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服役勇者

 感想で頂いた物をサブタイトルにしてみました。


 もう最近は、息抜きの作品にばかり想像が膨らんでしまします。

 越前クラゲを討伐し、久しぶりに我が家に帰ったら浦島太郎の気分にさせられた。自分の家を6年間も空けてれば、多少の変化は覚悟している……が! 流石にこれは酷過ぎる!!!


『城塞都市レオン』


 誰だ! 誰が名も無き村に俺の名前を付けた!!! そう考えてみたが、候補者は身近に沢山いて絞り込めない。川の形を変えて、城塞都市に水路を作ったピンクの姫様(ピンクのアクマ)の書類や報告書と睨みあいながら難しい顔をしてみた。


「何かご不満な点でもありますか? 遠慮せずに仰って頂ければ……」


 その顔を内政に関しての不満だ、と思った嫁さんが……ピンク頭が訊ねてくる。内政に関して文句なんかねーよ! 俺の方が出来ないのに、文句を言える訳ないだろうが!!! 俺だってここが村の時から領主の真似事してたんだぞ……それがどうだ? 同じ期間でこれだけ差を見せ付けられたら……もう、お前が領主やれよ。てか、やって下さい!


 立派になった俺の仕事部屋で、豪華な椅子に深く座りなおして書類を机の上に置く。窓からは夕暮れのオレンジ色の光が差し込む中で、俺はこの後の事を考える事にした。


「仕事の事はお前に任せるよ。自由にしていい……ただ、この城塞都市の名前は変えろ!」


「あ、それは無理です。これは以前から、ここが村であった頃から『レオンの村』と呼ばれていて、その後の正式な会議でも満場一致で可決しましたから」


 即答で断られた。


「マジかよ!」


 そうして頭を抱えてしまった。全員が関与していたなんて……自分の名前が付いた都市があるなんて耐えられん! そうして悩みだすと、今度はリィーネが質問してきた。


「それでですねレオン様……いえ、旦那様! 今晩の事なのですが」


 リィーネが、今までの会話よりも声を張り上げて俺に近付く。またかよ!


「私も、もう21歳ですから何としても子供が欲しいのです。……父が大変気にしておりますし、折角『侯爵』の地位を得ても後継ぎがいないのでは……」


 昨日もその前もしたじゃん! ん? ……今、リィーネが変な事を言ったような……侯爵? 誰が?


「侯爵って誰がだよ? 俺は家を出てから一応貴族、みたいな感じだったけど……まさか流石に……」


 自分で言って予想は当たっている、と分かった。この状況なら、俺が侯爵と言う事だろう……何でだよ! こんな簡単に貴族の地位を安売りしていいのかよ!


「あの……これでも、私も一応はアステアの王族なんですけど? 流石に私とエリアーヌが居る状況では、それなりの地位が必要かと?」


 不思議そうに聞き返してくるリィーネ。忘れがちだが、俺の嫁さん達は高貴な血筋だったな。隣の歴史ある大国の姫様が一貴族に嫁ぐとか考えたくもないし、思い出したくもない!


「地位なんか最近は気にした事がなかったな……忙し過ぎて!」


 思い出すのは職人さんに殴られた事と、東方への出張だ。……6年は長すぎるだろ! そう思って、語尾に嫌味を込めたのに……嫁さんには通じなかった。


「流石です旦那様! これだけの事を成し遂げながら地位にこだわらないなんて……でも、貴族としては失格ですからね」


 重度の勘違い女には、俺の言葉は全て名言に聞こえるようだ。不便だよな……家族に意思疎通ができないなんてさ。






 仕事を切り上げて、変わり果てた領地を歩く俺……もうすぐ暗くなるという事もあり、自然と足が歓楽街を目指してしまう……男なら仕方ないよな!


 エリアーヌは、実家の状況と逃亡生活での疲れで寝込んでいるし、自分の城にいるとリィーネに襲われてしまう。最初の夜は、城中をリィーネ専属のメイド隊とオカマのスタイリストに追い掛け回された。逃げる理由もないが、追われたら逃げたくなるから逃げたんだ。


 結局は慣れない城内と、リュウと駄馬の裏切りにあって掴まって食われたけどな……あの連中には、もう期待しないと心に決めた瞬間だったよ。


 そんな日々が続くと流石に疲れるから、こうして城から抜け出した訳なんだが……この都市は賑わっているようだ。人も多いし、活気がある。それに店先で客を誘っているお姉さん達が綺麗だよ!!!


「あ、レオン様」


 鼻の下を伸ばして今日の店を探していたら、後ろから声がかかる。振り返ると、そこにはくたびれたローブに、疲れ切った顔をしたエンテの姿が……最近会ってなかったけど、なんだか老けたなこいつ。


「エンテ! 久しぶりだな……それよりも体調でも悪いのか?」


「ハハハァ……はぁ、最近皆に言われますよ」


 疲れたエンテを誘って近くの居酒屋に入る。お姉さんのいるお店は、エンテの強い拒絶で断念して普通の居酒屋に入る。酒とつまみを用意している間にこの6年の事をお互いに話し合った。ギルドの事、神殿の事、そしてこの城塞都市の事……話が盛り上がり、追加で注文をして話が切り替わった。


「エンテは結婚したんだろ? おめでとう!」


「……ありがとうございます」


 なんだかあまり喜んでいないエンテ。それ所か、溜息を吐いてコップに入っていた酒を一気に飲み干した。そしてもう一度溜息を吐く。


「こんな筈じゃなかったのに……聞いて頂けますかレオン様?」


「お、おう」


 なんだか断れる雰囲気でもないので、そのまま話を……愚痴を聞く事になった。それは付き合っていたレテーネさんが、結婚して子供が出来ると性格が変わったっという事だ。優しかったレテーネさんが、稼ぎの事や仕事の事に口を出し……凄く怖いと言う。


「休みの日に家で休んでいると怒るんですよ……僕はこれでもギルドの幹部で、稼ぎも多い方なのに……子供が沢山欲しいレテーネに従って、4人も養っていると流石に」


 子供を4人も抱えて、尚且つ教育熱心なレテーネさん……お金がかかると言うのだ。そのせいか家にいると働けと……何年も前にギルドメンバーの言っていた事が現実になるなんてな。


「レオン様は羨ましいですね。リィーネ様はお優しいですし……エリアーヌ様は可愛いし……」


「6年も別居している状態だからな……優しいのもそのせいだろう? しかし大変なんだなエンテも」


 その時の失言に気付いた時は手遅れで……


「『も』ですか? レオン様は結婚生活で苦労はしてませんよね? 僕なんか仕事は順調でも、家庭での扱いは悲惨ですよ! 何なんですかこの不公平感は!!! 僕だって浮気の一つくらいしてもいいと思いません? それを、いかがわしい店に行っただけでもオーガのように怒るんですよ!!!」


 抑圧された感情が爆発するエンテ。た、確かに酷いなレテーネさんは……遊びの1つや2つは見逃してもよさそうなのに……しかし、変われば変わるもんだ。あのお淑やかなレテーネさんが、教育ママで夫には厳しい嫁さんになるなんてさ。


「もう……人生をやり直したい」


 おいぃぃぃ!!! そんなに思い詰めていたのかよ!!!


「見つけましたよレオンさん!」


 エンテを慰めていると、居酒屋の扉を勢いよく開けてリュウと城の兵士達が流れ込んできた。こいつら俺を探してこんな所まで!


 座っていたテーブル席に、お金を置いて即座に居酒屋の窓から逃亡を図った。しかしそこにも裏切り者が控えている。……駄馬だ! この野郎……何でこいつまで俺の邪魔をするんだ!


『諦めろ! そして俺の幸せの為に、あの悪魔にお前を生贄にしてやる!』


「何時も思っていたけど……本当にお前らは最低だな!」


 駄馬とリュウに交互に視線を送ると、その言葉にリュウが答える。


「最低なのはアンタだろうが! 浮気したくて城から逃亡する領主なんて聞いた事ないぞ!」


 ……確かに少なそうだな。浮気するにしても領主なら自分の屋敷で囲っていそうだし、一夜限りでも屋敷に呼び出して……結構いると思うよそんな領主は!


「お前が知らないだけで、結構みんな遊んでんだよ! 俺にだってそれくらいの権利はある筈だろうが!!!」


『うるさいぞ、この屑勇者! お前も勇者なら魔王相手に人生の1つや2つ捧げろや!』


「ツックン、それだとリィーネさんが魔王だって言っているように聞こえるから、流石に不味いと思うな」


 リュウの言葉に駄馬が一瞬だけ震えた。……何かに怯えているようだ。


『ち、違うぞ! これは例えとして言ったんであってだ、ブギャァァァ!!!』


 言い争う駄馬とリュウを尻目に近付いてきた城の兵士達。それをかわして、窓の外で行く手を遮る駄馬を窓から飛び出ると同時にそのままドロップキックを……吹っ飛んだ駄馬を踏みつけて、俺はそのまま裏路地に逃げ込んだ。


 体をバネのように扱って、破壊力を増した俺の蹴りと踏みつけに苦しみもがく駄馬。


「に、逃げられた! ツックンの所為だからね!」


『こ、殺してやる! 本気で殺すからな!!!』


「だから捕まえないと不味いんだって! 本当にツックンが……され……」


 体の中の魔力を最大限に利用して走る俺に、二人の会話が急に聞こえなくなった。貴様らなんかに捕まる俺だと思うなよ! この前は油断したが、本気を出せば俺だって!


 そう考えていた時期がありました。本気を出しても負ける時は負ける。……俺程度の力量では、あのピンクには勝てないようだ。


「引っかかりましたねレオン様」


「さぁ、大人しく城にお戻りなさい」


 路地で挟まれるように前後を塞がれた俺。目の前にはメイド長のエリーサが、メイドを達を率いて道を塞いでいる。後ろにはスタイリストのオカマ騎士……そして、壁に囲まれた裏路地の狭い空からギルドメンバーが飛び降りてきた。


 ここがまだ村だった時から活躍していた古参のギルドメンバー達。三人は、王都のスラムから連れてきた偵察専門の凄腕だ。最近では戦闘もこなしているし、忍者みたいな連中だと思っていた。しかし、俺一人を探す事も可能だなんて……何故その力をあのピンクに使わせている!!!


「レオン様、お戻り下さい。後継ぎの問題は、私達にとっても重要なんです!」


「俺は一生レオン様に仕えますけど、そのレオン様の領地が他の関係ない人間に治められるのは……我慢できません!」


「……同意」


 お前らは、あのピンクに何て言い包められた! 話が見えてこないが、あのピンクが言葉巧みに三人を騙して操っているのだろう……油断できない奴め!


「「「さぁ、城にお戻り下さい!!!」」」


 全員に囲まれた俺は、肩を落として城に連行された。まるで犯人が、連行されている状況じゃないか! 俺が何をした? そして連行される後ろから、駄馬とリュウがグチグチと俺の事を馬鹿にしている。


『本当に捕まればいいんだよあの野郎は!』


 顔に足跡を付けた駄馬が、俺の事を見ながらそんな事を言っている。それに続いてリュウも……


「一度くらい牢屋に放り込んでもいいかもね」


 こ、こいつら……どこまで薄情なんだ。そして城の城門に近付くと、そこには着飾った騎士団の一団が武装して待機していた。その着ている装備などから神殿騎士だと分かる。異様な雰囲気で、城の前では言い争う声が聞こえてくる。


 城に集まる兵士達は、神殿騎士達と今にも殺し合いをしそうな雰囲気を出して、ギルドの幹部も危ない連中も集まりだしていた。そしてその間には、ピンク……リィーネが話をしていた。騎士団の幹部らしき人物は、ニヤニヤしている。


 お前らニヤニヤし過ぎだろ? この前の騎士もニヤニヤしていたよ。そして声がハッキリと聞こえる所まで近付くと、俺の事を話していた。


「では、どうしても旦那様を連れて行くのですね」


 え?


「神殿騎士に暴力を振るい、謝罪も無し……異端認定も視野に入れております。まぁ、罪に相当するお布施と誠意を示せば……許されるかもしれませんよ?」


 な、何だと! 俺を異端認定にする気か!!! キャンセルだ! そんな魔法はキャンセルしてやる!


「またですか……我が領地では神殿に否定的な者が多くいます。そんな状況で、助かる見込みもない事の為に税を使う事などできませんし、旦那様のこれまでの功績に神殿側は報いても罰は当たりませんよ?」


 そうだ! この時ばかりはピンクが嫁で良かったと本気で思えた……けどさ。


「これは神託による決定事項です! 勇者セルジが、神から授かったと伝えてきました。さぁ、異端者レオンを差し出しなさい……ついでに偽物の勇者リュウと、悪魔の馬も異端とします」


 その発言のついで扱いされた連中が吠える。それ以前にセルジと言う名前が出てきた所からして嘘くさい。あいつの方が悪い事してるって絶対に!


「ふざけるなよ! 何が偽物だ! 俺は正真正銘の勇者だからな!」


『悪魔とはなんだ! 悪魔ではなくて、神馬だから! そこ重要だろうが!!!』


 ……異端の事はどうでもいいようだ。だけど神殿騎士の言葉に反応したのは、アホだけではない。城から重装備姿で出てくるセイレーンとラミア……後ろには城の兵士を率いている。


 そしてエイミだ。ギルドでも危ない感じの連中を従えて、肩に愛用の大鎌をかけて神殿騎士達を取り囲みだした。空にはトカゲ共が咆哮が聞こえるし……この状況は不味いだろう。


 俺は一人でその言い争う現場に割って入ると……


「逃げも隠れもしない……行くぞリュウ、ポチ」


「お、俺も行くんですか!」


『お前だけ捕まれよこの屑野郎!』


 そんな反応をする貴様らには、俺と一緒に牢屋にご招待だ!

 今回も勘違い要素は少ないですね……はぁ、難しい。


 前書きでも書きましたけど、息抜きのために書きかけの作品に手を出すか、新しい物を書くか……そんな事を悩んでいました。


 流石に更新も遅れるよね! そんな感じで、次回は違う物を更新します。

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