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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード 7 新たなる運命 新しき希望 第1章魔砲少女
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Act10 必殺技?!常識じゃん!

闇があるのなら、また光もある。


魔物が現れるのなら魔法少女も!


だけど、緑髪の魔法少女はどことなく頼りなさ気で?

真昼に現れた怪異。


幼子達に迫る危機に。


独りの少女が敢然と立ち阻んだ。

白の魔法衣を身に纏い、紫色のスカーフリボンを首に巻き。

フリルのショートスカートを靡かせ、手には裾の広がったグローブを填めて・・・


真っ黒い魔物にも臆さずに。



「あたぃの魔法を喰らいやがれぇ~っ!」


梢から拳を振りかざして飛び下りて来た。


鋼鉄はがねのハンマーパ~ンチぃッ!」


グローブに魔法を籠めてあるのか、それともパンチ自体に力があるのか。


憑闇鬼に向かって、右手を繰り出して来たのだ。



 ブンッ!



挿絵(By みてみん)



思い切り・・・



 スカッ!



宙を薙いだ・・・だけなのだが?


「はへ?」


空振りに終わったパンチ。

目標の憑闇鬼は避けてはいなかったのだけど?


「おにょれッ!猪口才なぁッ!」


「「・・・いや、何もしてはおらんが?」」


あっけに取られる憑闇鬼と、助けられる筈の幼子達。


「ふ・・・ふふふ。

 そっちがそう来るのなら・・・次はメガトンキックや!」


額に汗を一粒垂らしたナックルミミが、足を踏みしめて。


「喰らえやぁーッ!」


横っ飛びに蹴りをかます。



 ドンッ!



と。


跳んだ猛烈な勢いのまま・・・



 すかっ!



と。


「ありゃぁあああああああああああああ~」


勢い余って遠くの野原まで行ってしまった・・・ん、ですが?



 どどどどどど・・・



野原から駆け戻って来た、何をやってるのか分からない魔法少女が。


「この野郎ッ!避けるなよなぁッ!」


「「だから・・・何もしておらんだろうが!」」


憑闇鬼も、どうして良いのか分からないみたいですね。

そして、逃げるのも忘れた小学生達は、眼を点にして戦闘(と、言えるかどうかは別にして)の趨勢を観ていたのでした。



「「お前は何をやりに来たんだ?」」


「決まってるやろ!お前を倒しに来たんや」


質した憑闇鬼に、びしりと決めるミミ。


「「いや、だから。

  俺と闘う気なら、まともに出来ないのかと訊いてるんだ」」


「ふ・・・まだ小手調べやっちゅうに。臆したのか?」


・・・

・・・・・

・・・( ^ω^)・・・


しばしの沈黙の後。


「「ぎゃははははッ!小手調べが訊いて呆れるわぃ!」」


「むかッ!わろうたなぁ!吠え面かかしちゃるッ!」


鬼は呆れ、ミミが吠える。


「言っとくけどなぁ。あたぃはこれが初めての戦闘なんやぞ!

 巧く術を放てんって、多寡を括っとったら泣きをみるでぇ!」


は?


「今日が初陣ってやつなんや。

 魔法を撃つのも、必殺技を繰り出すんも、初めてなんや!」


はぁ?


「せやからッ、デモンストレーションみたいなもんなんやからな。

 今迄のは・・・ちょっとした準備体操みたいなもんなんやぞ!」


・・・はぁ・・・


紅い汚れた目を瞬かせた鬼が、ナックルミミを無視して子供達へ向き直った。


「「あのアホな魔法少女は後で良い。

  先にお前等から魔法力を頂くとしようか」」


魔拳少女を阿保呼ばわりした鬼が、幼子に向けて牙を剥こうとした。


「なぁ~にぃ~ッ?!

 あたぃを怒らせたなぁーっ!」


無視された魔法少女だか、アホな子だか分からないミミが吠えまくる。


「3ん~度目は・・・外さへんからなぁッ!」


はい、3度目の正直って諺もありますからね。


「「どいつが魔力を持っている?この中にいる筈だ」」


で。

鬼は見向きもしないみたい。

所謂、完全無視扱いにされてますが?


「フ・・・そうか。

 あたぃの怒りを受ける気になったみたいやな」


冷静な口調ですが、頭から湯気が立ち上ってますよ。


「憑闇鬼!今度という今度は・・・あたぃの本気を喰らうんや!」


で?何をする気でしょう。


バッと、両手を開いて・・・掲げ挙げて?


「天に居わします聖なる女神よ。

 あたぃに闇を打ち倒す力を与えよ・・・与えるんや」


呪文のようなスペルを唱え始めたようですけど?


「色即是空、烈王破魔矢。

 荒ぶる神々、荒くれる風よ。あたぃに神力じんりきを貸せ!」


と、差し翳していた右手をブンブン振り回し始めました。


「あたぃがナックルミミと呼ばれるんは。

 これが属性だからや、拳から湧き出す・・・烈風が闇を滅ぼすからや!」


見る見るうちに、ミミの右手が超高速回転を始めて。


「喰らえやぁッ!これがあたぃの必殺技。

 <烈風牙れっぷうがナックル・トルネード>やぁッ!」


目にも留まらぬ速さで右腕が高速回転し、


「シュートぉッ!」


勢いを維持したまま、右手が憑闇鬼へと突き出された。



 ピカッ!



突き出された右手の先に、金色の魔法陣が現れ・・・



 ドッ!



魔法陣の中心から、旋風が撃ち出された。



 ズドドドドドッ!



地面を薙いで、魔力の滾りが迸る。


一陣の風・・・そのような生易しいものでは無かった。

地表をも毟り取り、まるで水平に撃ち出された竜巻の如く。


「「なッ?!」」


至近距離からの攻撃に、さすがの憑闇鬼も見逃しては於けず。


「「馬鹿な?!小童共も巻き込む気か?」」


避ければ目的の子供達に被害が及ぶ。

猛烈な風に巻き込まれでもすれば、生死の保証が無い。


「「お前は悪魔か?鬼かッ?」」


避けることも出来ず、憑闇鬼が狼狽える。


が、相手の技がどれ程の物かも分からない今、


「「こんな風如き!」」


竜巻の渦を受け止めようとして、真っ黒な身体で立ち阻もうとした。



 ド ドガガガガッ!



魔拳少女の放った必殺技が、鬼の腹にブチ当たる。


「「がぁあああああああっ?!」」


錐状の風に拠って、魔物の腹に風穴が抉られた。


「「あが?あがががががぁッ?!」」


貫く烈風。

吹飛ぶ鬼。


そして・・・


「ふふん!思い知ったか!」


人質でもあった幼子に当たるかもしれなかったのが、分かってもいないのか。

ふんぞり返る魔拳少女のナックルミミ・・・


「あたぃの勝利や!」


腹を貫かれ、滅びを与えられた憑闇鬼が。


「「畏るべし・・・見境無し・・・」」


断末魔に零したのは、


「「魔力を撃ち出せるとは・・・これぞ、魔砲というモノか」」


魔法少女の中で、格段に戦闘力の高い者を言い当てて。


「「我が滅びても、代わりがお前を捕らえるだろう。

  次の闇は、お前をも狙うだろう・・・ぐふ」」


滅びを迎えて消え去って行った。


「ふんッ!あたぃは負けへんのや。

 数いる魔法少女の中で、髄一の魔力を貰うたんやし!」


ビシッと消え去った鬼を指して。


「ナックルミミは、この世界の救世主を助ける為に存在するんや!」


存在理由が、メシアの救援に在るのだと言い切り。


「せやから!悪の栄えた試しは無いんやからな!」


決め台詞を・・・きっちり残して行くのでした。



  憑闇鬼をたおした!



深緑の髪を靡かせ、翠の瞳に炎を燃やし。

魔拳少女、ナックルミミが勝利を収めた。


 ピキーンッ!


左の耳に着けている、翠の宝石を設えたイヤリングが鳴る。


「うん?まだ・・・なんか居るんか?」


魔拳少女として、初陣を飾ったミミが。


クリスニャン。ここらに敵がおるんでっか?」


イヤリングを押さえて訊くのだが。


ー 居るぞ、しかもさっきのとは別の奴が ー


見えない敵の存在を教えてくれた。


「さっきの・・・憑闇鬼とは他の?」


ミミが辺りの気配を探ろうとした時だった。



  ごごごご・・・・ゴゴゴゴゴ



地鳴りが辺りに響き渡り、森の一角が突然盛り上がり始めた。


「なんや?!ありゃぁ?」


鬼などとは規模の違う存在。

闇の住人が地底からやって来るなんて、ミミに分かる筈も無かった。


「地震?火山?!いいや、あれは・・・」


地面が盛り上がり、崩れて・・・



 ズズズズ・・・がらがらがら・・・



地表に出て来たのは?


「あれが?!邪操の・・・機械兵マリオネット!」


魔拳少女ナックルミミが叫ぶ。

地の底深くから現れ出た、鋼の兵を指して。


闇の意志に操られる、人に仇名す邪操機械兵を・・・


挿絵(By みてみん)


ちゃっかり!

必殺技なんてモノを?!


やれば出来るちゃんだったんですね。

ですが、今度の敵は機械兵ですけど?

大丈夫なんですか?ナックルミミさん??


次回 Act11 魔砲少女

魔法少女が歯がたたないのなら。魔砲少女の出番ですよね?!

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