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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第7章 Paradise Lost<楽園喪失>
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Act 3 女神降臨

未来はどうなっている?

人は生き延びているのか?

世界は邪悪に染められては居ないのか?


その答えが・・・現れる。

蒼き光を伴って・・・

切り開かれた隔壁から漏れ出る澱み。


それは瘴気とでも呼んだ方が良いのかもしれなかった。

聖戦闘人形ヴァルキュリアのブーツに絡み付くように流れ出て、入るのを拒んでいるかのようにも見える。


「この中に・・・リィンとフューリーが居るのか」


斬り破られた隔壁の隙間から観える内部は、薄暗くて見通しが利かない。


「まるでダンジョン深部の玉座の間に入るみたいだな」


ロールプレイングゲームで言う、最期の敵を前にするかのように。

囚われの姫を救出し、邪悪なる王を滅ぼす最期の決戦の場にも思えてしまう。


「悪魔タナトスは、あの人に・・・

 本物の教授を宿した人形に因って沈黙させられた筈」


この場へ来る前に、鍵の御子から聞いた。

悪魔タナトスは教授の記憶を宿した人形に因って斃されたのだと。

だから、最後の決戦などが生じる筈が無いと思い込んでいた。


「鍵の御子リィンが教えた通りなら・・・」


切り開いた隔壁を乗り越え、室内に入る時聖戦闘人形ヴァルキュリアの人工頭脳に過ったのは。


「あの悪魔タナトスが潰え去ったのか?

 リィンから鍵を奪い去り、目的を完遂する寸前まで漕ぎつけたというのに?

 本当のタナトス教授が刺違えられたのだろうか?」


本物のタナトス教授が宿った人形に因り、記憶を取り戻せたから思い出せる。


「何もかも、私が教授の研究室を訪れてからなんだ。

 タナトス教授が悪魔のように変わってしまったのも、私が人形へ宿らされたのも。

 そしてリィンやフューリーにも、手を伸ばすようになった・・・」


記憶を改竄してまで自分を人形へと宿らせ、御する事が叶わないと知った後にはフューリーへと手を出した。


そもそも人間だった折には、フューリーを騙してリィンを狙わせた。

しかしその実は、リィン略奪を唆して催眠薬だと言って猛毒のサリンを仕込んだ袋を手渡し、金で釣っておいたガードマンに撃たせたのだ。

そこにレィが居たから・・・


「悪魔タナトスの狙いは・・・私?

 人類を滅ぼす目的を遂げるのに邪魔な存在だった?

 この日が来ることを悪魔のように悟っていた?」


なぜ?どうして一介の助教授である私なんかを狙う?

まるで人間だったタナトスに本物の悪魔が憑りついたかのようにも思えた。


「本物の悪魔なら、神を敵として認識する。

 もし、私が母が言っていた通りに神の御子だとするのなら。

 凋落出来ないのなら滅ぼそうとする・・・」


頭の中で、神と悪魔の闘いの図式が出来上がる。

それは自分に宿った理の女神からも聞き及んでいた。


「悪魔・・・イシュタル。

 人の世を邪悪に染め、世界を滅ぼす存在。

 それが本当なら、人工頭脳のタナトスが滅んだとしても?」


悪意の者と悪魔は違う。

人の闇に付けこむ悪魔は、悪意の者に憑依して不幸を撒き散らす。

イシュタルと呼ばれた存在が、本当の悪魔だとするのなら?


「タナトスは確かに教授に因り滅んだかもしれない。

 だけど、悪魔イシュタルは滅びを逃れた?!」


なぜ・・・なのかは分からない。

けども、人形の五感が知らせて来る。


「まだ・・・闘いは終わってはいない」


フューリーの救出を理の女神から託された。

鍵の御子からも。


「鍵の御子・・・リィンの記憶を宿した・・・別人?!」


そこで漸く気付けた。


「私と同じとまで言っていたじゃないか!」


鍵の御子は記憶たましいを改竄されているのだと。

自分に接している間はリィンとして。でも、一旦離れてしまえば?


「しまった?!グランドが!」


鍵の御子に護衛として残して来た犬型ロボットの窮地を想い、


「それに!どうして気が付かなかったんだ。

 悪意に染められていた死神人形だって、制御室に居た筈なんだ。

 なぜ見逃していたのかを考えるべきだった!」


鍵の御子が改変させようとしているプログラムを、黙って見逃して来た理由。


「いけない!あのままケラウノスを発動させれば・・・」


悪魔タナトスの野望は叶えられてしまう?

いいや、タナトスの狙い以上に悲惨なことに為り兼ねない。


「本当に・・・人類が滅びてしまう?!」


咄嗟に踵を返して制御室へと駆け戻ろうと思った。

・・・思ったのだが、身体が想う様に動けない。


なぜ?



その訳とは?



「「心配し無くたって良いのよ御美みはる

  あの娘には御主人様が御宿りになられてるんだから」」


不意に人工頭脳へ女神の声が届いた。


「でもッ!あのままではケラウノスで人類は!」


取り返しのつかない事になるのでは・・・と。


「「大丈夫。もしもの時は・・・グランが居るから」」


「グランドが?彼がどうすると仰られるんですか?!」


聞き返した聖戦闘人形ヴァルキュリアへと、女神は答える。


「「グランは・・・リーンを守る為に存在しているの」」


「・・・それって?」


御子に宿った女神リーンを守る。

その為なら存在を消しても良いのか・・・


「「だから。部屋を出る時に忠告を与えておいたの」」


そう。

確かに別れ際に言っていた。死ぬんじゃないと。


「しかしッ!いくら使徒だと言っても。

 今のグランドは壊れそうな程の傷を負っているんですよ?!」


弾を受けて傷付いた身体で、鍵の御子を守れるのかと。


「いいえ!それよりも御子に宿る女神は?

 人類を破滅から救う様に手を出してはくれないのです?」


そしてケラウノスの破滅から守ってはくれないのかと質した。


「「必要があれば・・・ならね。

  言っておくけど、御主人様は審判の女神。

  それは時空を越えたこの世界でも同じなのよ」」


「審判の・・・女神?!

 ならば、この世界は終焉を迎えるべきだと言うのですか?!」


女神の審判は、人の世を滅ぼすべきだと判断したのか?

悪魔イシュタルの行為が正しいとでも言うのか・・・と。


「「それが後の世界に必要だと言うのであれば。

  ケラウノスの光に因り、人が変われるのなら・・・ね」」


「そんな?!生き残った人々までも巻き添えにしてしまうなんて」


聖戦闘人形ヴァルキュリアは、女神の言葉を信じられない想いで聞いた。


「「滅びは誰にだって訪れる。

  生ある者が死を賜るように、不死なんてモノは存在しない。

  だけど、理不尽な破滅は食い止めなければならない。

  この世界が滅んだとしても・・・

  次の世界では同じ過ちを繰り返さないようにしなければならない。

  世界を変えうる力を有したケラウノスは、神の雷であらねばならないの」」


「世界を造り変えれたとして、今生きてる人は死ぬのではないですか?」


聖戦闘人形ヴァルキュリアは絶滅と破滅の違いを訊ねる女神へと。


「「死は単に形が潰えるだけのもの。

  正しき道を歩んだ魂は生まれ変わり、やがては蘇る。

  あなた達が人形へと宿ったように、容を換えるだけ」」


「死は・・・復活に必要?」


それが正しいと言えるかどうかは別として。

死を賜る事は蘇る為には不可欠なのかと。


「「然り・・・そう簡単には割り切れないけどね」」


人は死しても尚、魂となって残る。

それを痛い程知っているのは。


「「私も幾度となく滅びを与えられそうになったわ。

  でも、その度に大切な絆が呼び止めてくれたの。

  親兄弟も、友も・・・そして愛する人達が。

  彼等の心に私と言う存在が残されたのなら、<無>になんて帰さない。

  世界が滅びを迎えても、生まれ変わった新しい世界でまた逢えるの。

  それが・・・絆。

  それこそが、本当の<ことわり>・・・」」


女神は真理を告げ、聖戦闘人形ヴァルキュリアへと諭す。


「世界が終ろうと、絆は不滅。

 新しい世界であっても、魂は不滅。

 肉体の絶滅は、魂の破滅とは違うのね」


「「そうね・・・想いが強ければ。

  絶たれた絆であろうと蘇るから」」


それが輪廻転生と呼ばれる物であろうか。

時代を越え、魂が宿った先にも<絆>は存在し続ける・・・運命の名の元に。


それが正しき者であろうと、悪しき者達であろうとも。

宿縁は終わりはしないのだ・・・と。


「絆・・・私達の運命。

 人の想いが向かう未来・・・絆の行方」


理の女神に因り教えられた、人のあるべき未来ひかり

未来ひかりを求めるのは人であるからこそ。

その未来が断たれてしまわないかと恐れていたのだが、そうでは無いと告げられた。


仮に人の世界が一旦閉じられたとしても、再び復活の日が訪れるのだという。

それが審判の女神の裁きだと言うのであれば、受けても構わない気になった。

なぜなら、魂は必ず蘇りの時を迎えられると知ったから。


自分を知る人の魂が存在するのであれば。


「私を知ってる人・・・リィンタルト」


彼女は今、この部屋のどこかで眠らされている筈だ。


「世界を破滅から救おうとした気高き娘リィン・・・」


今、自分が為さねばならないのは。


「リィンを守る事。

 リィンタルトに拠って、世界を復活させることだ」


本物の鍵の御子は冷凍睡眠に陥っている。

無理やりに奪い取られた鍵とは違い、リィンタルトこそが悠久の鍵なのだから。


「もし、次の世界でも同じ過ちを遂げてしまうのなら。

 リィンを守る事こそが人類復活に必要不可欠だろう」


「「そう・・・分かったようね御美みはるにも」」


女神は祝辞を贈る。

世界が滅びを迎えても、再興するには何が必要かが分かったのだから。


「人形へと宿ったのも、この日の為だったような気がする。

 理の女神が宿られたのも、この日を迎える為だったのか」


「「ええ。本当は新たなる世界に導きたかったんだけどね。

  この世界ではこれが精一杯の御稜威だったんだよ」」


女神の方から謝られた。

世界の終焉は、女神であっても変えれなかったのだと。


「「悪魔イシュタルは複数存在していた。

  バスクッチさんやアルミ―アだけでは滅ぼし切れなかった。

  いいえ、この私であっても成し遂げられなかったでしょうね。

  この世界から全てのイシュタルを駆逐するのは・・・」」


女神の声が人工頭脳に響く。


「「いつの日にか・・・過ちを糺してみせるから。

  その日まで・・・待って欲しいんだよ御美にも。

  リーンのオリジナルを守り続けて欲しいんだ」」


「いつかは・・・悪夢から解放されるのですね。

 その日まで、待てと言うのですよね?」


リィンタルトを護るのが宿命だとは感じていた。

これから先、どれ程の時を待ち続けねばならないのか。


「「辛いかもしれないけど・・・堪えて。

  この私、理の女神ミハルが約束するわ。

  必ず救いの手が指し伸ばされるって」」


「分かりました・・・待ちますから」


聖戦闘人形ヴァルキュリア御美みはるは女神と約束を交わした。

救援の手が指し伸ばされるまで、鍵の御子リィンを守り抜く事を。


「「お願いね・・・この世界のミハル」」


その名に絆を託し。

女神と同じ名の戦闘人形をガーディアンに任命して。


「「なれば。この部屋に居る悪魔を打ち払ってみせましょう」」


身体を借りて・・・現界した。



蒼き輝が聖戦闘人形ヴァルキュリアを包み込む。


蒼き髪・・・蒼き瞳。

そして・・・白き魔法衣を纏う・・・



3千年の時を越え、女神ミハルの姿が聖戦闘人形ヴァルキュリアと成り代わった。

現界する女神。

蒼き髪、聖なる瞳。

真白き衣に身を包み、手には黄金の杓杖を携えて。


人の世の理を司る・・・女神。

罰すべき者へは容赦なく、擁護する者へは愛を。

その威厳は時として幼くも見え、またある時は修羅の如く脅威に満ちて。


3千年の未来から時空を越えて来た理の女神ミハル。

今、魔女の前に姿を現す・・・


次回 ACT 4 理と虚像

魔女イシュタルの前に現れるのは、蒼き清浄なる光。

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