ACT 8 真実は女神と共に
油断したわけではない。
判断が鈍かった・・・だけ。
だが、戦いにおける優柔不断は致命的失策を生む・・・
剣戟とは名ばかりの応酬を終え、飛び退いた死神人形を手を拱いて見逃してしまった。
それが勝負の分かれ道になるとも知らずに。
「しまった?!」
臍を噛むとは、こんな場面には似合わない言葉だろうか。
相手を見縊っていた訳でもない。況して、警戒し過ぎたとは言い難い。
「こんな手を打って来るだなんて!」
この場が敵の本拠であるのを控えめに見積もっても、こんな暴挙に出るなんて思いもよらなかったのは事実だが。
「このフロアごと吹き飛ばすつもりなの?!」
聖戦闘人形にも、機械達の決断が計りかねた。
間違えば塔の存在意義さえも失う事に為り兼ねないのに・・・と思ったからだ。
だが、レィの考えとは裏腹に死神人形は嗤っていたのだ。
「このフロアを吹き飛ばしても・・・塔には影響がないのね」
紅く光る電磁波のスパークを片目で観て、
「爆発じゃなく、光線で溶かす・・・一部分だけを」
その一部分が、今自分が居る場所を指している。
だとしたら、居場所を変えれば発射できなくなる?
咄嗟に身体が動いた。
死神人形の剣先から逃れる為と、考えが間違っているかを確かめる為にも。
戦闘人形の瞬発力は、人間を大きく凌駕していた。
瞬く間に数メートルを飛び退き、柱の陰へと入ってみたのだが。
キュイイイイィン!
死神人形は嗤いながら剣先を向けて来た。
それはつまり・・・
「何処に行こうが関係ないって?」
これではっきりした。フロア上には逃げ場なんて存在しないのが。
機械達はフロアを犠牲にしても、敵を排除しようと画策しているのだと。
「だったら・・・撃たれる前に接近しなければ」
そう考えたが、接近を許す筈も無いと思い直した。
「馬鹿正直に撃ってくれって言うようなものだから」
近寄る事も、逃げる事も叶わないとすれば?
「力には力で応じるより他は無いか」
相手の攻撃から身を避けることが出来ないのなら、放たれる力に応じなければいけない。
それがどんな結果を生むのか、想像すら出来なかったが。
「あれ程のパワーを秘めた一撃だ。
防ぎきれるかは分からないけど・・・やるしかなさそう」
レーザー光線にはレーザーを。
破壊剣に残っている動力を放ちきっても防げるかどうか。
「でも、やらなければどのみち溶かされてしまう」
高出力のレーザー光線を浴びてしまえば、鋼の骨格だろうが溶かされるのは必定。
もはや応じなければ何も為せないと覚悟したレィは。
「今はもう、後のことなんて考えてる場合じゃない。
こっちも最大級のレーザーで防ぐしか残されていない!」
応射の構えを執るのだった。
勝利を確信した。
敵より劣ると思われた性能差を、奥義の発動で覆した。
まんまと図に嵌った勝負に、絶対の自信が過ったのだ。
「勝ったな・・・」
剣先でレィを捉えた瞬間、思わず口から出た。
「くたばりやがれぇッ!」
咆哮とも、喚声ともつかない声が。
指先に力が籠る。
トリガーを引き絞る時、確信は絶対のモノとなる。
目の前が真っ赤に染まり、最大級のレーザーが迸った。
破壊剣の銃口が性能を超えた威力に溶けて、二度とは撃てなくなったのを教えた。
だが、その破壊こそが勝利の源なのだと納得させる。
紅い輝に目が眩む。
いや、正確に言えば人形である自分のカメラの視界が霞んだと言った方が良いだろう。
紅い輝の渦の中、仇敵が剣を向けているのが霞んで見えていた。
それが、聖戦闘人形レィの最期の姿だと思いつつ。
ドゴゴゴゴ!
殲滅の紅い輝が外壁をも貫いて行った。
ほぼ水平に放たれたレーザー光線は、外壁に直径6メートル程の穴を穿つ。
穴の規模から考えて、その中にあった全てが一瞬で溶け果てた筈だった。
現時点では、レーザー光線に勝る破壊波動は存在しない筈だった。
如何なる物質だろうと、高熱に溶けてしまうだろうから。
ゴゴゴゴ・・・
レーザーの過った後。
そこには高熱で溶かされた骨材や、コンクリートが燻ぶっている。
金属だろうが、土材だろうが関係なく溶け曲がり、6メートル程の穴が外壁迄続いていた。
「なッ?」
だが、一つの影以外は。
「馬鹿なッ?!」
有り得ないモノを観てしまったかのように、死神人形が声を詰まらせる。
シュゥウウウ~・・・
溶けた物質が冷えて固まり、やがて煙を揺蕩わせる。
その煙の中、一つの影が映り込んでいる。
靄の様な煙が薄くなり、やがて影が人の形を造り出す。
「どうやったんだ?!」
蒼髪を湛えた聖戦闘人形の姿が。
何処にも異常が見られない・・・じっと佇んでいるだけのレィの姿が。
「嘘だろ・・・信じられない」
死神人形は己がカメラを疑いたくなる。
消え去る筈だった敵が、眼前に居るから。
勝利を確信していたから、尚更に信じられずにいるのだ。
最大奥義でもあり、破壊剣を使用不能にしてまで放った必殺の魔砲だったのに。
「私の仇は・・・悪魔以上の存在なのか」
人形だというのに身震いしてしまう。
自分が死神人形とまで呼ばれる存在だというのに、恐怖を感じてしまったのだ。
レーザー波に覆い尽されても消えない。
超高熱の光の渦に撒かれても、死なない・・・それが意味するのは。
「奴は・・・とうの昔に現実から離れた存在だったのか?」
自分に因って何回も死を賜れる筈だった。
今度という今度こそ、消し去れる筈だったのに。
「奴こそが・・・死神。
いいや、奴こそが悪魔だったのか?」
殺そうと試みても死なない。
それどころか何度も蘇り、自分を苛む・・・まるで不死たる者のように。
「一体私は・・・何と闘って来たのだ?!」
完璧な勝利を掴んだと思った矢先、急転直下する展開に。
「私こそが1番ではなかったのか?
私こそが人を捨てて神に近付いた者ではなかったのか?」
創造主を名乗るタナトスに因って生まれ変わった身体を手にした時、自分が神にも近い存在になったのだと思った。
希求して来た復讐も成し遂げ、今は人類を滅ぼす存在になるまでになった。
望みは悉く為し、願いは最期の一つを残すまでに遂げられていた。
「聖なる戦闘人形と呼ばれたレィを滅ぼさなければ・・・」
最期に残された願いとは。
「私が人間だった頃からの宿願を果さねば」
壊れた剣を持つ手に力が籠る。
「喩えそれが、私に纏わり着く死神であろうと」
死神人形と呼ばれたファーストが、敢えてレィを死神と呼んだ。
「お前が憎い。お前だけは生かしておくものか。
全ての元凶、全ての間違いを・・・糺さねばならないんだよ!」
紅い瞳に憎しみを揺蕩わせ、死神人形ファーストが歩み出す。
蒼髪の聖なる戦闘人形に向かって・・・
・・・ぴちょん
頬に何かが零れ落ちて来た。
そう感じられたのは、あの光の渦に巻き込まれた後の話だ。
「くたばりやがれぇッ!」
死神人形の吠える声が耳を打った。
それと同時に観えたのは、紅く渦巻く輝。
「クッ!」
紅い輝を感じたレィの指が、レーザー銃のトリガーを引いた。
真正面から襲う光に対し、応射したレィだったが。
巨大なる紅い光に対し、応じられた光はあまりにも頼りなかった。
「これで・・・終わるのか?」
諦めにも似た心境に堕ちる。
こんな処で消え去ってしまうのは哀し過ぎると抗ってもいたのだが。
悔しくて奥歯を噛み締める。
眼を閉じて最期を覚悟してしまった。
・・・ぴちょん
頬に涙が・・・いや違う。
まだ泣いてはいないから。
「「諦めちゃ駄目だよレィ。
諦めちゃったら、大切なモノをも失うのだから彼女のように」」
女神ミハルの声が聴こえた・・・様な気がした。
「諦めたくはありません・・・けど」
紅い光に包まれる瞬間、レィは答えた。
「でも・・・私にはこの光を防ぐ手立てが・・・」
・・・ぴちょん
また・・・頬に感じる。
誰かが諫めようとしているかのように。
「リィンとの約束を守りたいのに。
タナトス教授にだって逢えていないのに・・・
このままじゃぁ、果たせなくなっちゃう」
全力で応じてはみたものの、相手の力が断然優っていると言ったつもりだった。
「「そう?あなたは彼女とは違うわ。
あなたには奇跡を起こす力が秘められているって感じたことがない?」」
「奇跡・・・ですか?」
突然言われた<奇跡>というフレーズに、どう答えたら良いのか詰まると。
「「聞いた事はないかな?
理不尽な世界だからこそ、奇跡は起きるんだって・・・ね」」
ゆっくりとした女神の声が聴こえてくる。
まるで自分の想いと願いが女神に伝わり重なったように、哀し気な涙声が。
「「私だって経験して来たわ、砕かれる想いに負けそうになるのを。
でもね、諦めちゃったら。そこで何もかもが終わってしまうんだよ?」」
女神が諭す。諦めることの怖さを。
願いを断絶すれば、闇に囚われてしまうと。
「諦めない勇気・・・ですか?」
「「ええ・・・願いは希求するものだから」」
女神がゆるゆると諭す。
それこそが奇跡ではないのかと思うくらいに。
眼を見開いて女神を探す。
だが、自分の周りに観えるのは、紅く染められた空間だけ・・・
「はッ?!一体これは?もうレーザーに溶かされたっておかしくないのに?」
時間が停まったかのような錯覚が起きる。
ゆるゆると話す女神の声を聴いて、時間の経過がおかしいと感じ始めた。
「「言ったでしょうレィ・・・いいえ、蒼騎 麗美。
あなたには奇跡を起こせる異能が秘められているって」」
「そんな・・・私には魔法なんて使えませんから」
女神に名前を告げられて、自分が一介の人間でしかないと答えたつもりだった。
「「そうね、この世界では。
あなたの言う魔砲ってものが使えない世界ならばね」」
でも、女神の声は笑って応えるのだ。
「「だったら私の存在は?
理の女神ミハルがこうして話していられるのは?
あなたの中に宿る事が出来たのは・・・奇跡ではなくって」」
「あ・・・」
考えてみればおかしなことだ。女神と言うもう一人の存在が話しているのが。
タナトス教授に生き返らされた後、別人格として認めて来た存在。
戦いになれば不意に現れ、窮地を救ってくれる存在。
自分の意識ではない他の存在であるのに、自分の身体を通して感じられてもいた。
タナトスの妻であるとされたミハエルの身体を持った時から。
ルシフォルを名乗る教授と出逢った時から。
「あなたは・・・本当に?」
聖なる存在である女神なのかと。
自分を導き、悪意から逃れさせてくれた光の象徴なのかと。
「「教えて来なかったよね、今迄は。
だけど、もう良いかなって。
あなたは・・・私なんだよ御美。
あなたに贈られた本当の名は、大神 御美。
おお!神のミハル・・・にゃんちゃってね」」
「ふざけないで!
どうして私が神様に成れるんですか」
ふざけられたと勘違いしてもしょうがない。
「えッ?そ、それって・・・お母さんから聞いたことのある?」
呼ばれた名に、身に覚えがあったから。
「「そうだよミハル。
あなたに贈られた名は、私を指していたの。
3千年もの時を経た異世界から、絆を手繰って来る為に」」
「絆?」
女神の言う絆というモノが如何なることを指すのか。
それにも増して、3千年を経た異世界から来たと言ったが。
「「話せば長過ぎる歴史だから。
今は単純に不幸な世界を救いに来た女神って扱いにしておいて」」
「は?はぁ?!」
説明に永いも短いもないだろうにと、考えたのだが。
「「一言で言えば、あなた達が造った未来から現れたとでも言っておくわ」」
「私達が造った?それってつまりリィンが?」
人類を創造出来る技を持つ者・・・鍵の御子リィン。
「リィンが?女神を生んだと?」
「「いいえ。リィンタルトは私の御主人様を生んだのよ」」
・・・女神の主人って?
レィはあっけに取られて声を呑んだ。
「えっと・・・女神ミハルの御主人様って言いましたか?」
「「そうなのよねぇ、困った事に。
審判を司られる、私のリーン様を・・・ね」」
・・・審判を司る女神リーンって?
またもやあっけに取られて声が出ない。しかも名前までリーンと言ったから。
「リィンが女神リーンを生んだ・・・
もしかしてどこかの姫様ではなかったのでは?」
「「おおぅ?!鋭いわねッ!大当たりよ」」
・・・なるほど。物凄く納得できた。
「リィンは鍵の御子として世界を創ったのか。
新たなる世界を構築して、再び歴史を紡ごうと考えたみたい」
「「そう。その結果生み出されたのがセカンドブレイク後の世界。
私が生み出される事になる、フェアリア皇国のある世界」」
フェアリア・・・その名にも覚えがある、当然だが。
リィンの家の名であるフェアリーに因んだと考えられたから。
つまり、女神の言っている事が満更嘘ではないように思えて来た。
「私に宿ったのも。
こうして塔まで来たのも。
皆、女神ミハルの計らいだということ?」
「「それは違うわ、もう一人のミハル。
この世界に来ているのは私独りだけでは無いから。
天使アルミーアや、使徒グラン。それにルシちゃんだって。
あ、ルシちゃんっていうのは元から神様なんだよ。
少し前までルシフォルって偽名を使っていたんだけど」」
「へ?」
何が何やら訳が分らなくなってきた。
女神ミハルが言う事には、異世界から来た者達が暗躍していたのだと。
「「暗躍ではないわよ。
これはちゃんとしたイシュタル征伐戦なんだから」」
「はぁ?」
聞いている内に頭の中がワヤクチャになって来た。
「「そうよ、この3千年女神ミハルと仲間に因って。
本当の世界を取り戻しに来ただけなんだから」」
「・・・」
答えようにも返事が見つけられない。
「「と、言う訳でもあり。
もう一人のミハルをここで喪う訳にはいかないから」」
「・・・それで?どうするの」
混乱した頭で訊くだけは聴いてみた。
「決まってるじゃない!こうするのよ!」
女神の声が耳を打った・・・と感じられたって事は。
「「あ・・・身体を乗っ取られた」」
立ち位置が逆転してしまった・・・って訳。
慌てるレィに対し、女神が余裕で話す。
「この光線に包まれた状態なら。
イシュタルにも監視カメラにだって映らないでしょ?
だったら・・・ここからはミハルのターンよ!」
「「もしもーし?!女神ミハル様ぁ?」」
余裕をぶっこいている女神が、右手に持った破壊剣に技をかける。
「聖魔法障壁展開!」
その途端、押され気味だったレーザーが蒼い光へと変換されて。
ドンッ!
魔法陣を形成した光の壁がレーザーから守っていた。
「善いかしらもう一人のミハル。
この波動が消えたら、戦いの趨勢は互角となる。
悪意の死神人形を滅ぼし、本当のフューリーちゃんを救い出すの。
それが貴女に課せられた宿命。それが聖なる戦闘人形に宿った本当の理由」
紅い光が防護障壁を避けて流れていく。
その最中でレィは女神から教えられた。
「ミハルではない蒼騎 麗美と同じ様に。
死神人形に宿らされたフューリーちゃんは、この塔の中に居るの。
月に行った麗美さんと同じ様に、まだ生きているのだから」
自分の身体を使って教えて来る。
女神が言うのは、仇敵になった死神人形を斃して、旧友であるフューリーを救い出せと。
「「フューリーを?
一体どこに囚われているんですか?」」
レィの記憶が答えを求めるのだが、それにたいして女神は。
「あなたの大切な人が。リィンタルトが知っているから。
その子に導いて貰いなさい、聖戦闘人形レィ」
敢えて居場所を答えず、約束を果たすのが先決だと言って聞かせた。
「「はい!」」
女神に因って窮地を逃れたレィ。
宿命を遂げるには、最初にして最期の難関である死神人形との決着をみない事には始らない。
それはレィにしても最初で最期の大一番であるのだが・・・
鉄とコンクリートが焼け爛れた。
水分が蒸発し、湯気と煙が棚引いていた。
やがてそれらが薄れて視界が戻った時。
「ビームが駄目でも・・・剣でなら殺れる!」
紅い瞳の死神人形が歩み寄った。
「動きを停めた人形なんて。赤子を捻るより簡単よ」
動きを停めたままの聖戦闘人形へと。
光線を防いだ為なのか、光線に因る影響なのかは分からなかったが。
「動けないなんて。御笑い種だわよねぇレィ?」
動きを停めた聖戦闘人形レィの手にしていた剣を・・・
ガキン!
剣で叩き落として無力化を図る。
動けないと思うが、念には念を入れたつもりだった。
立ち尽くして動かないレィに、とどめの一撃を突き入れる瞬間。
「今度こそ・・・さよならねレィ?」
勝ち誇った死神人形ファーストが上段に剣を構えた・・・時。
「うッ?!なぜ・・・身体が?」
振り下ろそうとした腕が動かなくなった。
「言う事を利かない?!」
死神人形も、一瞬故障を疑ったようだが。
「フューリーぃッ!またしても邪魔立てするのかぁッ!」
記憶の中に居る、嘗てのフューリーが阻んだと吠える。
「またもレィを庇うと言うのか!」
身体の自由を奪われ、怒りに吠えまくる死神人形があの日の事実を口走る。
「お前はフロリダで嘗てのレィを庇った!
トドメの一撃を左胸へと撃ち込むのを阻んだんだ。
犬型ロボットに襲い掛かられる前、撃ち殺せた筈だったのに。
タイミングを逃したのはお前が阻んだからだぞ!」
そう。あの日。
燃やされる前、確かに撃てるタイミングがあった。
一撃目では仕留めきれなかったが、次の一撃を撃てる余裕は確かにあったのだ。
それを妨害したのはリィンでもなく、ましてや襲い掛かったグランドでもなかったと言うのだ。
「貴様はどこまでお人好しなのだ?
それだから貶められる結果になったのだと何故分からないのだ!」
苛立つ死神人形は、動けない身体から記憶の底辺を遮断する。
過去の記憶から動作を司る指令系統を奪い取ると。
「ははは!これでどうすることもできないだろう。
フューリーにとっては友だろうが愛する者だろうが関係ない。
今の私にとって、レィは仇にしか過ぎないのだからな」
自分と人間フューリーは別の存在なのだと明かしたのだ。
「・・・そうだったのか。
それで女神ミハルは・・・泣いて居られたんだ」
聖戦闘人形が呟いた。
幻の中で感じた涙の訳を知って。
「だから・・・終わらせなければいけないんだな」
死神人形を斃して、友を救わん為に。
右手の中が熱くなる。
手放された剣の代わりを感じて。
「くっくっくっ!お終いだレィ。
あの世とやらに往くと良い!」
振り被った破壊剣の切っ先をレィへと向けて。
「死ねぇッ!」
突き立てて来た・・・
闘いに油断は禁物なのは、自らが示していた筈。
だが、彼女は相手を見縊ってしまった。
戦闘人形同士の決闘は、何を残すと言うのだろう?
勝利はどちらの手に?!
次回 Act 9 決着
君の手は誰を抱けるのか?誰が君を抱き寄せてくれる?!勝者など居ないと言うのに・・・




