41話「オウガ! 命を投げ打つ熱血奥義!」
シュパンシア帝国四天王イワシローの作り出した女神像のタルパ。
HPバーがあって、ダメージを受けたりパーツを欠損したら、バーを減らして回復させる。しかし逆に回復魔法で減ったバーを増やす事もできる。
「治癒! 治癒!」
サンライトセブンが息を切らして攻撃を止めている間に、女神像は連続で回復魔法を唱えてバーを長くしていく。
「く、くそ……! ダメかっ……!」
「これでは延々といたちごっこじゃないですか!?」
更に突き放されていく失望感にフクダリウスとモリッカは苦い顔する。
これでまたふりだしだ。延々とイタチごっこやらされてはこちらが力尽きるだけ。
いくら最大級の火力で連続攻撃しようが女神像はすぐ回復してしまう。向こうにはMPに限界はないのかと思うくらいだ。これだけ回復魔法を使ってきて尽きる気配もない。
「こんなん無理ゲーよっ!!」
リョーコは悔しがって斧で地面を叩く。
フクダリウスも否定できず悔しそうに俯く。もはや詰みか……。
「やっぱりか……」
ナッセの言葉に誰もが注目した。分かってたかのような彼の様子に怪訝な視線を送る。
「女神像のライフバーは時空間魔法。魔法力と引き換えに復元レベルの回復魔法を行う。これなら脳を吹っ飛ばされようが完全再生できる。……しかし問題はそこじゃない」
「ん? どういう事だ?」
フクダリウスは怪訝に目を細める。
「イワシローが何者か知らんが、時空間HPバーに、呪縛対策の時空間転送、そしてここの広大な戦闘空間……、これだけ複数の時空間魔法を使って平気な顔をしている。……バックから誰かが供給しているな? やはりニメアか?」
「な、何の事ですかね」ぎくっ!
「お、おいおい! それ自力じゃないんやな。ズルいやんッ……!?」
「卑怯者じゃないですか!」
「うるさいよ!! さっさと死ぬがいいよ!!」マジギレ!
「ここはオレに任せてくれ!」
ナッセは長いマフラーを掻き上げ、揺らめかせた。彼は難攻不落の女神像を倒す術があるのだと言う。
「もうこんな疲労困憊だから体が持つか心配だが、もはや大爆裂魔法をぶっ放しかねぇ! 悪いが足止め頼む!」
両手で握った杖を正眼に構えながら一歩踏み出すナッセに、フクダリウスとコンドリオンは腰を低くして頷く。
戸惑うドラゴリラは「ホンマに出来るんかいな……?」と疑念を呟く。
「大丈夫なの?」
心配そうなリョーコに「大丈夫!」と笑うナッセ。
「へっ、糞餓鬼はどいててな。俺様がやってやるぜ!」
ドン、と押し退けるオウガ。戸惑うナッセ。
「ちょっ」
「使えねぇヤツはすっこんでろ。……親友よ頼む!」
「おうよ!」
ドラゴリラは気合を入れて黄金に輝く右手で、オウガの背後から股間を揉みあげた。
「ごおおおおおおおおおおおッッ!!!」
オウガは両目から光の帯が放射され、全身を燃え上がらせた。
なおもドラゴリラは恍惚と股間を揉みしごく。
その度にオウガの体内のチャクラが活性化されて肉体がビンビンと艶を見せ、エクスタシーな快感が更なる強化を促す。
「えぇ……」
「なにそれキモ……」
ナッセもリョーコもドン引きだ。
「最大最強バァァァニィィィングゥゥゥ・オォォォォバァァァァソォォォォルゥゥゥ!!!」
更なる激しさを増す業火のオーラ。地鳴りが更に増していく。
ドラゴリラとオウガの気合を入れた増強男根揉みと熱血のオーラ。
「な、なんだね……!? こ、これは…………!?」
青ざめていくイワシロー。
「行ったれ!!」
「おう!! 行くぜっ!」
オウガが地を蹴る。それだけで地面は爆発。破片が飛び散る。
走るだけで地面が裂き、轟音を鳴り響かせるほどだ。
「喰らええぇぇぇッ!! この俺様の生き様をぉぉぉッ!!」
オウガに殴られて女神像は吹っ飛ぶ。その瞬間、オウガは反対側へ回って殴り飛ばす。
目にも留まらぬスピードで殴られて、あっちこっち弾かれて縦横無尽に吹っ飛び続ける。バーはどんどん縮んでいく。
「これから俺様はぁぁぁぁ、出世し続けたぁぁ、親友と結婚したぁぁぁ、老後まで仲睦まじく過ごしたああぁぁぁッ!! 人生の重みぃぃぃぃ、経験の重みぃぃぃぃ、寿命の重いぃぃぃぃ、その全てをこの一瞬に圧縮し、一心一魂込めた拳を喰らえええええッ!!」
オウガは怒り狂ったまま両拳で交互と突きを繰り出し続ける。突き突き突き突き突き突き突突突突突突突突突突突突!!!!
女神像は振動するだけに見えるほど、縦横無尽の突きを数千数万と浴び続けていった。
「究極熱血ッ!! 九十九年ファァァァイナァァァル・インパァァァクトォォォォォォッッ!!!!!」
オウガの全身全霊込めた灼熱の拳が女神像を深々と穿った。
大気が破裂し、吹き荒れる衝撃波が連続した波となって暴れ回った。
地面に強く叩きつけられ女神像は爆散。煙幕が爆ぜて立ち込めた。
「…………ミッション完了!」
オウガはカッコつけて鬼の様な表情で仁王立ち。
「これが完全無欠たる漢であり相棒や!! これがサンライトセブン最強のオウガやー!!!!」
「お前も俺様に負けない“漢”になれよ!? 無理だろうがなっ! ごはははっ!」
なんかオウガとドラゴリラが勝ち誇りつつ威張ってて、悦に酔っている。
しかし急にオウガが吐血してぶっ倒れて、一気に一三〇代もの超ヨボヨボ爺さんになってしまう。
だがナッセは未だ警戒を緩めていなかった。
フクダリウスは「どうした? まさか……?」と戦々恐々になっていく。
「ああ。まだバーが全然残ってる……」
彼のつぶやきに、一同は一気に緊迫感に包まれた。
一三〇代オウガはアホ面で鼻水垂らして「え? ウソん?」と振り向いた。




