駄に……。


「ふっふっふ! あれくらいで勝てたと思ったかい? どやぁ!」


 伊達に帝国四天王を名乗ってはいない。前世でフクダリウス、コンドリオン、ドラゴリラ、オウガを皆殺しできたのも頷ける。元より勝ち目はなかった。

 誰もが絶句するしかない。


「ばっ、ばかな……!? オウガの寿命を投げ打った奥義が無駄にっ!?」

「あの猛攻撃でもダメなのかっ!?」

「そ……そんな! それじゃオウガがただのアホでマヌケじゃないですか!? ただ考えなしに自滅して情けないじゃないですか!?」

「モリッカ君、さりげなくディスってないかい……?」


 一三〇代オウガはプルプル震えている。


「やっぱ、オウガのアホ奥義程度じゃ勝てねぇか! ここはオレがやるしかない!」

「アホ奥義って言ってくれるな……。もう……泣きたい…………」


 自分でもバカな事したと後悔しまくりのオウガは、ギャグ涙を流すしかない。

 そんな感傷にもお構いなく、ナッセは長いマフラーを掻き上げ、揺らめかせた。彼は難攻不落の女神像を倒す術があるのだと言う。


「……大爆裂魔法をぶっ放す。悪いが足止め頼む」


 両手で握った杖を正眼に構えながら一歩踏み出すナッセに、フクダリウスとコンドリオンは腰を低くして頷く。

 もう戦えない一三〇代のオウガは「ぎ……ぎっ……」と白目で呻くだけだ。


 ナッセは正眼に構えた杖に魔力の粒々が集約されていく。徐々に凄まじい余波に吹き荒れ始め、誰もがビリビリと気圧される。

 この満身創痍じゃあ、撃てるまで時間がどれくらいかかるか……。


「そ、そうかナッセの最強の攻撃魔法なら!!」

「モリッカ。大爆裂は厳密に言うと攻撃系魔法じゃない。むしろ補助系魔法だよ」

「ええっ!?」


 未だにナッセへと集約し続けているエネルギーの奔流が唸りをあげていく。それに伴い地響きが強くなっていった。

 それを見たイワシローはギョッと畏怖していく。

 例の五〇〇〇人盗賊団をも全滅させたと聞く最強の魔法。あれを喰らったら確実に終わる。


「そうはさせるか!! 真っ先に潰すよ!」

「ウオオオオォォォォォォォォ!!!」


 いきなり怒りの形相に変化し、女神像がいきり立って襲い掛かってくる。


「ヤツも死に物狂いできますッ!!!」「ワシらで食い止めるッ!!」


 コンドリオンとフクダリウスは一緒に飛び出して攻防の応酬を繰り返す。

 フクダリウスの斧が、コンドリオンの剣が幾重に煌めく軌跡を結び、けたたましく打撃音が鳴り響いた。

 ノーヴェンも無数のメガネを更に増やして、包囲網を敷いた上でメガネビームの嵐を放つ。

 暴れる女神像を、絶え間ない爆発の連鎖と打撃が覆う。


「おのれええええええッ!!! 邪魔だあああああッ!!」


 怒り狂う女神像の振るった剣を、フクダリウスは斧で受け止めて衝撃が広がる。


「グフフッ! しばしワシらに付き合ってもらうぞ!」

「そうですよ! このドンイ王子として、手厚い接待させてもらいますよ!!」

「イエス! メガネによるメガネの大出血サービスで奉仕させていただきマース!!」


 満身創痍ながらも意地でもナッセの為に、かなり無理してくれてるようだ。その様子にナッセは歯軋りしながら頰に汗を流す。

 リョーコがナッセのそばにいて、流れ弾と飛んでくる破片を砕いてくれている。

 モリッカは力を温存して様子を窺い、いつでもコンセットの能力で助け舟を出せる状態だ。

 みんな懸命に闘ってくれているんだ。


「頼むぞ!! みんなっ!!」


 胸が熱くなる想いでナッセは力を溜め続けている。

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