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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第6章 宿命の絆
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ACT 6 デジャビュ

モニターに映りこむ聖戦闘人形の姿。


彼女を観ているのは機械達ばかりではなかった。

鍵の御子リィンタルトも、趨勢を見守っていたのだ・・・

監視モニターに映し出された聖戦闘人形ヴァルキュリア


蒼髪とブルーの瞳は当時のまま。

姿は少しばかり大人びている様にも見えたが。


「来てくれたんだ・・・本当にレィちゃんが」


中空階に躍り出たレィらしき戦闘人形を観たリィンが呟く。


「約束だったよね。もう一度逢うって」


モニターに映し出されているフロアの中、聖なる戦闘人形だけが佇んで見えるのだが。


「でも、死神人形は前を阻む筈」


自分にあれ程啖呵をきったファーストが、手を拱いている筈が無いと思った。


「あたしとレィちゃんを逢わせないためにも。

 何度でも戦い、何度も殺意を滾らせ・・・決闘を挑む筈だから」



フロア全景を映していた画像に、紅い何かが見えた様な気がした。



 ブツッ



不意にモニターから画像が途切れる。

それは闘いを目にされるのを拒むかのように。


「レィちゃん・・・フューリーちゃんは。

 昔の友は・・・そこには居ないんだよ」


戦闘人形に宿っている者の正体を、届かぬと分っていても知らせたかった。


「本当のフューリーちゃんは・・・こっちだもの」


並んだモニターの一つに映し出された棺の様な缶。

何本ものチューブが繋がれた缶を映し出す画面を観て、


「死神人形を斃せれば、本物のフューリーちゃんを救えるの?

 それとも・・・同じように死を賜る事になるのかな?」


その中に居る人間フューリーを想った。


「なんだろう・・・この感じ。

 どうしてだか、デジャビュ―みたいに思えるのは・・・なぜ?」


棺の様な缶にはガラス面があって、中に人影が映っている。

金髪の女性が居るのは分かるが、フューリーなのかは確証を得ない。

唯、このタワーで眠らされていることからみて、フューリーだと考えたに過ぎない。


「もしかしたら・・・誰か別の女性ひとかもしれない。

 ・・・ううん、絶対にフューリーちゃんなんだ。

 囚われの友達を救ってくれるのは、レィちゃんだけなんだから」


推定を自身の想いで確定へと置き換えて。


「だから・・・レィちゃん。勝ってね」


再会を果たす為と、友を救わんが為に勝利を欲したリィンだが。


「でも・・・なんだか不思議。

 これって前にも観て来たような気がしてくるのは・・・何故なんだろう」


目にした光景に、不思議な感覚へと誘われる。

頭のどこかに隠されている不可思議な謎への答えに気付かず。


「そんな事がある訳がないよね。

 タイムマシンで過去へと戻らない限りは・・・」


在りもしない機械を想像してしまった。


「そう・・・戻れるのなら」


もしも過去へと戻れるのなら、もっと幸せな過去へと戻りたいと思うのは人間のさがとも取れる。


「戻れるのなら・・・」


リィンが思い描く過去とは、一体いつの時代ころなのだろうか。






 そこは既に戦場いくさばだった・・・


薄暗いフロアに林立する柱が、不気味な静けさの中で光を反射している。


最上階へと続く階段を前に、立ち止まらざるを得なかった。


暗がりの中から現れた影を目にしたから。




最上階へと続く階段ラッタルの前に現れたのは・・・



・・・赤髪の死神人形バトルドールファースト。



「くたばり損ないが」


嘲るように呟く死神人形に対し。


「・・・・」


右手に紅き剣を携えたレィは答えない。

阻む戦闘人形を見据えるだけ。


「このまますんなりと鍵の御子の元へ辿り着けるとでも思ったか?」


掠れた声が、向き合う二人の過去を知らせる。


「お生憎だったわねプロトタイプのレィ。

 此処に私が居ることなんて分かっていたでしょうに」


階段の前にあるスロープ上から、聖戦闘人形バルキュリアレィを見下ろす死神人形ファースト

そして、ゆっくりと剣の柄を握り締めて。


「また・・・敗れ去ると分っているでしょうに。

 今度こそ最期だって分かっている筈よ・・・レィ。

 いいえ、レイミ・・・蒼樹あおき麗美れいみだったらね」



 ス・・・スリュンッ



鞘ずれの音と共に破壊剣を抜き放ち、レィ目掛けて突きつける。


剣を向けられたレィだが、相手を見据えたまま動こうとしなかった。


「フ・・・臆したかレィ?」


一度は倒した相手。

そして何度闘おうが負けるとは考えてもいない死神人形が、余裕の笑みを見せる。


だが・・・


「過去のレィは確かに負けた。

 だけど・・・<ファースト>は思い違いをしている」


「フン・・・なにを?」


相対する戦闘人形の瞳が交わる。

紅き瞳の<ファースト>に対し、レィは碧い瞳で見据えている。


「私は<ファースト>の知っている戦闘人形ゼロではない。

 お前に負けた、以前のレィではなくなったから」


剣を構えるでもなく、唯・・・上目遣いに仇敵を見据えているレィ。


「以前の?そう言えばそうね。

 お前の身体は私に焼かれてしまったのですものね」


ニヤリと哂う<ファースト>が、赤外線カメラに切り替えてレィを観る。


「何者かに外観を造り替えられたみたいだけど。

 中身は確かにプロトタイプ・ゼロだって分かっているわよ」


シリコン製の肌を透過し、鋼の骨格が透けて見えた。

機械の身体・・・超高強度ジェラルミンで形成された骨組みと。


「だってほら・・・プロトタイプである製造番号<ゼロ>が刻まれてある」


円環に翠の<0・ゼロ>が透けて見えていた。



<ファースト>に因り、聖戦闘人形バルキュリアが戦闘人形のプロトタイプだと断じられると。


「そう・・・だけど。

 私は此処に居る私は・・・あなたの知る<ゼロ>でも<麗美れいみ>でもない」


瞼を半眼にした聖戦闘人形バルキュリアが教える。


「フン・・・だとすれば?」


言葉の意味を探る訳でもなく、只単に名前だけが違うのかと哂う<ファースト>へ。


「私は生まれ変わり、そして知った。

 戦闘人形に魂を委ねた宿命さだめと・・・絆の重さを」


眼を閉じるレィの口から紡ぎ出されるのは・・・


「だから・・・約束を果たす。

 どんな罪を背負おうとも・・・喩え旧友を打ち破ったとしてもよ<フューリー>」


聖戦闘人形バルキュリアレィの髪色が蒼くなる。

高出力の動力を放つ証・・・そして。


「死神人形が邪魔をするのなら、排除するだけ。

 誓いの邪魔な存在だとしたら・・・倒すだけ」


開け放つ瞳も蒼く染まっていた。


「な・・・んだと?!」


死神人形ファーストの顔が引き攣る。

自分を睨みつけて来る戦闘人形が、まったく別のモノへと代わっていく様を観たから。


「まさか・・・お前は?!どうしてなんだ?」


体内に仕込まれた戦術兵器に因って解かってしまうのだ。

見知っている過去の能力を、遥かに凌駕しているのを。


「おまえ・・・いつの間に?!」


左目に仕込まれてあったスカウターに因り、数倍もの戦闘力が計測されてしまったのだ。

驚愕の計測値が頭脳であるコンピューターから教えられて。


「私と同等の異能値パワーを持てるようになった?!

 い、いいや。なぜ私を凌げる戦闘力を持てたんだ?」


死神人形ファーストは、蒼く染まる宿敵を観た。

それは一度倒した時とは、全く異なるレィだと分かった。


「私を焼き殺したあなたには感謝しなくてはいけないのかも知れない。

 機械の身体を持つ者だから、復活の際に強化できたのよ<フューリー>」


燃やされ、破壊された身体を失った結果、蘇る際に生まれ変わったのだと。

人間の身体では、こうはいかなかっただろうと話すレィへ。


「うッ?!煩いうるさいッ!

 闘う前から勝っているつもりなのか<ゼロ>よ!

 それに今の私は死神人形ファーストだ。フューリーではないのだ!

 お前達の知っているフューリーは、とうに消えたのだ」


怒りを露わにした戦闘人形01<ファースト>が叫ぶ。


「タナトスに叶えて貰った・・・お前を殺す為に!

 全てを手にする麗美を殺し、幸せなお前を壊す為だけに!

 私は機械となったのだ・・・戦闘人形として生まれ変わったのだ!」


憎しみを増幅する<ファースト>もまた、髪を逆立てて対峙した。

赤髪が乱れ舞う。血に飢える獣の如き瞳が仇敵を睨みつける。


「減らず口はそこまでだと知りなさいゼロ

 お前を魂までも切り刻んでやる!

 3度目はあり得ない、今度こそ・・・ル!」


「そうね・・・私も2度殺されかけたわ。

 3度目は・・・御免被るからね、レィの友達だったフューリー」


二人が対峙する空間に、戦慄の風が巻き起きる。


挿絵(By みてみん)



 スチャッ!



意を決した二人の戦闘人形が同時に剣を構えた。


「くたばりやがれぇッ!」


そして口火を切ったのは、死神人形からの一撃。

破壊剣に仕込まれたレーザー銃から紅い輝が迸る。



 ジュンッ!



紅い輝が聖戦闘人形ヴァルキュリアへと伸びる。



 キンッ!


初弾ではケリが付かなかった。

聖戦闘人形ヴァルキュリアの手に在る剣に因って弾き返されたから。


「な?!馬鹿なッ?」


何物をも切り裂ける筈のレーザー光線を、剣で弾かれた死神人形が声を荒げる。


「どうして・・・お前にも?!」


その段になって漸く死神人形ファーストは知った。

敵も自分と同じ破壊剣を手にしている事に。


「まさか・・お前?!アークナイトに忍び込んだのか?」


戦闘人形を製造していたアークナイト社で、極秘に造られていた剣。

最高度の戦闘人形を以って、最強の兵器と化すようにと造られた<破壊剣エクスカリバー>。

アークナイト社と結託したオーク社の開発部が、総力を挙げて作り上げた二振りの剣が今此処に集ったのだ。


「二本の内の一本を私が握ったんだ。

 もう一本の剣はロストされたとばかリ聞き及んでいたんだが・・・

 まさか・・・おまえが、どうやって手に出来たんだ?」


驚愕する死神人形ファーストが質すのだが。


「フ・・・答える必要があるのか?

 強いて言うのなら、女神からの贈り物とでも応えておくわ」


「ばッ!馬鹿にする気なのかレィ!」


一笑に附された死神人形ファーストが怒鳴り返す。


「悪魔に見込まれたあなたには、神の存在なんて信じられないでしょうけどね。

 あなたには分かり得ない事実だって存在するのよ」


「なにぃッ?本気で女神から貰ったとでも?」


燻しがる死神人形ファーストに、聖戦闘人形ヴァルキュリアが。


「居るのよねぇ、ここに」


不意に。

気にしていなければ分からなかっただろう程の一瞬だけ、声が変わった。


「なに?!」


瞬きする程も無い一瞬だったが、戦闘人形であるファーストのモニターの中でレィの姿が変わったように見えた。


「なんだったんだ?今のは・・・」


一瞬にしても不可思議な現象が起きていた。

捉えた敵の姿が変わるなど、現実の世界で起きよう筈がないのに。


「それにしたって、私の剣と同じモノを持っているとは」


レーザー光線をものともしない剣の威力に戸惑うばかり。


「それと。なぜ不意打ちの一撃だったのに弾く事が出来たんだ?」


通常の銃砲弾とは違い、光の速さのビームを弾く事が出来たのかと問う。

頭の演算処理機能からの答えは・・・予測されていたと導き出すが。


「予測されていたとはいえ、弾道迄も読む事が出来るのか?」


剣先を突きつけることに因り発射のタイミングは計れたが、


「私のスピードよりも優れているというだけでは納得できない」


手にする剣を光線に併せることが、どれほど不可能に近いかが考えを妨げていた。


「まさか。本当に神に守られているとでも言うのか?」


戦闘人形でしかないレィという敵が、全くの別ものへと変貌を遂げている事も相まって。


「信じ難いがレィの奴は、私の行動を予測しているかもしれない。

 次に執る攻撃を予想して避け、チャンスを捉えて打って出て来るかも」


こちらの攻撃を予測されているのを確かめる方法は?


「数撃を浴びせて悉く避けられるか。それとも便乗して撃って来るのか」


行動パターンを観なくては分かり得ないが。


「もしもの時には。

 最終奥義を発動させなくてはならないな」


ちらりと監視カメラへ眼を向けて確かめる。


「防衛システムに命じておくか」


このフロアで迎撃した謂れを、頭の隅から引き出して。


「敵が同じ剣を持っているのなら、一度きりの発動になるが」


手にした破壊剣の柄へと指を伸ばして。


「レィを始末できるのなら・・・惜しくはないな」


剣で何かを目論んでいるようなのは分かるのだが。

最終奥義とは如何なる手段なのか?


「スタンバイ状態の間、剣戟に興じておくか」


柄に伸ばした指が、禁断のスイッチを押し込んだ。


「準備が整えば・・・その時こそが最終魔砲を放つ時だ」


世界に二振りしか存在しない破壊剣。

魔剣が放つ最終奥義とは?


いよいよ決闘は最終局面へと・・・

遂に始まった最終決闘。

死神VS戦女神・・・その趨勢は?


毎回なんか見知った女神が横槍を掛ける様になりましたが、気にしてはいけません。

だって、そのお方こそ・・・げふんげふん。

だけど、これだけはお教えいたします。

女神ミハルを名乗るお方ですが、普通の女神ミハルとは別物です。

普通のとは違う?どう違うのかって?

それは・・・こちらをご覧頂ければ。


魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!

https://book1.adouzi.eu.org/n2116fn


最後の方で暴れるお方こそ、出てきた女神様なのですよね。

最強にして最損W

同じミハルでありながら、数段強化されているみたい。

そんなお方が出張るのなら・・・レィもお気楽で居られる?

そんな訳ないか・・・


遂に発動する死神人形の最終奥義。

その時、歴史に刻まれた事実も明らかになる?


次回 ACT 7 死神の嘲り

戦いの中、窮地にたたされた君の前に声がかけられる。

その声が教えるのは・・・諦めない力・・・だった?!

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