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黙示録  作者: 山本正純
第二章 12月26日
23/69

驚かない容疑者

 その頃木原と神津は輸入会社カシオペアで社長の霜月城助に会っていた。

「昨夜この会社に勤務する事務員常盤ハヅキさんと、あなたの元上司で青空運航会社の元社長の如月武蔵さんが殺害されました」

「本当ですか」


 霜月は全く驚いていない。その態度に神津は不信感を覚えた。

「なぜ驚かない」

「如月さんは命を狙われていると聞いたからな。具体的に誰が何の目的で狙っているのかは知らないが如月さんはそのことで2年前から湯里さんの所でカウンセリングを受けているそうです。常盤ハヅキと北白川カンナは交際に関してトラブルがあったそうです。まあ僕には如月さんと常盤ハヅキを殺害する動機がありませんから」

「それは間違いです。ここに来る前に社員に聞きこみをさせてもらいました。そしたら、常盤ハヅキさんが横領しているのではないかという疑惑を知りました。その横領事件絡みで動機があるのではないですか。そして如月さんと相模さんは前の会社の復讐のために殺害した。違いますか」

 

 木原の推理を聞き霜月は大笑いする。

「確かに常盤ハヅキは横領疑惑がある。それが事実だったら解雇すればいいだけの話。何も殺す必要はないだろう。動機があるのは水無信彦さんだ。7年前如月は彼の息子を見殺しにしたんだからな」

「それはどういうことだ」

「7年前の特急ブルースカイ号爆破事件で水無さんの息子水無元太は爆発に巻き込まれて死亡した」

「つまり水無さんも被害者遺族だったということですか」

「そうだな。常盤ハヅキと水無元太は高校の同級生だから、仲間割れで殺害されたと考えたら納得できるでしょう」

「因みに常盤ハヅキと水無元太はどこの高校に通っていたんだ」

「東都商業高校だったな」

「昨日の午後4時20分から午後5時40分までの間どこで何をしていた」

「社長室に籠って書類の整理をしていた。証人はいない」

「つまりあなたには第二第三の事件当時アリバイがないということですか」

「そうです。もういいでしょう。これ以上お前らのくだらない捜査に付き合うほど僕は暇ではありませんから」

 

 人払いをしようとする霜月に対して木原は一つの質問をぶつける。

「そういえばなぜあなたは常盤ハヅキさんのことを常盤ハヅキと呼び捨てにするのでしょうか。もしかして特別な関係なのですか」

「それが何か事件と関係があるのですか」

「いいえ。ただの個人的な興味です」

「それなら答える必要はない。早く帰ってくれ」

 

 霜月は慌てたような表情をしていた。霜月城助と常盤ハヅキの間には何かあると思いながら木原たちは社長室を後にした。

「木原です。霜月にはアリバイがありませんでした。それと面白いことが分かりました」

 木原は輸入会社カシオペアの駐車場で合田に電話をしている。

「水無信彦。北白川カンナ。桐嶋師走。この3人にも動機があります。水無信彦の息子水無元太は北白川、桐嶋と同じ東都商業高校出身。さらに常盤ハヅキも同じ高校の出身でした。もう動機は分かりますよね」

『水無元太を見捨てた青空運航会社への復讐か。それが動機の可能性が高いな。桐嶋師走はお前らに任せるから、北白川と水無は任せろ』

「分かりました。一度警視庁に戻り裏付け捜査をしてから桐嶋の自宅に向かいます」

 

 木原は電話を切り、神津が運転する車に乗り込んだ。

「一度警視庁に戻ります。特急ブルースカイ号爆破事件の被害者に水無元太という人物がいないかを確認。その後東都商業高校に行き、あの4人が本当に高校に通っていたのかを裏付け捜査します」

「了解」

 神津は車を走らせた。最初の行先は警視庁。彼らの裏付け捜査はこれから始まる。


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