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黙示録  作者: 山本正純
第三章 12月27日
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伝言ゲーム

 平和なテロ組織が論争をしている頃霜月城助は一通の手紙を右手に持ち警視庁の前に立っていた。

 刑事は挙動不審な彼に職務質問する。

「霜月城助さんですね。ここで何をしているのでしょうか」

「水無信彦さんから送られてきた手紙を警察に提出しようと思っただけだ。水無さんが死亡したら警察に提出しろと言われていたからな」

「それは妙です。まだ水無さんが殺害されたことはマスコミには伏せているはずですが」

「お前ら警察が知らせただろう。水口巧という刑事から今朝自宅の電話に電話がかかってきたんだ。水無信彦さんが殺害されたので、また担当の刑事が聞き込みにやってきますって」


 霜月城助は重要参考人。任意で事情聴取を持ち込む必要があると判断した刑事は小さく頷く。

「分かりました。それでは取調室に連行します」

 

 驚きで霜月は声がでなかった。こうして霜月城助は警視庁第一取調室に連行された。


 伝言ゲームのように情報は間違った方向に伝わっていく。最初は『霜月が警視庁前で挙動不審な態度を取っていたため職務質問をした」だった。だがどこかで『霜月が自首した』という情報に改ざんされてしまった。本当は『霜月が重要な証拠を持ってきた』という情報。つまり最初から警察の情報は間違っている。情報の改ざんについては誰も触れない。それが伝言ゲームというものだから。

 情報は『霜月が自首した』という間違った情報のまま千間刑事部長たちに伝わった。


 千間刑事部長と喜田参事官は警視庁の廊下を歩いている。彼らの行先は霜月の取り調べが行われている第一取調室。

「本当か。霜月が自首してきたというのは」

「そのようです」


 その頃警視庁第一取調室では木原と神津が霜月城助の取り調べを行っていた。

「それでなぜ自首しようと思った」

「だから自首するなんて一度も言っていないだろう。お前ら警察の勘違いだ。俺はただ水無信彦さんから預かっていた手紙を警察に提出しようと思っただけだ」

「警察はあなたが犯人ではないかと疑っています。今回の勘違いの背景はそこにあるのでしょう。警察官代表として謝罪します。それではなぜあなたが水無信彦さんの手紙を持っているのか。その経緯を説明してくれますか」

「昨日の夜8時、俺の自宅へ水無さんが訪ねてきたんだ。明日自分が生きていなかったらこの手紙を警察に提出してくれって。理由は聞けなかった。ただ分かったのは誰かに会いに行く前ではないかと思ったこと。水無さんは珍しく赤いネクタイをしていましたから。水無さんが赤いネクタイをするときは大切な人に会いに行く時だけということを俺は知っていた。後はここに俺を連行した刑事に話した通り。水口巧という刑事が『水無信彦が殺害された』って報告してきて、これは水無さんの遺言ではないかと思って警視庁前に行った」

「それではその手紙をお預かりします」


 霜月城助は木原に手紙を渡した。その時2人の刑事が第一取調室に入室した。

「何だ。お前らは。取り調べの最中だ」

「これが取り調べですか。笑わせないでください。あなたたちの取り調べは時間の無駄。すぐに取調室を退室してください。ここからは僕たちが霜月さんの取り調べを行いますから」


 木原たちは無理やり取調室から追い出された。取調室のドアの前には千間刑事部長と喜田参事官が立っている。

「どうして取り調べを別の刑事にやらせた」

「邪魔だからだ。お前ら捜査一課3係の捜査が。だから話の分かる刑事に取り調べを行うよう指示した。ただそれだけだ」

「邪魔だと。俺たちの捜査が邪魔だというのか」

 神津は千間に殴りかかろうとする。だが木原はそれを静止させる。

「止めなさい」

 神津と木原は捜査一課3係に戻るために歩き出す。

「大丈夫です。真実は必ず明らかになります。警視庁上層部の隠蔽工作を破ればいいだけの話ではありませんか。それに一つ気になることも聞けました」

「ああ。赤いネクタイの話か」


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