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13話「今度はゴリラに変態する男!?」

挿絵(By みてみん)


 ──サンライト城。

 赤いレンガで構成された頑丈な城壁。太陽を模したマークの旗。聳え立つその王国の中枢。


「僕が通しましょう」


 コンドリオンは門番の兵士と話をつけて、同行者の入城を許可してもらう。

 かたじけない、とナッセは会釈する。

 内部は立派な造りだ。真っ直ぐ進むと王室へ向かう階段がある大広場が見えてきた。そこではいくつか部屋や通路へ分かれている。


「ね、ねぇ。いいの?」


 重い空気を感じたのかリョーコは落ち着かないようだ。アクトは相変わらずの堂々とした感じで周りを見渡す。


「次はドラゴリラに会って説得する」

「でも……。明日でだっていいんじゃない?」

「いや、今日でなければならないんだ。でも大丈夫」


 ナッセは微笑んでリョーコを宥める。だがリョーコはナッセが何か遠くを見透かしたような目をしているのが気になった。


「もしかして……今日の午後三時にドラゴリラさんがドンイ王国へ出発する事を知っているんですか?」


 コンドリオンは気になってナッセへ振り向いて問う。騒然とするリョーコ達。アクトはしかめっ面する。


「勘だよ。チャンスはここしかないって思って」

「そ、そうなんですか?」


 コンドリオンも戸惑い気味だ。リョーコはナッセの先回りが正確すぎて気になるばかりだ。まるで未来を知っているかのように思わせられる。当のナッセはいつものより真剣な表情をしていた。


 ここでドラゴリラを止めなければ、後にドンイ王国は帝国に攻め込まれる。

 サンライトセブンの一人であるオウガも加勢するが、結局全滅させられる。

 これは三回前の前世で起きたことだ。二回前の前世も、制止したが聞かずに行かれたため結果は同じになった。そして一回前の前世は自分も加勢する事で全滅は防げたが、代償は安くなかった。


「……なんとしてでも止める!」


 誰もが聞き逃す小さな呟き。

 リョーコはそれを聞き逃さなかった。彼の決死とも言える意気込みが感じられる口調。

 詳しくは知り得ないけど誰かが死ぬ未来があるのかもと察した。

 リョーコは息を飲む。ナッセに本当の事を聞き出さなくちゃ、と半分憤りの気持ちでそう決意した。


 ある一つの個室のドアが開けられる。


「な、なんやっ!?」


 不意の訪問者に、部屋で椅子に座っていた一人の男は驚く。

 コンドリオンとフクダリウスの姿を見るや否や「故郷へ帰ったんじゃあらへんっ!?」と声をあげた。


「ご、ゴリラぁ!?」


 リョーコは声をあげた。

 というのも、目の前に本物のゴリラがいたからだ。

 体格は大柄で、短く太い両足、それに相対して長く見える両腕は太い。腹が出っ張っているがデブとはまた違う。

 がっしりとした筋肉質で、かなり毛深い。言うなれば服を着たゴリラだ。

挿絵(By みてみん)

「彼もサンライトセブンの一人、ドラゴリラだ。れきっとした人間だが今はゴリラに変態している。そしてドンイ王国をタルパで具現化している張本人でもある」

「なんやねんっ!? なんで初対面のお前がワイを知ってるんやっ!!?」


 キリッと紹介するナッセに、ドラゴリラは驚きの声を上げた。

 その相変わらずな性格にナッセは内心懐かしむ。


「いきなりの訪問で悪い。だがドンイお──」

「てめぇがドラゴリラかァ!?」


 なんとアクトがズンズン歩み寄って食って掛かる。それにビビったドラゴリラは「ゴッホゴッホ」と吠えながら自分の胸を両手で交互に叩き始めた。


「威嚇してんのかァ? 上等だァ!!」

「ま、待ってくれ!」


 いきり立ったアクトの前に、ナッセは立ち塞がって止める。

 コンドリオンもそれに続いて止めに入る。



「……あれは威嚇ではない。ドラミングと言って、和解を訴える行動なんだ。見た目が強そうだから誤解を受けやすいが、攻撃性は皆無だ。ただ普通に強くもないが」

「ドラミングするゴリラだから、ドラゴリラって事っ!?」


 リョーコのツッコミに、ナッセは頷き「そうだよ」と応える。

 アクトも落ち着いたのか、身を引く。ったく紛らわしいぜ、と呟いていた。


 未だポコポコと両手で胸を叩き続けるドラゴリラ。必死にドラミングに精を出しているようである。


「こ、こんなのがサンライトセブンなんだ!?」


 リョーコは呆れ返っている。


「何らかのストレスを受けると、それを和らげる為にドラミングするんだ」

「ンな事、どーでもいいわよっ! つーかメガネとか仮面巨漢とか象とかゴリラとか変態多すぎ!」


 キリッと説明するナッセに、リョーコは頭に怒りマークを付けて怒鳴る。

 フクダリウスは汗をたらして「ワシも含めるのか……」となにげにショック。

 それはそうと、ナッセはドラゴリラへ向き直る。




 かくかくじかじかで話した。


「そうなんや……。もうバレとったかいな」


 椅子に座しているドラゴリラは観念してうな垂れた。

 ナッセと出会って一悶着起きた一部始終をコンドリオンから聞いたのだ。今はゴリラの体躯ではなく優男バージョンだ。

あとがき


 変態は実は生物学的な意味としても通じます。

 体の構造が前とまるっきり変わってしまう事を『変態』って言うんですよね。


 昆虫でよく語られますが『完全変態』と『不完全変態』がそうです。

 完全変態は幼虫からサナギの過程を経て成虫へと変わる事。蝶々とかカブトムシとか。

 不完全変態は幼虫から成虫に変わる事。セミとかバッタとか。


 コンドリオンとドラゴリラは『自由変態(造語)』ですね。

 前の姿から変われるし、戻れる。まるで変身系スキルのように……。


 ノーヴェンとフクダリウスは…………。

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