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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード 7 新たなる運命 新しき希望 第2章 でぇ~とぉ?あ?らいヴ? 魔法少女は清く美しく!
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Act 3 気の迷い?この母娘に祝杯を!

帰宅した美晴。

珍しく定時で帰ってきたルマと夕食を共にしていたのだが・・・

シキに用務員室へ呼び出された晩のこと。


早めに帰宅した美晴は、これまた珍しく定時で帰宅していた母ルマと夕飯を共にしていたのだが。


「はあぁああぁ~」


思いっきりため息を吐くのは・・・


「なに?味加減でも間違えたかしら?」


「はぁあああぁ~」


夕飯のシチューを食べようともせずに、ルマの問いにも答えない美晴。


「うぬ?」


 ひらひら・・・


心何処にありきや・・・溜息を繰り返す美晴の眼前に手を翳してみても。


「はぁああぁ~」


「これは・・・重症のようね」


全く反応を返さない娘に、ルマは肩を竦める。


「学校で何があったのかは知らないけど。

 これは食い意地の張った美晴にしたら・・・重度の患いだわ」


どこか遠くを見つめている様で、どこかに心を置いて来てしまったかのようで。


「美晴に限って・・・まさか・・・よね?」


少し頬を染めてるようにも思える。

ほんの僅かだけ、誰かに想いを寄せている様にも思えて。


「仕掛けてみるか・・・な?」


ルマは何かを思いついたようで。


「そうそう。

 珍しいわよね、魔法少女隊の隊長が休暇申請を願い出るなんて」


ポツリと・・・罠を貼った。


 ぴくんッ!


途端に美晴の身体が反応する。


「そ、そ、そ、そ。そう~だよねぇ~」


ぎくりと身体を跳ね上がらせた美晴。

上擦った声でルマの声に応えると。


「シキく・・・シキ隊長だって、たまには休まないと。

 ずっとIMSに詰めっきりだったんだもん」


魔法少女隊の隊長が休暇を取ろうとしているのを肯定する。


「・・・ほほぅ?美晴も同じ日が非番だったわよねぇ?」


「ぎっくぅ~?!」


ルマの一言に、過剰に反応する美晴。


「あ、いやその。それは偶然って奴で」


「ほぅ?隊長は<偶然>美晴の非番日を申請したの?」


慌てる美晴に、ルマの罠が・・・


「偶然だと言うのなら。

 シフトを変えてあげたって良いのよ。

 二人が同時に休まないようにしたって・・・」


「だ、だ、駄目ぇッ!司令官特権の乱用だよぉッ」


飛び上がって拒否る美晴を観たルマが、確信を得たように細く笑む。


「やはり・・・何かあるとは思ってたわ」


「ほぇ?」


まんまと罠にかかってしまった美晴へ、


「まさかとは思ったけど・・・お忍びデート?」


「・・・ほぇ?」


確認をとるルマと、意味を理解していない美晴。


目と目を併せる母娘おやこ


「もう一度。今度はしっかり訊くわよ。

 美晴はシキ君と・・・デートするのね?」


「シキ隊長と・・・シキ君と・・・で、で?でで?!

 でぇ~~~~~~とぉ~~~~ぉッ?!」」


しかし。

ルマからの質問に答えれないW


泡を喰う美晴が、ぶんぶん顔を振って否定を表すのだが。


「じゃぁ?どうしてシキ君は美晴と同じ日を選んで申請したのよ?」


「ど、ど、ど、どうしてって、それは・・・」


煮え切らない娘の態度に、業を煮やしたルマが立ち上がって。


「フ・・・神妙に吐くのなら悪いようにはしないわ。

 飽くまでも白を切る気なら・・・シフトを変えてあげる・・・」


鬼のような一言で、自白を迫る。


「そ?!そんなッ!

 ルマお母さんッ?!」


ビクンっと、脅える美晴。


「ほ~らぁ~。白状せんかいッ!」


「あうぅ~・・・言うから。シフトを変えるのだけは許してよぉ」


言い逃れ出来なくされて、とうとう白状する気になった?


「実はね。

 来週には誕生日が来るでしょ、あたしの」


「そうねぇ、11月の24日は美晴が17になる誕生日バースディよね。

 それが、どうかしたというの?」


挿絵(By みてみん)


もじもじと俯き加減で暴露し始めた美晴の横に座り、ルマがやんわりと訊き直す。


「その・・・シキ君がね。

 誕生日祝いを買いに連れてってくれるって言うから・・・」


「まぁ!プレゼントを直接買いに?」


小声で答える美晴とは対照的に、ルマは大袈裟にも思える程の声で。


「サプライズも良いけど、欲しい物を選べるってのは最高じゃないの!」


美晴がもじもじしているのを吹き飛ばそうとする。


「そ、そうなんだけど。

 あたし・・・余計なことを言っちゃたんだよぉ」


でも、顔を手で隠して美晴は落ち込んだ。


「むぅ?余計なこととは?」


「うん・・・それがね」


覗き込む様にルマが質すと、指の隙間から瞳だけを覗かせて。


「笑わないでよ・・・」


少しだけ声を改める美晴むすめを、優しい面持ちで見詰めるルマ。


フェアリア人である茶髪で白い肌のルマが、美晴の碧い瞳の中に写り込んでいた。





~~美晴の回想~~


帰宅を促す音楽が流れる中。

用務員室で普段より幾分かは朗らかな二人が居た。


「と、言う訳。

 あのミミっていう一年生が魔法少女なのは間違いないよ」


「なるほどね。美晴にしたら傍迷惑な娘には違いないね」


シキが用務員室へ美晴を呼ぶ時は、大抵が闇祓いに因る穢れを取り除くだけだったが。

今日に限っては、他に用があるようだった。


「で?あたしを呼んだのはミミちゃんを調べる為だけ?」


「あ、いや。そうじゃないんだよ」


でも、いつもとはシキの態度が違うのが分って。


「それじゃぁ・・・血が欲しいの?」


「・・・闇祓いなんてしてないだろ」


闇の穢れを中和できる吸血行為は、美晴の聖なる異能を必要とする時だけ。


「だったら・・・えっと?」


呼ばれた訳が分からず、美晴が小首を傾げると。


「あ、あのさ。

 もうじき美晴の誕生日じゃないか?」


「そう・・・だけど?」


ここまでシキに言われても、鈍感娘の美晴にはさっぱりなようで。


「24日だけど。それが?」


「当日は美晴だって当直だったろ。魔法少女隊の」


誕生日は夜間の警備をこなさなくてはならない当直番。

折角の誕生日だが、魔法少女隊に出勤しなければならなくなっていた。


「まぁね。

 蒼ニャンからも誕生日は警戒しておきなさいって言われてるから」


応えた美晴の言ったのは本当。

心配してくれたデサイアの忠告を無碍には出来ないと考えているのも。


「いや、だからさ美晴。

 誕生日のお祝いを・・・先倒しでやらないかって・・・話だよ」


「誕生日の前倒し?」


予期していなかった美晴へ、シキが申し入れるのは。


「そう。美晴に誕生日のお祝いをあげたいって。

 折角だから、俺も休暇を申請する事にしたんだ。

 今度の非番の日に、誕生日プレゼントを買いに行くってのは?」


「え・・・え?えええええぇッ?」


申し入れられた美晴は、指先を自分とシキとを交互に指して。


「プ、プレゼントぉ~?!」


驚きのあまり、叫んでしまった。


「そう!美晴の欲しい物を。

 その場で選んで貰いたいって・・・思うんだけど?」


「ほ、欲しい物ぉ~ッ?!」


素っ頓狂な声で応じる美晴に、シキが苦笑いを浮かべると。


「ねぇ、美晴は何が欲しいんだい?」


「え?え?えっと・・・・」


そう訊かれたって、直ぐに答えれる筈も無くて。


「欲しいって言われても、あまり高価なのは手が出ないかもしれないけどね」


「え?えっと・・・うん」


プレゼントを貰えると聞いただけで、舞い上がっている美晴。

対してシキは真摯な瞳で答えを求めて来る。


「答えなきゃ・・・答えないと」


頭の中が真っ白になりそうだが、何とかして応えようと努めた挙句。


ー そうだ!いつでもシキ君を感じていられる物が善い!


傍に居られなくても、それさえあれば繋がっていられると思える物。

あまり高価な物でなくて良いから・・・心が通える物が欲しいと考えた。


頭の中では結論が出たが、頭の回らない状況で答えてしまう・・・残念な美晴


「あたし・・・肌に感じられる物が良い。

 素肌で感じれる物が・・・欲しいかな」


緊張のあまり、意味深な言葉になってしまった。


「素肌で?」


案の定、シキには巧く伝わらなかったようで。


「あ、えっと・・・そう」


「そうなんだね美晴?よし・・・分ったよ」


なにがどう判ったのか、シキは断じてから。


「じゃぁ、非番の日に。

 ショッピングモールの前で、16時に・・・ね」


話は終わったとばかりにミハルの肩へ手を載せて。


「ルマ司令には夕飯はいらないからって伝えておいてよ」


プレゼントを買いに行くだけではなく、夕飯迄も共にするのだと聞かされてしまい。


「楽しみにしておいて・・・美晴」


期待してくれと念を押してから、シキは用務員室を後にした。



「ショッピングモールの前・・・16時・・・」


待ち合わせの約束を、何度も反芻して。


「シキ君が・・・シキ君と・・・はにゃぁ~~~」


これはデートの誘いなのでは・・・と、混乱した頭で考えて。


「あたし・・・あたしってば。

 どうしよう・・・どうしよう・・・」


何が何やら訳が分からなくなって、


「デートなんて、思いもよらなかったよぉッ?!」


錯乱したまま、頭を抱え込んでへたり込んでしまう。


「あ。

 そうだ!さっきの・・・プレゼントだって。

 ちゃんと伝わったのか、分からないぃ~よぉッ?」


蒼白になる美晴。

嬉しいのやら悩ましいのやら。


「あたしってば、どうしていつも損ななんだーーーッ!」


いや、美晴さん。そこは損は関係ないでしょW




~~~損な娘の回想終わり~~~




・・・・

・・・

・・


母は黙って娘の言葉に耳を傾けていまし・・・


「このッ!大虚け者がぁッ!!」


「ひぃッ?!」


話を結んだ美晴へ、ルマの一喝が?


「なんという愚かな!

 今の口ぶりなら、シキ君がどう思ったのか分からないわよ!」


「どうって・・・どう?」


異性に関しては、超一流の鈍感娘である美晴が訊ねる。


「どう・・・ですってぇ?!

 美晴は言ったのよねぇ<素肌で感じられるモノ>が欲しいって?」


「ひぃっ?い、い、言ったけどぉ?」


ズイッとにじり寄られた美晴が涙目で応えると。


「男に言ってはいけない台詞よ!

 しかもシキ君だって青い盛りなんだからッ!」


「ひぃいぃッ?ごめんなさぃいいいぃ~ッ!」


詰め寄られた美晴だが、意味を理解出来ているとは考え難いが。


「って?ルマお母さん、青い盛りって・・・なに?」


ほら。


「美晴・・・あなたは知らないでしょうけど。

 若い男には禁句な台詞だったのよ。

 <素肌で感じられるモノ>って言うのは、シキ君自体を表す隠語に相当する。

 それを欲しいって言ったのなら、間違いなく彼は・・・」


「ギョ、ギョクンッ・・・シ、シキ君は?!」


覆い被さるようにノメって来るルマに、美晴は生唾を飲み込んで回答を待つ。


「・・・じれったいねぇ。

 我が娘が、これほどまでに鈍いとは」


「じらさないで答えてよ」


鈍感娘は唇をへの字に曲げて言い募る。


「美晴。

 いいこと?

 当日は、勝負下着を着て行きなさい」


「・・・は?」


びしりと指を突きつけられた美晴だが、目をパチクリと瞬かせるだけ。


「あなたの方が誘ったにも等しいんだから。

 彼に失望を感じさせないように務めるのよ?」


「・・・はぁ?」


母から言われている事が理解出来ない美晴は、眉間に皺を寄せるだけ。


「最初は恥じらい、初々しさを強調するの。

 彼が本気で貰うと言うのなら、覚悟を決めるのよ?」


「・・・なんの覚悟を?」


会話がずれ切った二人が、互いに目を併せて。


指輪あかしみたいなのが欲しいんですけど?」


「身体を差し出す気なんでしょう?」


全くの見当違いを言い合う。


「は?!×2」


で・・・もう一度見つめ合って。


「ど、ど、どうしてぇッ?」


「どこから指輪リングに辿り着けるのよッ!」


仰け反る美晴に、突っ込むルマ。


「にゃぜ?にゃぜに?!」


呂律がおかしくなるくらい動揺する美晴と、


「素肌からどうやれば指輪に辿り着けるのよ?」


考えも及ばないからと、喚くルマ。


「や、やっぱりぃ~~~~?!」


あ。

自分でもそう考えていたから、悩んでいたのですね。


「我が娘ながら・・・アホと云うか巨大損というべきか」


初めに美晴さんの方から、余計なことを言ったと聞かされていた訳が分かりました。


「兎に角。

 初デートを炎上させないように務めあげなさい」


「・・・それって。認めてくれてる訳?」


涙目だった美晴が、顔を上げてルマに訊き返すと。


「フ・・・鈍感娘を返上させれるのなら・・・ね」


ウィンク一つを返して来るルマ

言葉にはしていないけど、美晴を応援してくれているようだ。


「ありがとう!あたし・・・頑張るッ!」


握りこぶしを胸の前でガッツポーズに代えて。


「当日は勝負下着を着て行くからッ!」


「・・・それは。必要無いから」


ガクッと脱力して瞼を伏せたルマが、ミハルの肩に手を載せた・・・


でも。

母親のルマさんには元気な美晴さんが一番の宝物なようです。

損な娘・・・復活ですかね?


親子の会話も微笑ましいもの。

いや、この母あって、この娘あり・・・でしょうか。


初めてのデートへ向かって物語りは進むようです。


次回も。

親子の会話回が続くようです・・・


次回 Act 4 母からの一言

デートまで後2日。美晴は母からの助言を求めるのでしたが?

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