『ひどい民話を語る会』――とりあえず、わんこがかわいそう。
『ひどい民話を語る会』
京極夏彦,多田克己,村上健司,黒史郎/著
KADOKAWA/発行 (2022.10出版)
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民話、昔話、伝説、神話……など、創作をする上での親和性は高く、それでいて広範囲すぎて勉強したいと思いつつ、手をこまねいている状況です。
さて、そんな方にもおすすめの入門書的なものが本書。尾籠なお話てんこ盛りで大変お下劣な民話について一流の識者たちが語りに語っております。
作家の京極夏彦さんをはじめ、怪談小説の作家黒史郎さん、妖怪研究家の多田克己さん、妖怪愛好会隠れ里現会長(Wikipediaに書いてあった。なんだそれ?)でライターの村上健司さん、という妖怪愛が溢れすぎて、妖怪話を探すために民話を読み漁っている方々の対談集です。
本の表紙はかわいそうなくらいうなだれたわんこ(そう、民話や昔話に出てくるわんこはずいぶんひどいめにあってる子が多い……花さかじいさんとかひどいよね!)。もうさ、この表紙だけでも、もう素敵ですよね。絶対面白いやつ。
民俗学ってなんか高尚なイメージだったけれど、こんなにへんてこな話がたくさんあるんだなあ、とちょっとハードルが下がった気がいたします。
でも妖怪好きが妖怪ものを封印してひたすらひどい話を追求した結果、尾籠なお話が多数となっております。シモのお話が苦手な方はご遠慮いただけると幸いかと存じます。
民話、というものの定義がよくわかってなくて、昔話といっしょくたにしていました。本書によれば、昔話がいわゆる場所を限定しない「昔々あるところに~」から始まって定型化されたもの、あるいは伝説が時代や場所を特定した実際にあった話をもとにしたものであれば、民話はその中間、分類しづらい物語であるそうです。昔話ほどかっちり形が決まっておらず、囲炉裏端で爺ちゃん婆ちゃんが聞き手の反応を見ながら適当に盛っちゃったお話、話すごとに大げさになっていったり途中で終わっちゃってたり、あっちの話とこっちの話を組み合わせちゃったり、必要もないのに「ウケ狙い」でシモの話を盛り込んだり。そういうものなのだそうです。
現代でも、『ウンコドリル』『おしりたんてい』などが爆発的な人気を誇るのは、やはり子どもがそういう話題が大好きだからなんですね。囲炉裏端で話をせがまれる爺ちゃん婆ちゃんが過剰なサービス精神で面白い話を語ったらこうなっちゃった、という。
なるほどなー、という気持ちになりました。
京極夏彦さんがこの本で
『我々ね、分類整理された昔話や民話を、分類整理した人の苦労も含めて享受し過ぎている。世の中にはひどい話が溢れていますよ。』
と語られています。
私自身はそういった、既に整理され、マイルドになったお話を享受している世代なので、たまにある民話集なんかのお話が不可解すぎる展開だったりして読んでいると茫然としたり釈然としなかったりしてどう理解してよいかわからなかったんですよね。
意味わからんなー、と投げ出したくなる。
ただ、たくさん読んでいけば「これはこの類型の話だな」というのがわかるようになるらしいし、不可解なものを不可解なまま受けとめればいいのか、と少し納得した気がします。
でもやっぱり、「これどういう意味?」って誰かに解説してもらいたくもなるんだよなー。だから、こういうへんてこなお話を頭いい人たちが「ひどいよね!」「どういう意味?」ってわいわいしながら語る会、というのはとても楽しそうで良いなあと思います。
この本はもともとイベントで語られたものを本にまとめたものだということですが、そのイベント、参加したら絶対楽しいだろうな!
ただひどいお話を並べただけでは終わらないのが本書。京極夏彦さんの小説論なども窺える対談になっています。何が面白いと感じさせるのか、という。あとは、最近流行っている『五分後に~』などの短いミステリーと民話の共通性なんかも語られていて、ますます民話が読みたくなる作り。
まずは図書館の郷土資料コーナーなんかを覗いてみようかな、なんて思いました。




