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10話「恐るべきフクダリウス闘将!」

挿絵(By みてみん)


 魔法協会から出て路地を歩いていると、ナッセが足を止めた。


「この時刻なら……、来た!」


 ナッセの動く視線を追うと、時計塔の交差点に二人の男がいた。

 アクトと同じく肌が濃く、しかし相対的に小柄細身で綺麗な礼服のようなのを身に包んでいる。馬の代わりに何故か象にまたがっている。まるで異国の王子様だ。取り巻いている人々に向かって手を振っている。

挿絵(By みてみん)

「……あれがドンイ王国のもう一人の生き残りである()王子コンドリオン。彼もサンライトセブンだよ」

「なっ!? 何で他国の人間がサンライトセブンに!? しかも王族なのにっ!」

「だから話せば長くなる。それより、もう一人は王子の付き人を務めているサンライトセブンの一人がドンイ闘将フクダリウスだよ」

「ええっ!!? 二人ともサンライトセブンっ!?」


 大仰に驚いてリアクションするリョーコ。

 無理もない。サンライトセブンの二人が同時に来たのだ。リョーコは交互に見比べて戸惑いまくっている。


「あぁ……、マジかァ……」


 今までハイテンションだったアクトは何故か落ち着いて呆れ返っている。あんまり興味持ってなさそうだ。

 それでも二人を静かに見据えているナッセ。


「それはそうと……今のドンイ王国がドラゴリラの作り出したタルパだって事を、早めにコンドリオン王子に教えねば……」

「タルパでドンイ王国を具現化だなんて、訳わかんないっ!!」


 理解が追いつかないリョーコは頭を抱えたままブンブン振り回した。

 アクトとの戦いの後、ナッセはリョーコにもタルパの事は説明していた。タルパとは、思い入れのあるモノを現実に存在しているかのように思い込み、それを極めると現実で他人にも見えるようになるという妄想生成の奥義だ。


「貴様! 何故、ドンイ王国がタルパだと分かった!?」


 聞こえていたのか、憤怒のフクダリウスがドスンドスンと足を踏み鳴らしてやってくる。背負っていた巨大すぎる斧を手に、殺気立っている。メガネの奥が見えないのが余計不気味だ。

 リョーコは唖然とする。ナッセの言ってた事がガチだったのだろうが、それでも中々信じられない。

 しかもコンドリオン王子も汗を垂らして呆然としている。


「ドラゴリラとグルでドンイ王国をタルパで再現しても、やはり騙すには限界はある」

「ぬう……」


 ナッセに指摘され、歯軋りして唸るフクダリウス。

 コンドリオンは「タルパ? ど、どう言う事ですか?」と戸惑っている様子。

 リョーコは、彼がタルパを知らず、そして今のドンイ王国がタルパで生み出された虚構だとも思ってない事を察した。


「どうせ遅かれ早かれバレる。コンドリオンにも隠し通すことはもう無理だ。素直に事情を話してやってくれないか?」

「だ、黙れ!! 小僧がッッ!!!」


 理解が追いつかない周囲の人間を差し置いて、フクダリウスは激高し声を荒げた。周囲に旋風が吹き荒れ、重い威圧が辺りを席巻する。

 何も知らない人々は震え上がり、腰を抜かしていく。

 リョーコは青ざめて腰が引く。


「引いててくれ!」


 振り向かず、ナッセはそう言い放つ。リョーコは頷き離れる。


「俺もいるから心配いらねェ。安心してやり合いな」

「すまん。かたじけない」


 アクトの頼もしい言葉に、ナッセは快く笑んで頷く。

 そしてフクダリウスへと対峙し合う。鋭い視線を見せるナッセ。

 大物感を漂わせ、不敵に笑むフクダリウスはメガネを外して、赤い仮面をかぶる。メイプルリーフみたいな形状の仮面だ。

挿絵(By みてみん)

「なに……こいつ……!? ただならぬオーラが出てるわ!」

「闘将フクダリウス……。サンライトセブンの中でも群を抜いたパワーとタフネスを持つアタッカー。たぶん一番強い」


 ナッセの説明も手伝ってかリョーコは威圧におののく。


「ドンイ王国の秘密をどこで知ったか分からんが、侵略者なら容赦せんっ!!」


 フクダリウスは空へ振り上げた斧に、オーラを集中させて発光させていく。凝縮された威力がヒシヒシと伝わる。

 その影響か、周囲に激しい旋風が渦巻く。岩や葉っぱなどが旋風に乗って舞う。ゴゴゴ、と地鳴りと共に凄まじい威圧が膨れ上がっていく。

 ナッセはビリビリ肌に響いてくる威圧に恐れを抱く。だが、逃げたら男じゃない。


「闘将フクダリウス! いざ尋常に勝負だ!!」


 杖で構えるナッセ。眼光に宿る燃え上がる闘志を昂ぶらせてフクダリウスを睨み据える。


「面白い小僧だな! だがワシは容赦せぬぞっ!!」


 なんとフクダリウスの筋肉が膨れ上がって服を破り巨人かと錯覚させてくる。

 爆発するように凄まじいオーラが吹き荒れ、地面も大気も振動で震え上がり、駆け抜ける烈風は更に激しさを増し、木々を揺らして建物すら軋む。舞う石と葉っぱ。

 フクダリウスが地を蹴ると、その速さにナッセは強張った。


「ぬおおおおッ!!」


 巨大な戦斧が振り下ろされると、土砂を巻き上げて深々とクレーターに抉った。

 大きく広がるクレーターに誰もが「うわあああああああッ!!」と恐怖するほど。


 しかしナッセは後ろへ引いてかわしていて、フクダリウスは怪訝に目を細めた。


「む! やはり、ただの小僧ではないな!」

「こっちも行くぞ!!」

「来いッ!!」


 ナッセは光の剣を正眼に構えながら真剣な眼光を見せ、反撃とばかりに高速で駆け出す。

 その際に、フクダリウスにとってナッセの背後が星々きらめく宇宙に錯覚させられ、光の剣による剣戟が流星となって幾重と流れ出す。


星幽剣(アスラール・セイバー)!! 流星進撃(メテオラン)ッ!!」


 まるで無数降り注ぐ流星の魔法を放ったかのように剣戟とは思えない衝撃音とともに炸裂して、大柄なフクダリウスすら吹っ飛んで向こうの分厚い城壁へ激突させた。

 破片を散らし、煙幕が噴き出す。


「す……すご…………!」


 リョーコはポカンとする。アクトはニッと笑う。

 城壁の瓦礫を押しのけて、平然と立ち上がるフクダリウス。ブンブン頭を振る。そしてニヤリと笑む。


「それを食らっても多少のダメージかァ。あの闘将やるなァ……」

あとがき


アクト「それ、違う作品のナッセの大技『流星進撃(メテオラン)』再現だなァ……」

ナッセ「以前のフクダリウス登場と初アクションがカッコ悪いのでリメイクして、こんな展開にしたぞ」

リョーコ「最初ね、いきり立ってオーラ出すけど植木鉢が落ちてきて気絶するというシーンだったみたい」

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