33話「窮追迷宮の恐怖! 早急に脱出せよ!」
先程の浮遊パネルの第二試練を潜り抜けた後、サンライトセブン一同は第三試練へ挑む。
またもやの迷路を駆け抜けていた。
だが、今度の迷路は変形するようで、壁があちこちでスライドや開閉を繰り返す。しかも後ろから押し潰すかのように黒い壁が迫ってきていた。ゴゴゴ……!
常に変化を続けて追い詰めてくる迷路に、オウガは苛立つ。
「糞が……! 急がないと潰されるとか、ふざけやがって……っ!!」
「ヤバイやんっ! ひぃひぃ、ま、間に合わへんわ〜!!」
前を塞ぐように壁が横から閉まろうとしていた。このままでは後方の黒壁に挟まれる。
「ふんぬおおおおっ!!」
フクダリウスは筋肉隆々膨らまして斧を振るう。轟音を立てて壁は破片を散らして粉砕された。その間に抜けていく。
「どうも前へ行かせたくないようだな」
「ふう、はぁ、ひぃ……。フクダリウスいて良かったわ〜」
「……そうだな」
フクダリウスはナッセ一人なら超神速で抜けられていただろうと察した。今はみんなと歩幅を合わせて走っているから、これだが。
「ふんっ!!」
フクダリウスが斧を振るって壁を豪快に粉砕。しかしその先も連続で閉まろうとしていた壁が見えた。
「おおおッ!! 星幽剣ッ!!」
ナッセは気合いと共に、杖から光の刃を発生させて振るう。分厚い壁を切り刻んで、破片が吹き飛ぶ。その隙に一同は走り抜けた。
「よし!」
出現率が低くなっているものの、ゴーレムが行く手を阻もうとすれば、コンドリオンの象戦法、ノーヴェンの射撃、モリッカとナッセの攻撃魔法で打ち砕きながら通り抜けていった。
オウガとドラゴリラは息を切らして走るだけで精一杯だ。ひいふう……。
「走りながらで、これぇ!?」
リョーコは息を切らしながら走っていた。攻撃しながら走る余裕はなかった。それでも頑張ってナッセに追い付こうと走っている。
「おぶってもいいんだが?」
「ううん! めーわくかけたくないからー」
健気なリョーコにナッセは心配そうに振り向いて様子を見ていた。
「なんだかなぁ……」
ナッセはため息をつく。
「ひぃ、はぁ、はぁ〜! ゴールまだかいなっ!?」
「こ……この糞迷宮がぁ……! いい加減にしやがれぇ……っ! はぁ……はぁ……」
オウガとドラゴリラは汗いっぱいで息を切らしながら走っている。前を走っている大柄なフクダリウスを見て、背中に飛び付きたい衝動に駆られていた。
後ろから迫る黒壁は横に広がっていて、恐らく抜けるところはない。破壊も試したが通じない。これは逃げるしかない。
チンタラすれば、前を塞ぐ壁と後ろから迫る黒壁でプレスされて終わる。
「あと二キロしかないと思うから、すぐそこだよ」
「ええ〜? まだ二キロもあるんかいなっ!!?」
「糞があっ!!」
絶句するオウガとドラゴリラ。
しばらく走り続けて、出口へ飛び込むと、後ろから迫った黒壁は出口へぶつかって止まる。ズズン!
「ぜぇぜぇ……、きっついわねー……!」
迷路を抜けた先の広場の第三の大きな出入り口を前に、リョーコは息を切らしながら両膝に手をつけて頭を垂れる。
「はぁーはぁーふう……、ワ……ワイも……、ち、ちょい、しんどいわ…………」
「す……すまない。俺様もだ…………」
息を切らすドラゴリラもオウガも全身汗びっしょりで、その場にへたり込む。
モリッカとコンドリオンは立っているものの肩を上下させて息を切らしていた。しかしノーヴェン、フクダリウス、ナッセは普通に立っていた。
「そういや、ずっと走ってばっかりだったっけ?」
素っ頓狂な様子のナッセにフクダリウスは不思議そうに見やる。
「おまえは平気なのか?」
「ああ。スタミナにも自信がある。ともかく、早くここを出よう」
フクダリウスは内心びっくりする。見た目的に小さいし魔法使いタイプなのに体力があるとは意外だ。
「おい!! ちっと休ませろや!! この俺様もさすがにキレるわ! この糞迷宮がぁあ!!」
「せやぁ……、もう足動かへんわ……」
ギャーギャー喚くオウガ、汗ビッショリで横たわるドラゴリラ。
フクダリウスはウンザリそうに溜息。
「仕方ない。ナッセ、休憩していかんか?」
「できれば出口を抜けてからがよかったが……。まぁいい、ゆっくりしててくれ」
「ありがたい」
へたり込んでいたオウガは安堵に表情を綻ばした。すると出入り口を塞ぐように壁が落ちてきた。その突然の出来事にナッセは肩を竦めて驚く。
「ああっ!!」
モリッカの声で後ろへ振り返れば、隙間を埋めるように後方の黒壁がズズ……と変色して出口と一体化してしまう。凹凸もない完全な絶壁だ。
無機質で何もない密室に閉じ込められて、サンライトセブンのみんなは呆然するしかなかった。
「こんの糞餓鬼ぃ! ハメたなっ!?」
「こ、こんなの……なかった!! 以前はなかったぞ!! そのまま通り過ぎた!」
動揺して青ざめているナッセは首を振る。
「ひょっとして……、疲れて留まると発動する罠なんじゃ……?」
「「「ええっ!?」」」
コンドリオンが恐る恐る言った言葉に、みんなは騒然とする。
ナッセ単独なら、今のように疲れないから通り過ぎて何も起きなかった。だから知らなくて当然だ。
そう察してフクダリウスは「むう……」と苦い顔で唸る。
「お、おい! 見ろ!!」
ズズ、と重々しい音を響かせながら、左右から壁が迫って来ている。




