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15話「自称最強、熱血漢オウガ!!」

挿絵(By みてみん)


 赤色の全身タイツの男、オウガ。首には短い橙色マフラーがある。不快感そうにナッセを睨む。


「彼もサンライトセブンの一人、オウガ。粗暴で命知らずな男だ」

「ぜ、全身タイツ……」


 リョーコはオウガに呆れる。


「おい、訂正しろよ糞餓鬼(クソガキ)がっ! 俺様はサンライトセブン最強であり、誰よりも熱い心を持つ熱血漢だっ!!」


 粗暴で全方位ケンカ腰なのは相変わらずだ。ナッセは真顔のまま沈黙。

 オウガは高らかに腕を上げた後、ナッセへと指差す。


「ごおおおおおっ!! 糞餓鬼(クソガキ)! 君は何故サンライトセブンに入りたいのかなっ!!? 場合によっちゃ拷問するぜっ!」


 脅し気味のオウガにも、ナッセは静かに見据えるまま。

 リョーコたちはそんな粗暴さに怪訝そうな顔をしている。アクトは「確かに粗暴な野郎だなァ……」と苦い顔で呟く。

 ドラゴリラは神妙な顔で見守っている。


「サンライト王国が一番馴染みがあって、そこを中心に未来を守りたい」

「フッ、無難な答えで誤魔化せるとでも?」


 オウガは鼻で笑う。ナッセは「本音なのになぁ……」と呆れる。

 話を聞かないのは前世から変わっていない。


糞餓鬼(クソガキ)君は何故この国へ来て、何故サンライトセブンに入りたがるのか? 他の国だって悪い所じゃないし、サンライトセブンのような精鋭メンバーも存在している。そうだろう?」

「ああ」

「だが、君はこの国へ来た」

「……ああ」


 ナッセは頷く。


「なぜだ?」

「サンライト王国とその人々が好きだからだよ! だから何度でも滅びの未来を止めてやる!!」


 ナッセの真っ直ぐな瞳。そして告げられた言葉に強い口調がこもる。

 リョーコは少し顔を曇らす。ナッセが口にした滅びの未来。それはこの先の未来を知っている事に他ならない。どういう方法で未来を見て来たか、気になるばかりだ。


「ごあーっはっはっはっは!!!」


 オウガの嘲るような大笑い。彼にとっては大法螺(おおぼら)と見下しているようだ。

 ナッセは目を細める。

 コンドリオンは「オウガさん、またケンカ吹っかけそう……」と不安そうに言う。


白々(しらじら)しい綺麗事じゃあ心に響かんね!! では特別に力を試してやろう! 是非俺様と手合わせ願おうかいっ!?」

「ああ、受けて立つ」




 場所を変えて、訓練場。比較的広くて周りを石壁で囲んだ頑丈な作りの広場。所々木々が立ち、茂みもあり、身を隠す戦いも出来そうなフィールドだ。

 リョーコ、コンドリオン、ドラゴリラ、アクトが居合わせる最中、オウガとナッセは中心部で対峙していた。

 真剣な表情のナッセを見下しているオウガは笑む。


「まさかテロ容疑者を、この手で尋問できるとは嬉しいぜっ!」


 獲物を前にしたかのように冷徹に笑むオウガに、リョーコはジト目で「あ~、お手合わせという名の拷問ね」と呆れる。


「ごおおおおおおおッ!!! 最強のバァァァ二ィィィング・ソォォォォォルだぁぁぁぁッ!!!」


 オウガは全身から火炎のオーラを放ち、対するナッセは杖を向けて身構える。

 地を蹴ってオウガは両手のナイフで斬りかかる。

 それをかわしつつ懐に入ったナッセは杖を振るう。


「(不殺版(ノーキル)爆裂弾(バーストボム)!」


 オウガは懐に爆撃を受け、マトモに吹き飛ばされて地面を転がった。

 予想だにしなかったオウガはよろめきながら立ち上がり、口から血をこぼし睨みつける。


「ごっはッ! ぐっ……! こ、この糞餓鬼(クソガキ)がぁ……!」


 リョーコは「最強……?」と怪訝そうだ。

 ナッセは汗を垂らす。オウガは言うほど強くはないが、面倒なスキルがある。


「気絶させたかったが……やはり戦闘中による“失神耐性”パッシブスキルは健在か」


 つまり、オウガは戦闘中では死ぬ以外に意識を失う事はない。

 失神するレベルの激痛だろうが、眠りの状態異常だろうが、意識を奪う幻術だろうが、平然とクリアな意識のままで戦えるのだ。

 そうじゃなかったら最初の一撃で終わってた。


「ふふふ! これが熱血漢の根性っ! それこそ最強たる所以(ゆえん)だっ!!」


 オウガは不敵な笑みを浮かべて回復ポーションを飲んで全快した。


「……やりにくいな。なら仕方ない」


 コイツいなくてもいいんじゃないかって薄々思う。後々足引っ張るし。

 オウガは再び炎のオーラを噴き上げて「死ね! 糞餓鬼(クソガキ)!」とナッセへ突進する。その時、覚悟を決めたナッセの眼光が殺意を孕む。コオオ……!

 それを見たドラゴリラはゾクッとする。


「待なはれっ! タルパ秘術『ドンイの防壁』!!」


 ナッセの前の地面から異国の城壁がせり上がってきたぞ。

 思わずオウガは足を止め、ドラゴリラへ振り向いた。


「親友、なぜ邪魔をっ!?」

「……止めへんやったら、オウガは殺されとったで」

「なにっ!?」


 ナッセは見開いて「ドラゴリラ……?」と驚く。

 オウガは信じられず「糞餓鬼(クソガキ)ごときに殺されるか!」と叫ぶ。

 するとフクダリウスが「止めたのは正解だ。そうしなければオウガは確実に殺されていた」と神妙に告げて、オウガは激昂して「てめぇ!!」と声を張り上げた。

 するとドラゴリラが歩んできて、ナッセの肩に手を置いて片目ウィンクする。


「オウガは頑として話を聞かへん。のうて、これ以上は無駄や。それにコンドリオンの件で恩があるんやからワイに任せておきなはれ」


 更に歩んでいって、怒りで興奮しているオウガへと向き直る。

 ため息をついてナッセは「分かった」と引いて、リョーコたちへ戻っていく。

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