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黙示録  作者: 山本正純
第二章 12月26日
28/69

テレビ局にて

 午後1時大野と沖矢はテレビ夕日本社にいた。朝霧睦月が所属する出版社に問い合わせた所朝霧は午前11時から2時間、テレビ局で取材をしているという情報を得た。

 

 そろそろ朝霧の取材が終わってもおかしくない時間帯のため、大野たちはテレビ局のホールで朝霧が現れるのを待っている。

 すると黒いスーツ姿の朝霧が歩いてきた。

「すみません。警視庁の大野です。少しよろしいですか」

 大野と沖矢は朝霧に警察手帳を見せた。大野の顔を見て朝霧は思い出す。

「確か東京都警察病院で会いましたよね。僕に何か用ですか」

「単刀直入に聞きます。なぜあなたは昨日の午後5時40分ごろ相模弥生さんの自宅を訪問したのでしょう。あなたと相模弥生さんは面識がない。ということは相模長重さんのことで訪問したのではないですか」

「相模さんとは取材で知り合いました。僕は宇津木死刑囚の手記と並行して特急ブルースカイ号爆破事件の真相を追ったルポも書くことになっているんです。この二つのルポを同時発売しようと編集部は考えています。不謹慎かもしれませんが、相模さんが殺されたことで来年2月に発売される本の売り上げが伸びます。宇津木死刑囚が危篤だから手記を発売しようという編集部も、その依頼を受けた僕も不謹慎ですが」

「そのルポの原稿を見ることはできますか」

「それだけは見せることはできません。取材の応じてくれた被害者遺族や青空運航会社関係者の許可が必要ですから。警察に原稿を渡して外部に流出したら困ります。そこまでして読みたいなら2月上旬に書店に並ぶと思いますから、そこまで待ってください」

「つまりそのルポの内容を知っているのはあなたと編集部だけということなのだね」

「はい。編集部の数人しか知りません」

「それでは昨日の午後4時20分から午後5時40分までの間どこで何をやっていたのだよ」

「午後4時から一時間東都ホテルで北白川カンナと会っていました。正確には午後4時40分から5分間ほどトイレに行きました。それから解散してすぐに相模さんの自宅に車で移動しました」

「つまりあなたには午後5時から40分間のアリバイがないということなのだね」

 

 大野は朝霧の声から北白川カンナという名前が出て驚いている。

「因みに北白川カンナさんとはどのような関係なのですか」

「北白川カンナとは被害者遺族の会で知り合いました。彼女の友達も特急ブルースカイ号爆破事件の被害者なんですよ。僕があの事件で失った恋人と同年代の被害者を彼女たちは失ったと聞いて意気投合しました」

 

 朝霧の声を聞き大野は素朴な疑問を口にする。

「でもよくそんなルポが書けますよね。取材を続けるほどあの事件のことを思いだして悲しくなったことはないのですか。僕があなたの立場なら依頼を断っていますよ」

「時には書きたくもないルポを書かされる。それがルポライターの仕事です。一々そんなことで悲しんでいたら仕事ができません。刑事事件関連のルポを書くときは、失った恋人のことを忘れることにしていますから。その代り取材が終わって自宅で号泣していますが」

 朝霧はそう伝えるとテレビ局の玄関に向かった。彼の後ろ姿を大野と沖矢は見つめながらひそひそ話をする。

「調べる価値がありそうです。7年前の特急ブルースカイ号爆破事件で死亡した朝霧さんの恋人についてを」

「その前にアリバイの裏付け捜査の方が先なのだよ」


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