ACT 7 校舎裏での密会
放課後。
約束を守って校舎裏にやって来た。
美晴に会いに来たのは?
授業を終えるチャイムが鳴った。
それを合図に、生徒達が教室を後にし始める。
ある者は家路に就く為、クラスメートを伴って校舎を出て行く。
学校に残る者は、それぞれの想う場所へと移動し始める。
クラブや、学業を進めようと足を運んで行った。
「島田先輩!剣舞部に出られますか?」
廊下を歩く美晴に、後輩部員が呼びかける。
「あっと。ごめん、今日は出られないんだよ」
「え~?!残念ですぅーっ」
先約があるとは答えず、部活動には出られないとだけ教えてから。
「あたしが居ないからって、さぼってたらいけないんだよ?」
部の先達者で、牽引者でもある美晴が居ないから後輩達が怠けるのを心配するが。
「大丈夫ですって!怠けたりしたら、太井顧問に怒られちゃいますから」
いつも目をかけてくれている担任教諭の太井女史が、部員達を観ているから大丈夫だと答えられて。
「あはは。それもそうだよね」
これからの事も、一部だが太井教諭に頼んでもあったのを思い出し。
「次の大会に向けて頑張ろう・・・ね」
「はい!島田先輩の足手纏いにはなりませんから」
つい、剣舞大会に出場すると公言しそうになって口を濁してしまった。
後輩には気が付かれなかったと、少しだけ安堵した美晴が。
「じゃ、じゃあね!」
後輩を後に、校舎裏へと急ぐのだった。
「そうだった。
あたし・・・次の大会には出れないんだ」
後輩との会話で気が付かされた。
今日まで頑張って来た剣舞とも、当分の間お別れなのだと。
「フェアリアには剣舞なんて存在しないんだもん」
そう思った瞬間、心にチクリと棘が刺さったような感慨が湧いた。
「そうだよね。
あたしの10年の思い出が、ここには残されてるんだから」
フェアリアから日ノ本へ来てからの思い出が、美晴の脳裏に過り始めていた。
初冬の夕日はつるべ落とし。
授業が終わってから1時間もすれば太陽が傾き、夕日が校舎を赤く染める。
しかもここは、陽の当らない校舎裏。
夕映えの届かない、人影も無い場所・・・なのだが。
「遅れちゃったけど。待ってんのかな~」
駆け足でやって来たのは1年生の少女・・・月神御美。
「待ち草臥れて・・・帰っちゃったかな?」
辺りを見回して、待ちあわせた者を探していた。
「ハナちゃんと長話し過ぎたのがいけなかったんやな」
少々慌てるように、きょろきょろと首を振って探していた・・・ら。
「遅い!待ってたんだよ」
校舎の陰から、
「憑神の御美!」
お目当ての少女が現れた。
「島田先輩?あたぃは月神やってば」
苗字を変な呼び方をされたミミが注釈を入れようとしたのだが。
「あら?まだ・・・そう。
私に話があるんじゃないの?」
陽の当たらない校舎裏で、尚更暗い陰の中から。
「だったら・・・姪っ子ちゃんに戻さないとね」
「はぁ?何を言ってるんや」
頭の上にハテなマークを点けたミミが訊き質した時。
一瞬だけ影が蒼く染まった気がしたのだが。
「ん?あ・・・っと。
あ?!お邪魔虫のミミ。さぁ!話って何よ」
途端に口調が、いつもの美晴に戻ったのに気が付く。
「あんた・・・島田先輩なんやな?」
「観れば分かるでしょ!」
ビシッと指を突きつけて来る美晴に、こんどは巨大な汗が頭に乗っかる。
「なんやか・・・気勢を制されたな~」
半ばあっけに取られ、半ば開いた口がしまらなくなってしまいそうだったが。
「話があるんや。
勿論、昨日話した通りお礼を言いに・・・や」
助けてくれた女神に・・・そう言っていたが?
「それと・・・あたぃに宿る縁者が話したいって言ってるんや」
「お邪魔虫に宿るって?
まさか、誰かに憑依されてるの?」
少し、表情を険しくした美晴だったが。
「でも、以前よりも遥かに穏やかな顔色してるようだけど?」
ミミに敵対心が感じられず、戸惑うように訊いたのだった。
「え~っと。前大戦の英霊で、今は女神なんやって。ホマレおばちゃんは」
「英霊で女神?誰なのよ、そのホマレって人は?」
教えるミミも把握し切れていないのか、頬を掻いて知らせて来る。
対する美晴が判る筈も無くて。
「その女神なホマレって人が、あたしに用があるの?」
「ちゃうんよな~。
前から言ってるやんか、用があるんは女神さんやから」
・・・
堂々巡りに嵌る二人。
二人して、互いに話す意味が通じていないのに気付いていないようだ。
「なぁ?島田先輩。
女神はんを出してぇ~な」
「いや、あのね。意味が分からない事に巻き込まれたくないんだけど」
額に指を当て、まともに取り合おうとしない美晴。
「そないなこと言わへんで。女神はん同士で話し合わせてや」
対照的にしつこくミミが頼むと。
「「確かに・・・相応な魔力を感じるけど。
どうする?美晴。出張っちゃおうか?」」
美晴の中に宿る誇美が伺って来た。
「そっだね?そうすればお邪魔虫も納得するかも・・・だしね」
これ以上の無駄話も嫌だから、と。
「チェンジしちゃおうかな?」
知らず知らずか、ワザとかは分からないが。
美晴が口を滑らした・・・ら?!
シュン!
淡いピンクの光を伴い、春の女神が現界した。
「ほら!私が女神の誇美だよ」
瞬時に人から女神に変身した姿をミミの前に現して。
「お礼が言いたいって言ったけど?それだけじゃないんでしょ」
如何にも勿体ぶりな態度でミミに接する。
「こっちも正体を見せたんだから、あなたも出て来たらどうなのよ?」
相手の正体を見破ろうと、カマをかける誇美。
「その緑色のイヤリング。
宿る魂を現した色でしょ?」
流石、少女と云えども女神と言った処か。
魔力を零れだすモノの正体を見切っていたらしい。
ビシリとミミへ向けて指を突きつける・・・のだが。
「・・・あの。
ちゃうって、おばちゃんが言ってるんやけど。
女神違いやって、言うてはるんやけどぉ」
「ほぇ?」
突きつけた指が空を切る。
誇美も女神だが、ミミに宿る相手が言っているのは?
「なんでも、古よりの友を求めるんやって。
おばちゃんを甦らしてくれた女神の方に用事があるんやってさ」
「な?!なんて失礼千万!」
怒る誇美に、困ったような顔をするミミ。
「そやかて・・・あたぃも憑代でしかあらへんもん」
誇美に怒られて、言い辛そうに声を落すと。
「理の女神様はね、おいそれとは現界されないのよ!
太陽神であらせられる伯母様が貴女の前になんて」
自分の事を棚に置いて、相手が何者かは知らないが要求は吞めないと一蹴しようとするのだが。
「そやかて・・・代理神には用がないって言うてはるもん」
ブツブツと小声で言い募るミミ。
「誰が代理よ!こう見えても、小春の女神で戦女神でもあるんだからね!」
女神には十分聴こえていたようで、
「そんなに伯母様に会いたいのなら、そっちから現界すればどうなのよ!」
もう一度、指を突きつけたのだった。
「しょうがあらへんなぁ~・・・そこまで言うんやったら」
答えるミミが、イヤリングに指を添えると。
「変身しちゃうっきゃ・・・ないやろ」
カクンと頭を垂れた・・・次の瞬間。
びゅぅわっ!
翠の旋風が巻き起こる。
そして・・・
「ウチが・・・そんの・・・ホマレや」
今の今迄、高校一年生だったミミの姿が一変していた。
美晴が誇美に変身し、女神と逢わせたのに対し。
御美に宿った者が追求する。
古の女神に会わせろと。
そして本性を現したのは?!
次回 ACT 8 昔日の絆
戦女神は自身を蘇らせた者を欲する。それは現実世界で交わした最期の約束が齎す・・・絆!




