19話「ナッセの入隊試験!!」
段差があってその上に王座が一つ、赤い絨毯が広がる広間。サンライト王国の国旗が王座の後ろの壁に飾られてある。
護衛の兵士が立っていて、ヨネ王を見るなり会釈する。
ヨネ王についていくナッセ達。入隊試験ということで場所を指定していたわけで、そこは何故か謁見の間。
本来、ヨネ王が王座について客を相手取っていく場所なのだが……。
「サンライトセブン! 集合じゃ!!」
ヨネ王がそう告げると、一斉に数人が飛び出して王座の後ろへ並んで行く。
オウガ、ドラゴリラ、ノーヴェン、モリッカ、コンドリオン、フクダリウス、クスモと豪華な七人揃い踏みだ。
色物集団のように見えても、威風堂々とした各々の威厳が漂っていた。数々の困難を打ち破りサンライト王国を守り抜いた精鋭隊だ。面構えが違う。
「ってか、あの女騎士……まさか……!?」
リョーコが震えながら見た先に、美女の剣士がいた。彼女は長身でナイスバディで、凛々しい顔立ちに黒髪ロング。そして身に纏う全身鎧が目立つ。
「ああ、サンライト王国の女騎士クスモさんだ。二十代前半だが、実力としてはサンライトセブン最強のフクダリウスにも引けを取らない」
「もうっ! 歳の事言うのは余計さ」
クスモは口をへの文字にして拗ねる。
オウガは自分が最強だと思っているので、ピクピクこめかみに怒りマークが浮かんでいた。
「でも女子の中でも憧れになってる女騎士だからね〜。生で見れて良かった~」
目をキラキラさせて羨望の眼差しでクスモを眺めている。ちょいヨダレ出ている。それほど高嶺の花であり、そして文武両道だ。
「いや、残念ながら近い内に引退する事になる」
「ええ!? どうしてよ?」
「実は彼女に夢があるんだ。自分でけものカフェを開きたいからな。その為にサンライトセブンで稼いでいた」
ツカツカとクスモは歩み寄り、ナッセの両肩を握ってゆさゆさ揺らしながら「あああ!! なんでそれ言っちゃうのさ! せ、せっかく内緒にしてたのにさ〜!!」と赤面で訴えた。
「クスモさん落ち着きなされ。ナッセが辛そうじゃ」
汗を垂らすヨネ王は止める。
オウガは気に食わなさそうな顔で「糞餓鬼ィ……」と歯ぎしりする。ナッセが気に入らないようだ。
「そ、それより、なぜ……試験を?」
さっきのシェイクの影響で酔い気味のナッセ。ヨネ王は懐から柄を取り出す。刀身を抜いてるだけの柄。彼は好々爺として優しい笑みを絶やさない。
しばらく一緒に歩いてコロシアムへたどり着くと、闘技場の上でナッセと距離を開けてから、仁王立ちで振り向く。
「試験はコロシアムで行う。相手はこのワシじゃ。遠慮はいらない。……全力でかかってきなさい!」
息を飲むナッセ。しかし身構える様子は見せない。するとリョーコがズイと前に歩み出る。
「ちょっと! ボケてんじゃないでしょーね? それ柄だけじゃない!?」
「ふぉっふぉっふぉ。元気な嬢ちゃんだの。なに、普通の武器ではない」
柄をかざすと、刀身があるべき所に光の刃が伸びた。驚くリョーコ。
「あれが王国に伝わる伝説の聖剣。その名もアポローア……」
「その通り。さすがはナッセじゃな」
さそも驚く様子のないヨネ王の微笑みに、ナッセは若干の違和感を感じた。
「ええっ!? そ、そーだったのか!!?」
何故かサンライトセブンの面々も驚いた。どうやら今まで知らなかったようである。平和だからなのか王のとっておきを見る機会がなかったかもしれない。
「あ、あの……。ヨネ王様! 俺様との試験では木刀を使ってたんじゃないですか?」
オウガも恐る恐る問う。
「ナッセには、それで相手にならぬ。少々本気入れとかないとのう」
「ごおおおおおおッ!! 俺様が格下などとッッ!!!」
全身から荒ぶる炎のオーラを噴き出して激怒する。
モリッカはジト目で「また下水道にぶち込みますよ?」と呟く。オウガは「ぐっ!」と怒りに震えたまま沈黙する。
「ヨネ王様……、まさか貴方も!?」
「いやいや、流石に転生する力はない。後でネタばらししてあげるから、今は試験に集中するのじゃ」
ナッセは頬に汗を流す。まるでヨネ王様もこちらの素性を知っているかのような雰囲気があった。もしかしたら、と仮説を打ち立てる。
「さぁ、どこからでもかかってきなさい!」
そう言うなり、ヨネ王の前に立ちはだかるように菱形の光の盾が四つ並ぶ。その余波で広間に風が吹き荒れた。ビリビリと威圧が圧してくる。ナッセは戦慄して青ざめた。そして覚悟を決めて息を飲む。
あの聖剣アポローアは、攻防一体のバリアを生み出せる力がある。
「……行きます!」
「うむ」
ナッセは真正面から駆け出し、杖を振るって背後から無数の火炎弾を飛ばす。
ヨネ王へと目指すが四つの盾が隙間を埋めて阻む。連鎖する爆炎が轟く。絶対防御とも言える光の盾は何ものをも通さない。
すると背後へ回り込んでいたナッセが「煉獄昇焔壁ッ!!」と叫び上げ、振った杖から放射された極太の閃熱光線で薙ぎ払う。半顔で振り向くヨネ王に眩い光が覆う。
轟々と灼熱の炎の壁が高々と燃え上がった。縦横無尽に熱風が吹き荒れ、床が震え上がる。しかしヨネ王は盾を回り込ませて防いでいた。
「まさか最上級魔法を至近距離で放つなんて……」
モリッカは唖然とした。
魔法使いならあり得ない戦い方だ。間合いを取って魔法で討ち取っていくのが定石。だがナッセは間合いを詰めて魔法をぶっ放すという戦い方もする。斬新にみえた。なんとなく体が打ち震える。
「頑張ってください!」
応援を背に、ナッセはヨネ王へと果敢に挑んでいく。爆破が連鎖し激しい戦闘が繰り広げられていった。




