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黙示録  作者: 山本正純
第三章 12月27日
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密会 前編

 午後8時。ウリエルは東都フレンドホテルにいた。このホテルは半年前に廃業したラブホテルだ。

 廃業から半年も経過しているのに、アダルトな空気がホテル内を流れている。

「こんな廃ビルで密会しなくてもいいのに」

 流れている空気が一変した。殺気に満ちている空気。ウリエルは身震いする。

 

 そんなウリエルの前を風が通り過ぎた。風は壁にぶつかる。その瞬間、壁が壊れるような大きな音がホテル内に響き渡る。

「テストはもういいでしょう。シノ」

 

 地獄の商人シノは拍手をしながら客室の中から現れた。シノの服装は相変わらずフード付きの黒いローブ姿だ。

「凄いね。普通の人間だったら風が通り過ぎた所で死んでいたよ」

「ご存じかもしれないけど、退屈な天使たちって、コードネームを与えられると、特殊な暗殺術をマスターするよう指示されることが多いのですよ。こういう暗部の武力抗争に巻き込まれても死なないようにね」

「なるほど。じゃあレミエルレベルの暗殺者と戦うことになっても負けないのかな」

「情報なしでは無理ですね。相手の武器。ライフルを撃つ時の癖。相手の身体的特徴。相手の弱点。最低でもこれくらいのことが分からないと確実に負けるでしょう」

「つまり君はデータ重視の戦術で暗殺をするということかな」

「あくまでレミエルと互角で戦うことができる暗殺者が相手の場合のみです。それ以下のスナイパーなら、電流で銃弾の軌道をずらすことも可能だから負けない。ハンドガンを使ってきても、四方から飛んでくる銃弾を避けることができるほどの動体視力があるから、被弾することはない。守りに関してなら組織最強を自負しているから」

「似たもの通しか。実はわたしも君と同じ芸当ができるんだよ。違いは三つ。一つは相手がスナイパーだろうが誰だろうが戦術が同じこと。二つはあなたの武器がスタンガンなのに対して、わたしの武器は大鎌であるということ。三つはスタンガンとは違い、威力の下限が難しいこと。さっき後ろの壁、壊したよね。あれがわたしの得意技だよ。簡単な言葉で説明するとカマイタチかな」


 カマイタチ。空気が作る刃。それがシノの暗殺術。ウリエルは初めてその技を間近で見た。

「質問いいですか。何パーセントの実力を出したらあの壁を破壊できたのですか」

「一番弱い威力。いや半分くらいの実力だったかな。あれは威力の下限が難しいんだよ。具体的には分からないけど、本気は出してない」

「もう一つ聞いてもいいですか。一度にいくつのカマイタチを作ることができるのですか」

「最高で20個くらいかな。壁にぶち当たるまでカマイタチの威力は落ちないから、大量に殺すことはできるよ。壁にぶち当たった時の破壊音や破壊された時に生じた瓦礫だけでも殺すことはできる」

「今殺すといいましたよね。それだったら似たもの通しではありませんよ。私は守りを重視している。一方あなたは攻撃を重視している。似たもの通しというには矛盾していますよね」

「それもそうだね」

「シノの似たもの通しはハニエルですよ」


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