表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード7 第3章 夢幻 時の静寂に棲む者
198/428

Act10 闇の翳り

美晴に宿る者。

光の中で生きる美晴に対する者。


夢魔と呼ばれた者の真意とは?!


闇の前に駆けつける魔法少女!

女神の異能を授かった魔拳少女ミミが立ちはだかる!

魔物の残留思念を取り込んでしまった美晴。

右手の紋章が、穢れた魂を喰らって・・・


「粛罪するのならば、地獄へは送ったりしないわ」


ポツリと呟く。


「光と闇を纏う者として。

 あなた達に最期の機会を与えてあげるから」


右目を闇色に変えている魔砲の少女が、4匹の魔物達の魂へと告げたのだ。


「抗うのならば、理に因って破滅を迎える。

 罪を認めて穢れを祓うと言うのなら、粛罪の世界へと送ってあげる」


まるで神の如く。天の裁きを下す者のように。

否、人であればこその慈悲に満ちた声で。


その様子は、嘗て理の女神ミハルが人であった頃と同じ。

まだ女神が光と闇を抱くひとであった頃と変わらない。


堕ち神を表すと思われた紋章。

闇を喰らうかに思えた穢れし印の真の意味は・・・


「闇の異能が欲しい。もっと多く・・・もっと強力な魔力が」


4匹の魔物を喰らい、穢れた異能を取り込んでいる訳とは?


「魔王級の異能を手に出来れば。

 魂の転移魔法が放てるようになれるから。

 私には取り戻さなければならない人がいるのだから・・・」


闇に染まった魔力を欲しているのは、自分の為ではなくて?


「あの人の魂を蘇らせるには、光と闇を抱く者として覚醒しなければならない」


想い人の復活を目指していると?

真の光と闇を抱く者へと覚醒を目指しているのは美晴なのか、宿る者なのか?


「光の魔力では行使できない。

 どうしても闇の魔力が必要なの・・・魔王級の」


魔王級の魔力?

魂を操るには、聖なる異能では不可能だから?


「どうしても必要なの。

 本当の闇との闘いが始る前に。

 私が聖なる異能者へと覚醒するまでに」


本当の闇?それとの対峙が控えているのだと?


「黄泉の門で出逢って、聴かされたから。

 神々しい光を纏った人に、私への願いを託されたから」


以前、一度死にかけた折に行ってしまったという黄泉の国。

そこで何があったと言うのか。


「輝が語り掛けた・・・死に瀕している私へ。

 まだ死ぬ時では無いと。まだ成さねばならないのだと。

 黄泉から還り、どこかにいる筈の魂を救って欲しいと。

 その為に、美晴わたしへ呪いを授けるのだと」


黄泉還った美晴。

門を潜れば還れなかった。その前に輝に出逢った。

輝は美晴の魂を還す代わりに、呪いを授けたのだと言う。

一体どんな呪いを受けたと言うのか?


「陽の当たる時は以前のままの美晴。

 闇に対峙した後には、光と闇を抱く者となったミハルへ。

 闇の異能を蓄え、真の異能ちからを発動させる為。

 魔王級の異能を放って、絆を誓し人を蘇らさねばならない」


堕ち神を表すとされた紋章に籠められていたのは、誰かを蘇らせようとする呪い。


「光の子である美晴には無理でも。

 光と闇を抱けるミハルならば、やり遂げられる筈だから。

 どんなに穢されようとも、輝を失わない力が有るからと」


2年前から受けて来た呪いの真実。

堕ち神が宿っていた訳では無く、輝の願いを込めた呪いに因って起きて来たことなのだと。

堕ち女神が宿る為に美晴を穢そうとしていたのではなく、魔砲の少女を信頼していたからこその謀だった。


「もうすぐ、真の闇が闘いを挑んで来るって聞かされてるから。

 神託の神子である美晴わたしが、神から与えられてる宿命に目覚めてしまう前に。

 二つの魔法力を持っていられる内に、やり遂げなければならないから」


普段の美晴と、紅い瞳になっている間の美晴は別人格を有している。

その理由が語られた。


黄泉の国で受けた呪いの真実。

神々しき輝が齎したのは、新たなる戦いが起きてしまうという警告。

戦いが起きる前に、絆の人を蘇らせる必要があるのだとも。

魂の転移に必要不可欠な、強大な闇の力を手にする為には、魔物達の異能が必要だったから倒した後で取り込んでいたのだ。

勿論、光の子である普段の美晴には一切の記憶が残されない。

闇の異能を行使している間だけ、真実を知る<光と闇を抱く者>に還っていた。


・・・だから。


「いずれもう間も無く。

 あたしは<私>に気付く事になる。

 本当に宿れる護り神が戻って来てくれるのだから」


闇に冒されても、目的を完遂した暁には。


「光には輝の子が相応しいのだから」


闇の異能を行使出来なくなる時、その時こそが光を宿す存在と成れる。


「もう間も無く・・・その時までは。

 あいつ等から護っていて欲しいの・・・」


左の瞼が閉じて行く。

闇の異能を取り込み終えた、黄泉還りの魔法少女が変わる。

最後に一言だけを残して。


「お願い、女神の異能を纏う子。

 今暫くは、邪なる者から護っていて」


消え行く視界の端に、翠の輝きを捉え。


「輝が教えてくれた日まで。あの子があたしへと舞い戻る、運命の日までは」


両の瞼が閉じて・・・






魔砲の少女が佇んでいる上空に。

魔物を退治した美晴を見下ろす宙空には・・・



「「くくく・・・自ら乗っ取られに来たか」」


澱む空間から声が堕ちる。


星明りを遮っている澱み。

真黒な正体不明の翳りが、不気味な声を溢した。


「「餌に喰いついた愚かな娘が」」


魔物を狩る娘に対し、澱む翳りが嘲笑った。


「「ならば・・・戴くとするか」」


澱んだ翳りが舞い降りて来る。

魔物を退治した娘の許へと。


瞼を閉じて立ち尽くしている美晴に目掛けて。


 キラリ!


その直ぐ近くで、緑色に輝く何かが・・・


「させへんでぇーッ!」


叫び声と共に?!


「なっくる~トルネードぉッ!」



 ドシュンッ!


強力な魔砲をぶっ放して来た!



 ビュルルルルッ!



鎌鼬のような旋風が、澱みに向けて突っかかって行った。


「「フ・・・無駄な」」


奇襲を喰らった筈の澱みが嗤う。



 ギュルルルルーッ!



澱みは避けもしなかった。

魔法の旋風は澱みを突き破って宙を薙いで行く。


相手が実体化している魔物だったら、一撃で葬られていただろう・・・が。


「「魔砲だろうが、今は無意味」」


澱みからの嘲笑う声が、ダメージすら与えられなかったことを教えている。


澱みは美晴へと手を出すのを辞めて、襲って来た相手を見計らう。


「「どうやら、データに無い異能を持つものらしいな」」


眼下に現れ出て来る翠を宿した娘を。


「「ほぅ?そこに居たのか」」


そして辺りをも伺って嗤うのだった。


澱みは、魔砲を撃って来た少女へと興味を示した。


「「なれば・・・ちょうど良い」」


否。飛び出して来た方角に居る、別個の容に。



 ず・・・ズズズ・・・ズアアアァ



澱みが翠の魔法少女の上に覆いかぶさる。

攻撃して来た相手に対処するかのように。


「くっそぉ!あたいの魔拳が通用せぇへんのか?!」


飛び出して来たナックル・ミミが吠える。

いきなりの必殺技も、翳りには痛痒も与えられていないと悟って。


「せやけど。

 美晴はんから離れさせることには成功したみたいやな」


襲い掛かろうと目論んでいた翳りを停めれたのは成功だった。


「だったら・・・こいつの弱点は?」


影のようなつかみどころのない敵にだろうが、必ずつけ入れる場所がある筈だと考えるミミが。


「ハナちゃん!」


隠れて様子を伺っている友へと訊いた。


「こいつを倒すんやったら、どこを叩けばええんや?」


「う~んと。暗闇なら光をぶつけてみればどうかな?」


阿吽の心か。

即座に魔読の少女に変身していたハナの声が返って来る。


「光?

 そうなんやな、分かったで!」


知らされたミミが、次の一手に備えて右の拳へ異能を蓄えて。


「銀ニャン!あたいに力を貸してくれやぁ!」


イヤリングに宿る天使クリスに助力を願う。


「「善かろう」」


光を拳から撃ち出す魔砲を求めた。



翳りは魔法の少女を調べていた。

戦いを挑んで来る魔拳の少女と、相手を読む異能を持つ少女とを。


「「フ。思った通りだ。

  こやつ等には見知らぬ女神の異能が在る。

  しかも対峙する翠の魔砲少女には天使の加護。

  そして2つの魂が混在している」」


黒き澱みはミミの何たるかが分かったのか。


「「方割れは・・・人の子としての魂しか無い。

  私が憑代に選ぶならば・・・」」


隠れているハナを透過した翳りが・・・嘲笑う。


「「現界する為に。

  契約の日に奪うのは・・・」」


目的を果たすには、どちらかを選ぶと言った。

魔拳か魔読か・・・そのどちらかに的を絞ったのだと。


「「私が現界するには、女神級の異能を誇る身体が必要。

  未だに魔砲少女でしかない美晴よりも、既に女神級の異能を託された者を選ぶのが必然」」


翳りが求めるのは、強力な魔法力。

現世に現れるには、容を求めるのは影の必定。


そして選んだのは・・・



「喰らえやぁッ!」


澱む翳りへと魔拳少女が吠えた。


挿絵(By みてみん)



 ドギュルルルッ!



突き出した右の拳の前に、極大魔法陣が現れ・・・


超閃光シャイン旋風牙トルネードォッ!」


吠えると共に極大魔砲を撃ち出した!



 ビシャッ!



猛烈な光の渦が。強烈極まりない魔法の奔流が。



 ド! ドドドドドドドォッ!



翳を照らし出し。



 ズドドドドドドーッ!



黒い翳りを燻り出し。



 オオオオオオオ~ン・・・・



跡形も無く消滅させたのだった。


「やったぁ~!」


力拳を突き出すミミ。

一方的に闘い、完全勝利に酔いしれる・・・筈だった。


「逃げちゃった・・・みたいだけど?」


間を読む事にも長けてるのか。

はたまた、気付けなかったミミを窘めたのかは分からないが。


「バケモノはミミちゃんの魔拳を喰らう直前に居なくなっちゃったんだけど?」


「は?!」


突き上げた拳のやりどころに困るミミ。

勝利を祝う事も出来ず、固まったようにハナを観てから。


「なんやてぇ~?」


憤った眼を空へと向けて。


「逃げんなぁ~!」


負け惜しみの遠吠えを放っていた。


「でもおかしいな。

 圧倒的に有利な展開だったのに、逃げちゃうなんて?」


敵の弱点を突いたとはいえ、簡単に倒せるとは思っていなかったハナが小首を傾げる。


「いんやぁ~、あたいの全力魔砲に驚いたんやないのん?」


絶大な自信からか、ハナの忠告を聞き流そうとするミミ。


「今度会ったら、目に物見せてやるわ」


銀ニャンの加力があれば、倒して見せると豪語したのだったが。


「・・・だと、良いんだけど」


何か引っかかるのか、考え込む姿勢をするハナ。

少しばかり想いを巡らせていたのだが、地上へと目を配らせた後に。


「まぁ、今日は十分な成功を収められたと言う事にしておきましょう」


佇んだままの美晴へ視線を向けて。


「島田先輩を守れたのだから」


翳りを滲ませる顔へと一瞥をかけて。


「それじゃぁ、帰ろうよミミちゃん」


魔物退治は終了したと宣言した。


「そやな。お腹も減ったし~」


魔法力の補充もしなければと、笑いを含んだ声で返し。


「美晴はんも、良い人が迎えに来たようやしな」


向こうから走って来る人影に気付いて、退散しようと踵を返した。


「そうだね、他人様の恋路を邪魔したら駄目だよねぇ~」


魔法衣を解除したハナが、走り出したミミを追っかけて行く。

いつの間にか静まり返った公園を後に・・・





魔法少女隊の基地から公園までの距離は、走れば20分ほど。

勿論、常人の足ならばの話だが。


魔法の異能を使えば、僅か5分くらいで到着できる。


その5分がもどかしくて、歯痒くて。


「美晴ッ!待ってろよ美晴!」


魔物を検知したオペレーターの通報で、現れ出た地点が判った。

そして魔法感知器により、どんな能力者が襲われようとしてるのかも。

だが、能力者の種別は分かってもどこの誰だかは分かりようはない。



しかし、彼には。

誰なのかが分っていた・・・翠のリングに因って。

助けを求める声を聴いたから。


「俺が着く迄は・・・持ち堪えてくれ!」


魔法少女隊の隊長シキは走った。

想い人を闇から護る為に。

共に愛を謳った少女を助けようと・・・

謎の翳。

闇の中へと消えたが、狙っているのは<女神>の異能。

それと・・・現世に生きる身体。

真の敵たる翳は、諦めてはいない・・・


駆けつけてきたシキの前に佇む美晴。

闇色の瞳で訴えかけるのは夢魔なのか?

それとも?


次回 ACT11 此処に居る<私>

君は2年もの間、ひたすら影に甘んじていたのか?

真実が語られた時、シキは決心するのだった・・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ