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黙示録  作者: 山本正純
第四章 12月28日
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制裁

 2012年12月28日午前11時20分。東京都警察病院の湯里文が入院している病室で沖矢は疑問を口にした。

「ところでなぜ湯里さんを殺そうとしたのだよ」

「青空運航会社の人為的事故と特急ブルースカイ号爆破事件。あの日までこの事件は同一だと思っていました。湯里文が長年逮捕を免れた宇津木死刑囚の共犯者です。そのことを知ったのは昨日。匿名希望のタレこみが入ってきたからだった。そのメールには『湯里文が7年前の特急ブルースカイ号爆破事件の共犯者。証拠は指紋』と書かれていた。そのことを偶然駅で会った湯里文本人に直撃したら自白しましたよ。それで我を忘れた僕は東京駅で湯里さんと2人で降りて駅のホームで刺殺しました。だが彼はこうして今も生きている。それがどうしても許せなかった。今晩中にも宇津木死刑囚は死亡する。だったら共犯者も一緒に死んでも構わない。仲良くあの世に送ってやるよ」


 朝霧睦月はナイフを取り出し湯里文の体を刺そうとする。その朝霧の腕を大野は掴んだ。

「もういいでしょう。これ以上あなたが殺人を犯す必要はありません。湯里文さんが本当に共犯者だとしたら、警察としてその証拠を突き止めた後で裁判をするべきですよ。青空運航会社の人為的事故に関しての証拠はなかったかもしれませんが、あなたの復讐は終わっています。この復讐を止めようとした常盤ハヅキを殺した時点でね」


 朝霧睦月はナイフを落とした。彼の殺意は消えた。彼の心に住んでいた復讐の鬼は完全に死亡した。

 

 年末に発生した連続猟奇殺人事件が解決した頃、地獄の商人シノとウリエルは東京都警察病院の庭を歩いていた。彼らの侵入はウリエルのスタンガンを使用して邪魔な人間を同時に気絶させることで容易となった。

「やっぱり君を相棒にしてよかったよ」

「そうですか。ところで、どうやってあの猟奇殺人犯さんを殺すのですか。それも外から」

「大丈夫。任せてください」


 地獄の商人シノは立ち止まり、大鎌を取り出す。

「そろそろかな」

 軽く1メートルを超える垂直跳びを披露したシノ。それはとても人間業とは思えない。シノは空中で大釜を一振りする。

 

 丁度その頃大野たちは朝霧を連行するために湯里文の病室を出て行った。手錠をかけられた朝霧睦月が湯里文の病室を一歩出た時だった。突然防弾ガラスが割れて無数のガラス片が朝霧の背中に刺さったのは。

 

 朝霧はそのまま倒れこんだ。大野たちは何が起きたのか分からなかった。大野はとっさに沖矢に医者を呼ぶよう指示する。その後で大野は朝霧の体を揺さぶる。

「しっかりしてください。今沖矢が医者を呼んできます」

 朝霧睦月は全てを悟った。知らなくてもいい暗部という世界を知ったから、殺されたと。

「暗部」

 朝霧は最後の力を振り絞り呟くと、永遠の眠りについた。


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