28話「仮面女の正体!?」
ナッセは仮面女と向き合っている。
「黒髪ロング……、お前はオレを知っているようだが、こっちは面識がない。何の理由があって止めようとしてくるのか教えてくれ」
「えっ……!?」
息を飲むモリッカ。まるで仮面女はナッセの事を知っているかのように見える。
当のオウガは「ど、どういうことだ!? ハッキリしろ!」と苛立つ。
「あなたも狡いわね。味方の支援を止めて私がオウガを殺すか観察してたでしょ?」
「バレたか……」
「おい! おい!! 糞餓鬼ィっ!! 俺様がとんだ道化じゃないかいっ!?」
「ど、どういう事なの?」
リョーコは怪訝そうに眉を潜める。
頭上からポッポーと湯気出しながら文句言うオウガは無視して、ナッセは仮面女を見据える。
「オレにトドメを刺す機会があったのに、それをしなかった。その確信が欲しかったのでオウガをかませた。案の定手加減してくれた。冷淡な言動と裏腹にな」
「なぜ? 私にそうする理由があって?」
「……実はオレに惚れているんじゃないか?」
ナッセが仮面女に言い放つ。誰もが驚く。だが仮面女は沈黙を守る。
「は?」
「はぁ!?」
「はあああああ!?」
モリッカ、リョーコ、フクダリウスは揃って吐き出した。仮面女は鼻で笑う。
「ふぅん……」
カランと仮面が床に転がる。なんと仮面女は素顔をさらけ出したのだ。
雪女を思わせるかのような端麗とした綺麗な顔。黒い姫カットが揺らめく。凛とした美女だ。呆気にとられる一同。
「ブー半分不正解よ。私はヤマミ。ヨネ王様に頼まれてナッセをたしなめに来たわ」
「えー、そっち? ヨネ王様か……。まいったな」
「ヤマミに反応して欲しいのだけれど?」
「す……すまねぇ……。今はリョーコがヒロインなんだ……」メタァ!
「むー」
ヤマミは不満げに頬を膨らます。ナッセはバツの悪そうな顔で後頭部を掻く。
「思った通り一人で抱えがちな人間と見受けした。サンライトセブンが駆けつけなければ力ずくで追い出してたわ」
「あーそれ分かる」
同意したリョーコに、流石のナッセも「なんだよ、それ……」と口を窄める。
「ともかく、あなたはもう既に時空間魔法を会得してるのに、なぜ更なる時空間魔法を求めるの?」
「ええっ!!?」
一同は目を丸くして驚き上がった。しばしの沈黙を置き、ナッセはため息をつく。
「バレたか……」(二回目)
「時空間魔法を増やせば、この後の危機を乗り越えていけるのかもね。だけど、その分あなたの身体を蝕む事になる。それをヨネ王様は懸念しておられたわ」
モリッカもリョーコもヤマミが邪魔する理由に合点がいった。
事前に時空間魔法は高度な魔法で負担が大きいみたいな事を聞いていた。もしこれ以上時空間魔法を増やせばナッセの身体は耐え切れないかもしれない。
それでもやり遂げようと邁進するのはこれまでのナッセを見ていれば分かる事だった。
「ナッセ、また無茶をっ……」
フクダリウスの視線が痛い。
「無茶をするのはカッコいい。故に最強で熱血漢である俺様の専売特許だ! 糞餓鬼ぃ!」
なぜかムキになって張り合おうとするオウガ。カッコつける為に無茶をしたいわけじゃないんだけどな、とナッセはジト目。
ヤマミはため息をつく。
「時空間魔法よりも凄い魔法を持っている癖に、贅沢なものね」
「じ、時空間魔法よりも?」
戸惑うナッセ。怪訝に眉を潜める。何言ってるか分からない。
「そう! わた……サンライトセブンという魔法がね」
ヤマミは笑む。鈍いな、と笑んでいるように見える。呆然とするナッセ。
なんか言い直してなかったか?
「そうですよ! 水臭いですよ!!」
「モリッカ……」
「そうデスネ。我々は仲間なのですカラ」
「一人で抜け駆けはダメじゃないか! 大事な用事なら一言言ってくれないと!」
「ノーヴェン……、コンドリオン……」
「せや。自分一人で抱え込んでもしんどいだけや」
ドラゴリラはニカッと笑っている。フクダリウスもモリッカも笑っている。みんな笑ってくれてるんだ。なんだか心が温かくなって自然と顔に笑いが込み上げてくる。これが笑いか。
オウガだけは「糞餓鬼なぞ仲間とは認めてないがなっ」と意固地だ。まぁ別にいいけど。
「……そうだな。もう時空間魔法はいらない」
「ええ。みんなでがんばって」
ナッセの綻んだ笑みに、ヤマミは安堵して応援する。
「さて、要件は済ませた。私は帰るわ。今回はシリーズコラボで登場しただけで、本来なら私は今作に登場しないキャラだから我慢して引き下がるけどね。くっ!」メタァ!
言うだけ言うと、彼女は花吹雪の渦に呑まれて去っていく。
それを見送ったナッセは、サンライトセブンと一緒に足並みを揃え、入り口から差し込む外の光へと歩んでいく。
スッキリした気分で「さぁ、王国へ帰ろう」と胸を張って……。
「ねー、なんか文字書かれてるわ。読めるー?」
リョーコの声にサンライトセブンは一斉に振り向く。
出入り口と反対側の扉を開けてリョーコは手を振っていた。確かに開かれた扉には部屋ではなく壁が見えていて、扉が飾りであるかのように見える。
が、ナッセはうろたえ始めた。
壁には古代文字で「開いたなら、時空間試練スタート」が書かれていた。
「バカ!! 不用意に開けるなぁぁぁぁぁっ!!!」
既に時は遅し、入り口の扉がバタンと閉められた。そして床が急下降。入り口が遥か上へと遠ざかっていく……。
あとがき
ヤマミ「コラボ出演だから仕方ないけど、やっぱりリメイクするなら私をヒロインに据えて欲しいわ……。なんでリョーコがヒロインなのよ……」
作者「できればLINEで書いてた内容を忠実にしたいんだ。すまん」
ヤマミ「そもそも、なんで仮面で私を魔眼使いにしたの?」
作者「ネタバレ防止で」
実は仮面をかぶると、装着者の両目を魔眼に変えられるのだ。オンオフできるよ。
なんか普通の目がスゥ──……っと魔眼に変わっていくのカッコイイよね。




