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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード7 第3章 夢幻 時の静寂に棲む者
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ACT 4 お昼は屋上で

学園生活で張りがあるのはお昼休みかもしれない。


気心の知れた友と一緒に摂る昼食。

いつもと同じ、何気ない噂話に花を咲かせる時間。


美晴も幼馴染との昼休みを楽しもうと目論んでいたらしいが・・・

街を監視していたモニターの前で・・・


「どうやら。あの子達が退治してくれたようだノラ」


魔法少女隊作戦指令室で、ノーラが腕組みを解いて呟く。


「「周辺に隠れていた強力な魔力もロストしました」」


観測班からの報告に、軽く頷いて隊長席へと振り返る。


「緊急出動を解除する。

 格納庫内の零号機は、出撃を見合わせることとする」


司令官代行のシキ隊長の命令を聞いて。


「まぁ、良かったということなノラ。

 ミハルっちが魔物と闘わずに済んだって訳なノラから」


命令を下したシキに、肩を竦めて話しかける。


「そうだよノーラ。

 美晴が夢魔に脅かされずに済むのだからな」


魔法少女隊員として闘うにしろ、魔物を駆逐すれば夢魔に取り込まれてしまう虞がある。

倒した邪な魂を紋章が取り込んでしまえば、穢れを払わなければいけなくなる。


「その通りだノラ。

 ミハルっちの為にも、闘わずに済んだのはイイコトなノラ」


夢魔に脅かされずに済んだと言ったシキの言葉を汲み取ったつもりのノーラだったが。


「ああ・・・そうだな」


硬い表情のままモニターを睨んだシキは、腕組みを解こうとはしなかった。


「なにかひっかかってるノラか?」


「いや・・・特には」


硬い表情を崩さないシキに、怪訝な顔で聴き質す。


「唯。二人に倒された魔物ではないような気がしただけだ。

 感知された強力な魔力って奴が・・・な」


ロストされた強力な魔力。

監視班の報告にもあったように、ロストした時間と魔物が滅んだ瞬間とのタイムラグが気になっている様で。


「他にも敵が潜んでいたのかもしれない」


「ふむむ。なるほどノラ」


的を得たシキの言葉に、ノーラも感じる処があったのか。


「監視を更に強化するといくノラか」


街中に張り巡らされた監視網の、再チェックを行う為に自席へと戻って行った。



「いや。今夜はもう現れることは無いだろう」


ノーラに聞こえない小声でシキが言う。


「本当の敵は。

 美晴を突け狙う奴は・・・新たな得物を知った」


二人の魔法少女の内のどちらなのかは分からない。

だが、ロストした敵が消えたのが兆候だと分かる。


「もし単なる魔物なら、二人をそのまま見過ごしたりはしない筈だから」


魔物を餌にして美晴をおびき寄せようとしていたのだろう敵は。

だが、現れたのは意図しなかった魔法少女の二人。

邪魔な魔法少女だと思うのなら、新たな魔物を繰り出してでも処分しただろう。


しかし、襲わせなかったのはなぜか。


「夢魔である敵は、新たな得物を見つけた。

 そして、あの日まで得物を取っておく事に決めたのかもしれない」


補助モニターに映し出される格納庫。

零号機がバックヤードに納められ、操縦者がコックピットから飛び降りて来る。


「美晴の宿命の日まで。

 俺が護りきらねばならない運命の日まで」


髪を靡かせてモニターへと振り返る魔砲少女が、ニコリと笑って応えている。


「そう。俺達がなぜ生み出されたのかが分かる・・・その日まで」


美晴の笑顔を観たシキの表情が、やっと和らいだ。






ー 17歳の誕生日まで・・・アト5日 ー





帝都学園で4時限目終了のチャイムが鳴った。


「おっと、美晴さん?」


脱兎の如く駆け出した美晴へ、ローラが呼び止めようとするのを。


「ほっとくノラ」


ノーラが観て見ぬ振りをしろと忠告した。


「あ?そういうことね」


「そう。ミハルっちには役目があるノラ」


小袋を片手に走り出す美晴を見送り、ノーラがニマ~と笑って。


「弁当ぐらい出来るようにって。

 最低限の女子力ってものを磨く良い機会なノラ」


「あはは。姉さんってば、すっかり姐御肌になっちゃってるね」


ローラと共に弁当箱を取り出した。



挿絵(By みてみん)

「シキく・・・いえ、シキせんせぇ~!」


廊下を教員室へと歩むシキの後ろから駆け寄って。


「ねぇ!お昼ご飯、一緒に・・・どう?」


ぺろりと舌を出して誘ってみる。


「み・・・いや、島田さんか。

 職員室へ戻ろうかと思ってたんだけど・・・」


お互い呼び慣れた名前を呼びそうになって戸惑うが、こうしてどうどうと学園内で逢える喜びは顔に出てしまう。


「ねぇ!先輩と後輩に戻って。ランチしよ?」


隠していた手提げ袋を前に出し。

同窓生であるのを良いことにして。


「ま、まぁな。

 せっかくだから・・・」


美晴からの誘いを無碍にするなんて出来っこないとばかりに笑い返して。


「よぉ~し、決定だね!」


無邪気に微笑む美晴に、シキの表情も砕けてしまう。


「そうそう!

 シキ君の大好物だったミンチカツも、伊達巻だって造ったんだよ」


「おいおいミ・・・ごほんッ。

 島田さん、燥ぎすぎじゃないかな~」


嬉しそうに喋る美晴に、思わず注意を促すシキ。


「あっと・・・そうでした」


ペロッと舌を出して応えても、笑顔は変わらずシキへと向けられ続けて。


「だって、嬉しいから」


少しだけ肩を竦め、少しだけ小首を傾げるように。


「陽の当たる場所でシキ君の傍に居られるのが」


心からそう想っているのが口から零れたのか。


「って・・・ね?」


頬をほんのりと朱に染める。


小首を傾げて頬を染める美晴のおでこに、ツンと指を当てて。


「この・・・ぶりっ子め」


「あ~?やったなぁ~」


笑い合う二人。

他人にはバレてはいけない仲だから。


「じゃぁ。屋上に行こうよシキ・・・センセ?」


腕を組むのは差し控え、手を取った美晴が先導する。


「他の子に目立たないようにって・・・ね?」


「まぁ・・・そうだよなぁ」


引っ張られるシキも納得して歩を進ませた。




「ふ・・・残念でした。ちゃっかり見張ってるもんね」


誰にも目だないようにと気を遣った美晴でしたが。


「うにゅ~。もうやめへんか~ハナちゃん~?」


階段を昇っていく二人の背後から、怪しい4つの瞳が?


「いいえ!必ず尻尾を掴んで見せるんだから」


「せやけど~。ストーカーみたいやでぇ?」


一年生の二人が後をつけているのです。


「ストーカー上等!あの二人が危険な行為に及ぶのを見逃せないわ」


「危険な行為って・・・昼ドラの見過ぎちゃぅん?」


ハナは乗り気で。ミミは半ば呆れて。


「二人より、お昼ご飯が大事やのにぃ~」


お腹が減ったと訴えるのを忘れはしなかった。


「今は食より好奇心よ!」


そんなぁ~?」


無碍も無く拒否られちゃいましたがW




秋の陽が当たる屋上で。


「うん、上出来だよ美晴にしたら!」


お弁当を食べる二人。


「なによぉ~。あたしにしたらって」


二人だけの気軽さか、饒舌になるシキが。


「まだ美晴が中等部だった頃、よく造ってくれたっけなぁ。

 あの頃から比べればッて話だよ」


「ふ、フ~ンだ。あたしだって成長するんだからね」


お道化ながら昔話に花を咲かせる。


「あの頃の美晴は、まだ女の子っぽかったっけ。この位の背丈だったし」


シキが胸に手を添えて笑う。


「ぶぅ!あたしはお子ちゃまですか」


口を尖らせて訴える美晴。


「それが今は。

 こんなに料理が上手になって・・・女性っぽくなった」


「あ・・・あ、ありがと」


褒められたと感じた美晴が恥ずかし気に応える。


「これからも大人になっていくんだよな、美晴は」


「そう・・・だよね、多分」


感慨深気に呟くシキと、微かに頷く美晴。


 ・・・ひゅぅ~・・・


秋の風が二人の間を通り過ぎる。


「寒ぅ・・・」


肌寒い程でもなかったが、つい声に出てしまった。


「俺は美晴の側で見守るから。

 これからもずっと・・・生きていく姿を」


少しナイーブになった美晴へ、変わらぬ想いを呟くと。


「もぅ!いつのまに女たらしになったの、シキ君ってば」


そう答えた美晴が、そっとシキの身体にしな垂れ掛かって。


「でも。暖かいよ、シキ君は」


瞼を閉じて愛しさを表していた。


・・・と。



「だぁーッ!聴いてらんないわ」


素っ頓狂な少女の声が二人へ注がれる。


「ひゃぁッ?!」


驚いた美晴が、慌ててシキから飛び退く。


「だ、誰ッ?!」


然る後に、声の相手を探す・・・


「先輩ぃ~!いけませんねぇ」


こちらに向けて指を突きつけている少女と。

いつのまに屋上へ来ていたのか、


「いやあの。止める暇も無かったもんで」


二人の下級生が立っていた。


「あ?!あなたは!」


眉が吊り上がる・・・相手が分って。


「また現れたのね、月神げっしん御美みみ!」


「いやあの・・・今回は不慮の事故って奴やから~」


指先を突きつけている眼鏡女子の後ろで畏まっているミミが、明らかに動揺しながら応えて。


「あたぃは辞めとけって言うたんや~」


悪気は無いとばかりに逃げ口上を擡げるが。


「フ!教員と女生徒が・・・不謹慎ですよ?」


対して眼鏡女子は、仁王立ちで言い募る。


「不純異性交遊の最たるものだと思わないの?」


ダゴデンと足を踏み込み、美晴とシキへ勧告するのは。


「この魔読少女ハナに見つかったのが運の尽きだと思うのね!」


自らが魔法少女だとバラした?!


「ま?真黄泉まよみ・・・ゾンビ少女ですって?!」


「マジか?本当のみ系少女だって?」


二人がすっとこ呆けて応えると。


「ま、魔を読むって意味よ!

 病んでもいないし、ゾンビでもないからッ!」


再びダゴデンと足を踏み鳴らすハナっ子。


「はぁ。その魔法少女さんが、一体如何様な?」


相手の出鼻を挫いたシキが、けむに捲こうとしたが。


「校内で不純な行為を働こうとした罪。

 まさに万死に値するわよ・・・ねぇ?」


「あはは・・・一体何の事やら。御代官様?」


冗談で済ませる気だったのだが。


「フ!言い逃れしようなんて・・・罪人の常套手段ね」


「あの。だから、勘違いだって」


笑って済ませる気だったシキに、魔読の少女が・・・


「キス。あなた達、接吻しようとしたでしょう?」


勝ち誇ったように言い放つ・・・と。


「ぎっくぅ~~~~ッ?!」


シキではなくて、横に座っていた美晴が飛び跳ねた。


「あ?美晴・・・さん?」


3人のジト目が痛い。・・・シキもですが、何か?・・・


「あはは。あはははは・・・はは((´・ω・`)」


笑って、その場をやり過ごそうとした美晴でしたが。


「やっぱりね。私の魔読に間違いはなかったわ」


「な?!本当に魔法少女だったの?!」


ハナに啖呵を切られて、信じる気になってしまうのですが。


「ちゃう、ちゃう。ハナちゃんの言いがかりなんやってば」


後ろに控えたミミが手を振って否定した・・・けど。


「何言ってるのよミミちゃん。

 くりすニャンも出張るって言ってたじゃないの」


「いやあの。ハナちゃぁ~~~ん?」


こじらせまくりなハナによって、意図しない展開へと突入し始める。


「くりす・・・ニャン?」


聴き洩らさなかった美晴が、どこに居るのかと周りの気配を探ってから。


「出て来るって人は?どこに隠れてるのよ」


辺りにそれらしい影も気配も無いと云って除けたら。


「隠れていないわよ。ミミちゃん!」


「駄目やってば、ハナちゃん!」


ハナが促すのを、拒否しようとしたのだが。


「「善かろう。私も確かめたかったのでな」」


当の本人が出張ると宣言して。


 ボワン!


摩訶不思議な煙を上げて、翠のイヤリングから現れ出たのは。


「私が。銀ニャンであ~~る」


モフモフの・・・猫モドキ。


「い?!」


「ひぎッ?!」


声を呑むシキと美晴。


「ま・・・まさか?」


煙が晴れた後に出現した銀ニャンを目の当たりにして。


「ニャンコ玉ぁ~ぁッ?」


嘗て観たことのある形状の色違い?


「まさか・・・蒼ニャンの親戚とか?」


顏は猫に近く可愛いとも採れるが。

モフモフの猫顏は良いとして、その後が・・・無い。


ふわふわ浮かび上がる猫毛玉には。

身体が見受けられない・・・つまりは毛玉。


「おっほん!こう見えても、私は天使なのだ。

 見知っておくが良い、我が名はクリス。

 悠久の女神が第1天使、銀のクリスなのである!」


ついで、威厳を正して。


「お前達に直接会っておく気になったのだ!」


二人の前に現界した・・・ようだ?

現れたお邪魔虫連合?!

突然の言いがかりに黙っていない美晴だったが?


目の前に姿を見せるヘンテコな物体。

それは嘗て居た事のある<毛玉>の類だった?!

またの呼び方は・・・ニャンコ毛玉ダマ


次回 ACT 5 銀色毛玉

銀色毛玉が突きつける言葉に、美晴は心に刺さった棘の痛みを感じる?

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