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黙示録  作者: 山本正純
第四章 12月28日
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堕天使 7

 午後9時朝霧睦月は水無信彦の自宅の駐車場に車を停めた。彼は偽刑事らしく、スーツを着こんでいる。その駐車場に水無信彦が現れた。

「水無さんですね。警視庁の水口巧です。それでは個別の事情聴取のため、送迎をさせていただきます」

 朝霧は低い声で水無に話しかけた。

「本当に水口巧本人ですか。何か電話の時と声が違うような気がしますが」

「電話の声と実際に会った時の声が変わって聞こえるのは当たり前のことですよ。CDに録音した歌と実際にライブに行って聞いた歌は別物に聞こえるでしょう」


 水口巧と名乗る偽刑事の解説に水無が納得した。

「そういうものですよね。早速警視庁に送ってもらいます」

「了解です」

 水口巧と名乗る偽刑事は車のドアを開けた。

水無信彦は後部座席に乗り込む。水口巧が運転席に座ると、車は走り出した。


 それから30分後、車内は不穏な空気に包まれた。警視庁へは中々到着しない。車は廃ビルが立ち並ぶエリアに侵入していく。

「水口さん。あなたとはどこかで会ったような気がするのですよ」

 朝霧は頬を緩ませた。

「7年前の特急ブルースカイ号爆破事件。覚えていますよね。あの事件であなたの息子水無元太は死亡した。あなたは僕と同じ被害者遺族だった。それと同時にあなたはあの事件の被疑者でもあった。そうでしょう。水無信彦さん」

「何のことですか。あの事件は宇津木死刑囚と共犯者が引き起こした事件でしょう」

「いいえ。昨日殺害した如月武蔵が話してくれましたよ。あなたもあの事件に関わったって」


 車は廃ビルの前で停まった。

「まさかあなたは・・」

「そうですよ。僕は相模長重さんと如月武蔵さんを殺害した猟奇殺人犯です。あなたは第四の被害者になってもらいます」


 朝霧はロープを取り出し、水無の首にかけた。水無の目に血によって塗りつぶされた赤い床が映った。

「まさかここで相模たちを殺したのか」

「相模さんはここで殺しました。如月さんは別の場所で殺した後、ここに運んで切断しようと考えていましたが、常盤ハヅキに邪魔されて、ここに遺体を運び込むことを断念しました。つまりこの床を赤く塗りつぶしているのは、相模さんの血です」

「朝霧睦月。止めなさい。水無元太の父親の言うことが聞けないのか」

「大丈夫です。切断するのは一か所にしますから」


 朝霧は水無の首に巻いているロープを強く引っ張った。水無の首は徐々に閉まっていく。

「助けてくれ。頼む」

「水無元太君の父親だからといって、殺さない理由にはならないのですよ」

 朝霧は水無の頼みも聞き入れず、ロープを思い切り引っ張る。こうして水無の息は止まった。


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